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みなさん、こんにちは。中村憲剛です。ヨーロッパのシーズンは休止モードに入りましたが、南半球に目を移せば楽しみなイベントが控えていますね。そう、コパ・アメリカです。ざっくり言えば、EUROやアジアカップの南米版。つまり、南米の代表チームによる大陸選手権ですね。もっとも、1990年代以降は別大陸の「招待国」も交じっていますが。今回は日本も1999年大会以来二度目の参加ということで注目せずにはいられませんね。そこで2回にわたり、大会の見どころを探ってみたいと思います。
■EUROと遜色ない大会
(C)Getty ImagesまずEUROと比べると、人に焦点を当てやすい部分があるのかなと。最近は南米勢もより組織的な戦いをするようになりましたけど、そこを個で打開できる選手がいますからね。その数はヨーロッパよりも多いと思うんですよ。独りでやり切れるタレントが。個人で仕掛ける機会が多ければ、自ずと1対1や球際の争いも激しくなる。そのあたりも南米サッカーの醍醐味でしょうね。昔からそういうイメージを持っていましたけど、いまでも根本的な部分では大きく変わっていないんじゃないかと。
何となくEUROよりもランクの劣る大会という先入観が見る側にあるような気もしますが、まったく遜色ないレベルにあると思います。ヨーロッパとは流儀が違うというだけで。驚くような技術や豊かな創造力が華麗な印象を与える部分もありますが、それと同じくらいに「汚さ」も際立つ。ダーティーワークですね。後ろから小突く、蹴飛ばすなんて当たり前。審判の目が届かぬところで。もう『仁義なき戦い』ですよ。EUROでは考えられないでしょうね。
人間の生々しさ、欲や業(ごう)みたいなものが前面に出てくる。だから勝利への執着心も半端ない。むき出しの感情が激しくぶつかり合うところもコパ・アメリカの面白さだと思います。僕も代表時代に何度か南米の国と戦った経験がありますけど、ホントに嫌でしたね。人に対してガツガツ来るんですよ。すぐに個人対個人の土俵に持ち込んでいく。楽にやらせてはもらえない。彼らは子供の頃から個が育つ環境にいる。だから、うまくなるんでしょうね。1対1で勝つための力が。引き出しの数が少ないと勝てませんから。
足元の技術はもとより、体の向き、当て方、入れ方、手の使い方も含め。だからボールを持つことについて少しも恐れていない。自分の近くに敵の選手がいても。逃げも隠れもしませんよ。それだけの自信がなければ生き残っていけない。そういう世界なんでしょうね、南米のサッカーは。僕ら日本人も大いに学ぶ点がありますね。とにかく、EUROとはまた違った面白さ、味わい方があると思います。
■最大の注目はブラジル、そして日本は…
もちろん、最大の注目はホスト国のブラジルでしょう。ご記憶のとおり、2014年のロシア・ワールドカップでは辛酸をなめましたからね。2016年のリオ五輪で念願の金メダルを手にしましたが、昨年のワールドカップではベスト8止まり。今回は同じ南米勢が相手ですが、復権を果たす好機と考えているんじゃないかと。最終メンバーの顔ぶれを見ても、明らかに力が入っているのがわかりますから。
過去の大会を振り返ると、ブラジルに限らず、必ずしもベストメンバーじゃないケースがあるんですよね。国内組や若手主体の編成で臨む場合もある。主力の大半がヨーロッパのクラブで活躍していることも影響しているのかもしれない。いわゆる「海外組」を柱に据えた場合に重要なのはテンションとコンディション。長いシーズンが終わった直後ですから、心身両面でリフレッシュした状態にあるのかどうか。どちらか一方でも欠けてしまうと厳しい戦いを強いられるでしょうね。その点、ホスト国は自然とやる気を刺激されますから、ブラジルの優位は動かないかと。
じゃあ、対抗馬はどこか。そう聞かれても、アルゼンチン、ウルグアイ、コロンビア、チリというありきたりな答えしか返せませんが。2015年、2016年に連覇を達成したチリはどの程度のモチベーションがあるのか。昨年のロシア・ワールドカップには予選で敗退し、出場できませんでしたからね。ちょっとピークを過ぎた感は否めません。むしろ、2大会連続で準優勝に甘んじているアルゼンチンのほうがやる気満々かと。ブラジルとの直接対決は一番見たいですね。
今大会の招待国はメキシコやアメリカといった北中米カリブ海の国々ではないところも新鮮でしょう。日本とカタールが南米勢との真剣勝負でどこまで戦えるのか。アジア勢の「現在値」を知る意味でも貴重な機会ですからね。もちろん、カタールの戦いぶりも気になります。日本は諸事情から若手主体のメンバー構成になりましたが、楽しみですね。この大会で経験することのすべてが各々の財産になりますから。良いことはもちろん、悪いことも含め。だから失敗を恐れずに、どんどんチャレンジしてほしいですね。次につながるのも、僕らが見たいのも、そういう姿でしょう。大いに期待していますよ。
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です