2019-11-18-U-22japan-moriyasu©Kenichi Arai

「融合試験失敗」。U-22代表、コロンビアに完敗の一戦で見えた明らかな課題

 東京五輪で金メダルを獲る。明確な目標のもと、国内初の強化試合に臨んだU-22日本代表。だが、17日、エディオンスタジアム広島で開催されたキリンチャレンジカップ・U-22コロンビア代表戦の結果は0-2の完敗。スコア以上に内容も伴わなかった一戦について、この代表の立ち上げ時から取材を続ける川端暁彦氏はこう見る。【写真=新井賢一】

■攻守にチグハグ、機能しないチーム

 晴天に恵まれたエディオンスタジアムには真新しいレプリカユニフォームに身を包んだサポーターも数多く詰め掛け、ちょっと濃いめの期待感が充ちあふれていた。東京五輪を目指して立ち上げられた代表チームの活動は2年近くに及ぶが、国内での試合経験は皆無。言ってみれば、東京五輪日本代表のお披露目試合だった。

 堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)といったA代表でプレーする選手たちもこちらへ合流。指揮官が今回の招集リストを「ベストメンバー」と形容したこともあり、いよいよ五輪へ向けての強化が本格化するというムードもあった。だが、南米の強豪コロンビアを向こうに回しての試合は、攻守でチグハグな内容となって、0-2の完敗。良いところを探すのが難しいような試合内容になってしまった。

以下に続く

■徹底的なアウェイ主義で強化してきたが…

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 もともと、東京五輪を目指すU-22日本代表は、徹底された「アウェイ主義」で強化を図ってきているチームである。リーグ戦の合間を縫いながら世界各地を飛び回って転戦し、ひたすら実戦経験を積み上げてきた。アジアでは年上の大会に参戦し、昨年8月のアジア競技大会ではプレミアリーグで活躍するソン・フンミンらを擁した韓国と渡り合って経験値を積み上げた。

 今年に入ってからもトゥーロン国際大会で準優勝、コパ・アメリカでは“オーバーエイジ候補”の選手たちを加えた編成で南米のA代表チームの胸を借りて力を蓄え、先月はアウェイの親善試合でブラジルを撃破する快挙も達成していた。

 満を持して初めての「ベストメンバー」が揃う国内初実戦となる今回は、そうした積み上げを見せる場になる――かと思われたが、そう甘いものでもなかったようだ。

 初招集となった堂安が「半信半疑で試合をした部分もあった」と振り返ったように、連係面は手探り状態。独特の部分がある[3-4-2-1]システムでの噛み合わせの難しさもあって、前半はチームとしての機能性が余りにも低かった。記者の一人が「まるでJOMOカップ(かつてJリーグであった選抜チームによるエキシビジョンマッチ)」と嘆いていたのは印象的で、まさに即興のオールスターチームを観ているような違和感が付いて回った。

■急に入ってきた選手が合わせる難しさ

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 戦術的に機能していなかったものとして一例を挙げると、堂安が「ボランチが中にいって、2シャドーも中にいって、センターバックの一人が持ったときに僕のポジションとボランチのポジションがかぶってしまう」と言っていた部分に表れている。堂安と久保はどちらも「(ピッチの)内側で受けたいタイプ」(MF田中駿汰/大阪体育大)の選手であり、無駄な渋滞が発生してしまって、スペースを使えないシーンが頻出した。ウイングバックの位置取りも低くなる中で、攻撃は堂安と久保が個人技で“何とかする”しかないような場面ばかりで、屈強なコロンビア守備陣を相手に打開できる可能性は低かった。

 このシステム、このチームでのサッカーを初体験する堂安に何となくプレーさせてしまったこと自体が失敗だったのは否めないが、これは今後も付いて回る問題でもある。堂安を次にこのチームへいつ招集できるかは不透明で、それは久保や他の欧州組についても同じこと。急に入ってきた選手がパッと合わせるしかない難しさは、最終的にオーバーエイジ選手を融合させていくという部分でも確実に課題となる部分だからだ。

 さらに来年1月には東京五輪アジア予選を兼ねるAFC U-23選手権がタイで開催され、こちらに参戦予定。貴重な公式戦の真剣勝負で実戦経験を積める場となるが、いわゆる「ベストメンバー」を呼べるわけではない。これは今年12月末に予定されているキリンチャレンジカップ・ジャマイカ戦(トランスコスモススタジアム長崎)も同様だ。来年3、6月のインターナショナルマッチウィークにはW杯予選が組まれており、五輪年代の選手たちにどちらを優先させるかは悩みどころとなる。

■「引き下げる」融合の難易度

2019-11-18-U-22japan-moriyasu©Kenichi Arai

 森保監督は五輪年代の選手をA代表へ引き上げることによる融合を強く意識させてきたし、実際コパ・アメリカではその片鱗を観ることもできた。ただ、A代表の選手を五輪代表へと「引き下げる」場合となると、五輪チームが[3-4-2-1]という独特のやり方を積み上げてきたこともあり、思っていた以上に難易度が高くなっているのかもしれない。

 それなら、A代表の選手たちはオーバーエイジを含めて除いてしまえば良いじゃないかという極論も出てきそうで、確かに「五輪でそこそこいい試合をして経験を積む」ことを目標に据えるなら、それがベターなやり方だろう。ただ、森保監督と日本サッカー協会が掲げる目標は「金メダル」である。

 試合後、森保監督はあらためて選手たちに「金メダルは私だけの目標なのか? チームで共有しているものなのか?」と問いかけたそうだが、まさにその「金メダルを獲る」という目標から逆算するのであれば、A代表で戦っているハイレベルな選手たちの力は欠かせない。

 五輪代表の強化をW杯へとスムーズに繋げていくためにも、来年の五輪イヤーは今年以上に「世代融合」がポイントになるし、意識してやらねば五輪本番で今回のような失敗が繰り返されることも確実。タレントを放り込んで並べればうまくいくような話ではない。そのことを確認できただけでも、広島での「融合試験失敗」に価値はあったのではないか。東京五輪まで残り9カ月。余裕を持てるほどの時間は残されていない。

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