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なぜ、札幌は優勝できなかったのか?川崎との差、激闘のルヴァン杯決勝で勝敗を分けたもの

 北海道コンサドーレ札幌は26日に行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝で、川崎フロンターレにPK戦の末に敗れて準優勝に終わった。初のファイナルながら、リーグ王者の川崎を相手にして勇敢な戦いを演じた札幌。それでも、あと一歩のところで優勝カップに手が届かなかった。では、勝てなかったのは要因は一体どこにあるのだろうか。

■川崎にあって札幌になかったもの

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 強者・川崎をあと一歩のところまで追い詰めての準優勝。クラブ史上初のファイナリストとなった札幌の、その見事な勝ち上がりには大きな称賛を送りたい。

 PK戦の結果、川崎が勝者となったが、90分、さらには延長戦のなかで川崎が作った決定機やチャンスの数を考えれば、それは内容を反映した結果と言える。それでも札幌はあと一歩のところまで詰め寄ったわけで、素晴らしいファイトをしたし、勝機もあった。

以下に続く

 延長戦までの120分間は3-3のスコアであり、負けてはいない。PK戦も運などの要素が大きく作用する領域。そこまで持ち込んだ。でも、勝負には勝てなかった。ならばその勝負を隔てたものはいったい何だったのか。

 試合後、J1リーグ戦、天皇杯、ルヴァンカップでの優勝経験を持つGK菅野孝憲に率直に聞いた。菅野はまず「試合に出場していない自分がこういう発言をすることに賛否両論あるだろうけど」としたうえで「120分間では負けていないとか、PKはクジ引きみたいなものだとか。もしそう思ってしまったならば、その時点で甘い。上を目指すならば、ここから勝者になるためのあと一歩を追い求めていかなければいけない」とキッパリ言った。

 試合後の会見でミハイロ・ペトロヴィッチ監督は経験値の部分に言及した。「川崎はリーグ戦、カップ戦で常に優勝争いの中で戦っているチーム。彼らが持つ経験、それは我々にはないもの」と。

 選手たちは「経験値」という単語こそ用いなかったものの、抱いている感想については同じだった様子。荒野拓馬は「ゲームコントロールのところがやはりもの足りなかった。延長戦では、退場者が出て1人少なくなった相手に追いつかれてしまったわけで」と振り返り、鈴木武蔵は「もっと精神的な余裕が欲しかった。リードをしている時間帯には、何かアクションを起こすのではなく『なんとかこのまま試合が終わってくれないかな…』と願いながらプレーをしてしまっていたような気もしている」と悔やんだ。

 ただし、そうした経験の部分が必ずしも決定的に優勝と準優勝とを隔てたとは言い切れないような気もしている。確かに川崎は32歳の小林悠が途中出場で2得点を奪う活躍を見せたし、38歳の中村憲剛がピッチに送り込まれてからはこの選手がリーダーシップをとってチームにリズムを作った。

 しかし、川崎は88分に小林の得点で2-1としてからは時間を使って試合を終わらせにかかりながらも、リスタートでイージーなボールロストをするなどし、後半のラストプレーでCKから被弾。逃げ切りに失敗をした。川崎にだってナイーブさはあった。

■実力の差が勝敗を隔てた

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 元も子もない物言いになってしまうが、勝負を分けたのは要するに実力の差だろう。

 10分に菅大輝の得点してからの札幌は、前半のうちから防戦となってしまっていた。何度もチャンスを作られ、レアンドロ・ダミアンのシュートはポストが跳ね返してくれたし、決定的なピンチを相手のミスで逃れることが数度。後半ラストプレーの得点で追いつく激闘が素晴らしく、そこに視線が向きがちだが、プレーレベルでは川崎が優っていた。

 自陣に押し込まれ、何とか跳ね返すシーンが前半から続いていたが、さながらそれは試合終盤の逃げ切り体制時のような光景だった。3得点のうち2つはセットプレーである。

 札幌は前線からの守備が緩く、川崎のセンターバックが自由に配球できる局面を与え過ぎていた。そこから揺さぶられ、走らされた。ジワリジワリと体力が奪われていった。ハーフタイムに修正を図ったことだろうが、後半が始まっても終盤までその展開は変わらない。

 前半のうちに選手を入れ替えて前線の守備を改善する策もあっただろうが、延長がある試合であることを考えるとその判断は簡単ではない。もっと言ってしまえば、延長戦に入って川崎が10人になってからも前線のプレスがハマらない場面が目立ち、最後までこの部分が響いてしまったように感じる。

■この悔しさの先には明るい未来がある

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 あらためて本稿の主旨に話を戻すと、「PK戦でタイトルまであと一歩に近づいた札幌が僅かに足りなかったものは何なのか?」という部分である。総括をすると、苦しい試合でありながらも持ち前のハードワークとタフな粘り強さで、川崎と札幌の間にあった力の差をグッと縮めることに成功し、その結果、僅かな一歩の不足に至ったのだと思う。

 つまりは何かが足りなかったというよりも、足りない部分のほとんどを埋めるほどの健闘をしたと見るべきなのかもしれない。

 当たり前だが、力の差があるに決まっている。なにしろ相手はJ1で2連覇中のチームだ。しかし、一発勝負ならば何かを起こせる可能性がある。カップ戦ファイナルとはそうした舞台であり、実際に札幌はその可能性を感じさせた。選手達はまったく満足しないだろうが、多くのサッカーファンの心を揺さぶったはずだし、それだって十分に大きな結果だ。

 勝負である以上、勝者と敗者が必ず存在する。リーグ戦には引き分けがあるが、この決勝戦ではそれがない。ある種、残酷さも持ち合わせる晴れ舞台で、果敢に戦い、果敢に失敗もした選手達に心から敬意を表したい。ファイナルに進んだからこその悔しさも、きっと明るい未来につながるはずだ。

 最後に、前出の菅野の言葉を借りて締め括りたい。

 「監督は覚悟を決めて札幌で指揮を執っている。自分も人生をかけて、札幌がタイトルを獲るために必要なものを、また明日から追い求めていきたい」

文=斉藤宏則

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