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U-23日本代表、パリ五輪3.5枠争奪の死闘へ。死に物狂いの難敵が待ち受ける険しい道のり

 U-23日本代表は、16日に開幕するAFC U-23アジアカップ カタール2024でパリ五輪出場権獲得を目指す。出場権獲得の条件や鍵となるポイントは?【取材・文=林遼平】

■フラッシュバックするA代表の戦い

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 中国戦前日、見知ったトレーニング場に足を踏み入れた時、脳裏にほんの少し前の記憶が蘇った。1月にカタールで行われたアジア杯。日本のA代表が惨敗に終わった、あのアジア杯である。

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 もちろん目の前で調整を続ける選手たちはあの時とは違う。パリ五輪を目指す若き日本代表選手たちだ。記者陣の顔ぶれもほとんど変わっている。

 ただ、どうしてもあの日々が頭を離れなかった。“今回も決して簡単な戦いにはならない”。そんなことを強く感じさせられた。

■“日本対策”への対応が鍵

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 U-23アジア杯は若い世代のアジアNo.1を決める戦いであり、かつ今回はパリ五輪の出場権をかけた重要な大会となる。パリ五輪のためにアジアに用意された切符は3.5枚。上位3チームはそのまま本大会に出場することができるが、4位になった場合は大陸間プレーオフでギニアと最後の1枚を争わなければならず、それ以下になれば出場権を得られない。まさに各国の明暗を分ける戦いが始まるのである。

 もちろん若き日本代表が目指すのはアジアを制してのパリ五輪出場。2022年に行われた前回大会は3位に終わったが、同等かそれ以上の結果を残すことが、未来を切り拓くためには必要になる。

 しかし、日本にとっては少しばかり苦しいチーム事情がある。予想されていたように、これまでチームを牽引してきた鈴木唯人や鈴木彩艶、斉藤光毅といった欧州で活躍する選手たちを、各クラブの事情等もあり揃って招集できず。制限がある中で現段階のベストなメンバーを選択したが、その影響でどうしても戦力ダウンは否めない。他国でも同じ現象が起きているため、日本にだけ言えることではないが、この状況を乗り越えていくだけの力が求められている。

 気になるのは、日本が相手にどれだけ警戒されているか。それこそ前述したA代表のアジア杯では、各国が“強い日本”から金星を得るために数々の対応策を準備。結局、日本はその策をなかなか崩すことができず、難しい試合を強いられる状況を作ってしまった。そういった思考は若い世代につながっている可能性もあり、相手が普段とは違った戦い方やスタイルを前面に押し出してくることもあり得る。そこにどう対応していくかは、大会を通しての一つのポイントになるだろう。

■技術がすべてではない

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 また、パリ五輪の切符という、いつもと異なる条件が付随した大会であることを踏まえれば、相手が死に物狂いで日本に立ち向かってくることだって考えられる。グループリーグでは中国、UAE、韓国と難敵との対戦が続き、決勝トーナメントに上がってもカタールやオーストラリアといった強敵と対戦する可能性が高い。険しい道が待っているのだ。だからこそ、時間をかけて積み重ねてきたことを積極的に出していくのは大前提で、それだけでなくメンタル的にも相手を上回っていくことが大事。そう内野貴史は説明する。

「試合に挑む熱量で、日本はいつも押されているなと感じることがある。でも、その相手の熱量に負けていい理由はないと思うし、もし自分たちが技術的にちょっと上回っていたとしても、熱量を落として技術で勝とうなんて思ったら絶対に足元をすくわれる。細かいところが大事というか、あらゆる勝機を絶対にモノにしていかないといけない。技術だけが、上手いサッカーをすることだけがすべてだとは思わないので、結果がついてくるようなサッカーができればなと思っています」

 綺麗に戦って勝てるほどアジアは甘くないことは、1月のアジアカップが証明している。相手が泥臭くくるならば、こちらも泥臭く勝利を掴みにいく必要がある。負けたらパリ五輪の切符は手に入らない。なりふり構ってはいられない。夢の舞台への挑戦権を得るために――。若き侍たちはすべてをかけた戦いに挑む。

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