FIFA女子ワールドカップフランス2019の決勝トーナメントに臨んだなでしこジャパン(日本女子代表)は25日、ラウンド16でオランダ女子代表と対戦し1-2で敗れた。失点したものの追い付き、後半はオランダを押し込んだが、試合終了間際に痛恨のハンドでPKを献上。なぜこの時間帯に失点したのか。そもそもなぜ追加点を奪えなかったのか。なでしこが世界に突き付けられた新たな課題とは?
◼︎PKを取られる確率は高まっている
3大会連続の決勝進出を目指したなでしこジャパンだったが、決勝の舞台は遠く、今大会で上位を占めるヨーロッパ勢との力の差を痛感させられた大会となった。
なでしこは警戒していたオランダのセットプレーから得点を許し、前半に追いつくものの、後半に好機を作っても追加点を奪えない。MF籾木結花(日テレ・ベレーザ)の投入によって、前がかりになっていたところを逆手に取り、オランダはPKから勝ち越し点を奪って、準々決勝に駒を進めた。
この日の1失点目に象徴されるように、なでしこが大会前から課題としていた、セットプレーからの失点は、大会中にも克服し切れなかった。練習は原則冒頭15分以降は非公開だったが、選手に聞くと攻守両面でセットプレーの練習を繰り返していたようだ。しかし、その成果は乏しかった。
決勝点となったPKは、DF熊谷紗希(オリンピック・リヨン)がシュートブロックをしようとした際に手に当たり、与えてしまったもの。
熊谷は「正直、あのタイミングで手はかわせなかった。でも、その前の守り方にやりようはあったかなと思う」と振り返る。「9番(ビビアーヌ・ミデマー)がフリーになっていたのは分かっていたし、あそこでシュートを打ってくることも分かってはいた。だから自分の立ち位置をもう少し修正できたかなと思う。もう少し自分の体の角度を変えることができていたら…」と反省した。
新たに適用されたルールやVARの導入など、判定の基準も変化している。同じ失敗を繰り返さないためにも、今後はいかにペナルティエリアに相手を近づけないか、そのためにはどんな守り方が必要かを突き詰めていくしかない。
なでしこはこれまで、「ゴール前では体を張ってでも止める」という粘り強い守備を売りにしてきたが、これはもう通用しない。体を張って止めればPKを取られる確率が高まっている今、違う守り方を模索しなければならない時が来ている。
◼︎イメージが共有できなかった攻撃面
(C)Getty Image攻撃に関しては、MF長谷川唯(日テレ)が決めた同点弾は、今大会屈指のきれいな崩しだった。
FW岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)の一瞬のひらめきで送るダイレクトパスは、これが通ればなでしこのビッグチャンスとなる。ただし、この成功率が高くないために、シュートのひとつ手前で自らチャンスを潰すシーンが多かった。大会を通じて見ても、パスの出し手と受け手のイメージが異なり、シュートまで至らない場面は減らなかった。
今大会は常に複数のケガ人がいた。
実戦練習が満足にできず、攻撃のイメージが高い精度で共有できなかったのは、それが影響していたのではないか。高倉麻子監督は試合後の会見で、「コンディションが期待したように上がってこない選手もいれば、コンディションを上げてくる選手もいた」と、そのコントロールの難しさを再認識する言葉を残している。
約1年後の東京五輪では、おそらく選手の枠は18人と今回よりも狭くなる。今回の反省を生かし、大会期間中に充実した練習ができるよう、コンディション最優先で選手が選ばれていくべきだろう。
◼︎欧州、アメリカとの決定的な違い
今大会の上位を占めているヨーロッパ勢+アメリカのサッカーを見ると、パススピードの加速化が目立った。
「(帰国したら)このスピード感をチームに求めていきたい。ここからレベルアップしていくためには、この世界基準をまずは周りに伝えていかないと」と試合後に籾木は話していた。
「やっぱり結果が伴わなかったぶん、何らかの修正が必要。東京五輪に向けて変化していかないといけない」とはDF清水梨紗(日テレ)の言葉だ。岩渕は涙ながらに「澤さんや宮間さんに近づこうとしてやってきたが、過去2大会の結果を考えると物足りない。本当にもう一回、イチから。自分たちが優勝を掴みにいくんだという気持ちを持って、すべてを見直していきたい」と話した。
世界の潮流と言えるパススピードの加速化に、なでしこが追随するのか、または独自の道を進んでいくのか。それもまたチームで共有していかなければ、同じ絵は描けない。
ラウンド16での敗退を、ケガ人続出のPK判定による不運の敗退と見るか、力の差による妥当な敗退と見るか、またはその両方と見るか。その選択を誤れば、なでしこは1年後、メダル候補でもなくなっているかもしれない。
取材・文=馬見新拓郎
▶サッカー観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【関連記事】
● DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZNが「テレビで見れない」は嘘!6つの視聴方法とは?
● DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃料金体系→こちらへ ※
● 【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
● 【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
● Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です