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「悪いなんて自分が一番わかっている」アジア杯で真価を発揮できず…菅原由勢が語る自身の課題と進化への自己分析

失意のアジアカップを経験した。

第2次森保ジャパンが発足してから右SBの主力としてプレーしてきた菅原由勢には、本大会に挑むにあたってこれまで以上に大きな期待が集まっていた。アグレッシブな攻撃参加でチャンスメイクを図り、勘所を押さえた守備で相手の攻撃に対応する。中心選手として活躍してきたからこそ注目度は高かった。

しかし、チームの成績はもちろんのこと、自身のパフォーマンスもそれと同様に悔しい結果に終わった。A代表の一員として出場する初の公式大会に対するプレッシャーがあったのかもしれない。初戦となったベトナム戦、第2戦のイラク戦の2試合に出場した中で、これまで見せてきたようなプレーを表現することができなかった。

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「いいか悪いかで言えば、悪いなんて自分が一番わかっている。その原因をしっかり考えなければいけないと思ったし、サッカー選手はピッチの出来が全てなので、そこを改善できるようにやっていくだけです」

イラク戦以降、右サイドバックのポジションは菅原に取って代わり毎熊晟矢が務めることになった。前線の選手と巧みに連携しながら攻守に積極的な姿勢を見せれば、状況を見ながら中に入ったり、外に出たりしつつビルドアップの起点に。何度もボールに触りながら攻撃の打開を図り、果敢なミドルシュートからゴールに絡んだ。

菅原はそんな毎熊の活躍を見て「彼の相手に合わせてプレーしていく、ポジションを変えていくというスタイルは、もっと学ばなければいけない点だと思っている」と表現した。ただ、その上で「自分と毎熊選手が違うというところをまず理解しないといけない」とも口にした。

同じポジションのためどうしても比べられるのは仕方がない。だが、菅原が得意としているプレーと、毎熊が得意としているプレーは違う。中に入ってゲームを組み立てる能力よりも、アグレッシブに攻め込んでクロスやパスで決定機を演出する。どんどん追い越す動きを見せ、ダイナミックなプレーをすることで攻撃のリズムを良くする。そういった自身の特徴をもっと発揮していくことが必要だと感じていた。

「毎熊選手がやったことを自分がやらなければいけないのかと言われたら、そうではない部分と、そうであるべき部分はあると思う。そこの区別をしっかりつけないといけない。チームとして戦っていく中で、チームから求められるベースと自分がやらなければいけないことを考えて、その上で自分が持っているプラスアルファ、特別なものを出して、チームに貢献できるようにと考えないといけないと思っている」

結局、チームが早期敗退したため、菅原のリベンジ舞台はやってこなかった。次なるチャンスがいつやってくるかわからない。だからこそ、今の自分から変わらなければいけないという思いを強くした。

「日本代表のSBを任されているけど、もっとそれ相応のプレーをしないといけない。いくら親善試合で自分なりに納得のいくプレーができていたとしても、こういう公式戦で、国同士の戦いでしっかりしたプレーをしないと意味がない。自分自身の課題として持ち帰って、そういうところに向き合っていきたい」

完璧な選手に近づくための過程

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あれから約1カ月が過ぎ、オランダのAZには新たな進化を遂げようと励む菅原の姿がある。2日に行われたエールディビジ第24節のスパルタ・ロッテルダム戦では、するすると前線へ動いていくとストライカーのようなフィニッシュを決めて今季初ゴールを奪取。それ以外にもダイナミックな動き出しからチャンスメイクする場面も見られた。チームに戻ってから監督が代わり、やり方にも変化がある中で、どう自分に向き合ってプレーしているのかを聞いてみた。

「自分はどういう選手なのか。ふわふわと『こういうふうな感じ』とかではなく、自分はこれが強みで、自分はこういうことを突き詰めなければいけないというのを具体的に整理して毎試合臨んでいます。攻撃では結果、数字を残して(相手の)脅威にならないといけないし、守備のところでは1人で全部守れるぐらい存在感を放たなければいけない。毎試合、失敗してもいいからどんどんトライしていこうとやっています」

もちろん完璧なプレーを目指すが、「求めている理想像になれるとも思ってない」。毎試合、成果もあれば課題もある。その上で、完璧を目指すことが大事であり、そういった日々を「完璧な選手に近づくための過程として捉えなければいけない」と菅原は言う。

確かにアジアカップは上手くいかなかった。だけど、下を向いて何も成果を得られない時間が続いたら意味がない。個人のパフォーマンスを上げ、それを継続的に出していく。そういった一つひとつの積み重ねが、次なるステップへとつながっていくのだ。

「どこまでやれるかは自分自身に最も期待していることだし、やれると思っていることもたくさんある。だからこそ、もっと高いところに自分の理想を置いて、それを求め続けなければいけない。それを達成するためには満足してる暇もないし、どんどん成果と課題を抽出してやっていかないと、おいてけぼりになる。目指すところに向けて、ただ積み重ねていくだけです」

まだまだ自分の力はこんなものではない。自分自身の力を信じながら、さらなる成長を求めて菅原は一歩ずつ前に進んでいる。

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