2018-04-18-kawashima-japan

川島永嗣、「正直ショックでした」と語る恩師ハリルへの思い…上へ行くため今求められること

4月15日に行われたリーグ・アン33節のレンヌ戦で、GK川島永嗣が所属するFCメスは、前半戦での1点ビハインドから後半に2点を返して、1月27日の23節以来10試合ぶりの勝利。欧州カップ戦出場を狙う5位のレンヌを破るという善戦で、19位のトロワとの差は勝ち点4に縮まった。

試合が終了する間際は、「(勝利が)久々すぎて緊張しました(笑)勝てるかどうかのギリギリのところで…」と苦笑まじりに熱戦を振り返った川島。

以下に続く
2018-04-18-eiji-kawashima(C)Getty Images

■解任されたハリルへの率直な思い

しかし1週間前のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任に話が及ぶと、とたんに表情がくもった。

「(解任のニュースを聞いたときは)正直ショックでした。もちろんサッカーの世界の中で監督が急に変わるということはあるし、ああいう形で突然物事が起こるということはありますけど、本当にこれからW杯、というところだったという部分もあるし…ただ簡単に一言で『前を向いてやっていかないといけない』と言えるような出来事ではないと感じています」

ハリルホジッチの挑戦が、志半ばにして、このような形で終わってしまったことにも、川島は心を痛めている様子だ。

「一人の選手として、自分も4年間色々な犠牲を払ってW杯に向かってきている。そしていいか悪いかは置いておいても、ヴァイッドも3年間ずっと色んなものを準備してここまできたわけだから、そういう思いを考えると、残念な気持ちは大きい。もちろん前に進んで行かなくてはいけないですけど…」

ハリル監督からはいつも厳しい指摘を受けていたという川島だが、それだけに自分が成長する機会を与えてくれたという思いも併せ持っていた。

「(ヴァイッドは)難しいキャラクターだとは思いますけど、僕自身も難しい状況に置かれたし、でもその中で、自分が成長するためにいろいろなことを考えさせてくれた人でした。監督の信念は信念で、彼自身の色々な人生経験の中でできてきたものだと思うので」

■「妥協しない人。好き嫌いなんてない」

人には厳しいが、自分にも厳しい。そんなハリルホジッチの人間性を、川島はあらためて実感したばかりだった。解任発表のほんの1週前、ゲストに招かれたフランスの人気サッカー番組『テレフット』の中で、現役時代、2度もリーグ得点王になっても(82-83、84-85シーズン、ナント時代)、それでトップフォームかと聞かれたら、「いや、まだトップフォームじゃない、まだやれる」と言っていたハリルホジッチのエピソードを観て、「それだけ妥協しない人なんだな」と感じていたという。

「僕の印象からしたら、(監督には)好き嫌いなんてないと思うし、本当に一人ひとりの選手がよくなるために、物事を言ったりしていたと思う。それは僕に対してもそうだったし…」

2018-03-27-halil(C)Getty Images

フランス語がわかることで、おそらく他の選手以上にそれをわかっていた川島は、ならばもっと自分が間に入ればよかったのではないか、と後悔しているようでもあった。

■W杯で上へ行くために今求められること

しかし現実的にW杯は2カ月後に迫っている。

日本代表はここから新体制のもと、前を向いて進んでいかなくてはならない。そのために必要なことは何か?

「前のキャンプも含めて、結果もなかなか出ていない中、選手一人ひとりがもっともっとやれる部分はあると思う。そこを自分たち自身が再認識して進んでいかないと。海外でやっていようが日本でやっていようがどれだけ自分たちが高いレベルのプレーを目指して、そこをベースにチームとしてまとまっていけるかが大切だと思います。

日本で自分たちのグループがどう見られているかわからないですけど、今これだけ海外でプレーしている日本人が増えていても、相手のレベルを考えたら、正直もっともっと自分たちがやらなきゃいけないことはあると思う。

そこを本当に自分たち自身が詰めていけるかだと思うし、簡単なことかもしれない。パスの質やコントロールの質かもしれないし、僕だったら1本でも多くのシュートを止められることかもしれないし。頭でっかちになるのではなく、冷静に、根本的にそのひとつひとつプレーの質もそうだし、チームのために犠牲をはらってやることも含めてベースになければ、何もその上には乗っかってこないと思います。

時間もないし、その時間のない中で、どれだけ明確に自分たちが考えを持ってやれるかということは非常に大きいと思う。あとは、本当にハードワーク。根本的に自分たちが相手より倍走る、倍ハードワーク、という気持ちがなければ難しい」

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不安定な中で自信を得る最善の方法は試合に勝つことだが、本戦前のテストマッチも限られている。

「そういう自信を自分たちの中で、結果だけでなくピッチのプレーの中でも深めて、短い時間で高めていかないといけない。でも最初からまとまっているグループなんてないし、2010年のときもそう。やっぱりチームというのは苦しい時期を乗り越えて一つになるし、最初から良いグループである必要はないと僕は思う。この苦しい中で、選ばれた人が生まれ育った国のために本当にすべてを注げるかだと思うので。一人ひとりが、チームを良くするために捧げられるか、というのが非常に大きいと思います」

今回の苦難をともに乗り越えることで、日本代表が一体感を取り戻し、同じ志をもったグループとしてW杯に臨むことができるなら、この不可解な解任劇を敢行したことの、せめてもの理由付けになる。

「最終予選だって、最初からチームはできあがっていたわけじゃない。(初戦の)UAEに負けたときもそうだし、逆にイラクに逆転勝ちしたときとか、ああいう試合を通して自分たちはグループになっていくと思うので」

取材・文=小川由紀子

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