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どこでドルトムントは道を間違えたのか…ボス体制は白星から見放され崩壊の危機に

まるでジェットコースターのような序盤戦となった。

クラブとリーグの記録を塗り替える華々しいスタートを切ったボルシア・ドルトムント。しかし、わずか数週間で、危機的な状態にさらされている。

公式戦9試合で2勝。チャンピオンズリーグではグループステージ敗退の危機に瀕しているドルトムントは、4日の“デア・クラシカー”、バイエルン・ミュンヘン戦の前に、すでに窮地に陥っていた。

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ピーター・ボス新監督の下、ドルトムントはブンデスリーガ開幕から7試合で6勝、21得点で失点2という、これ以上ないスタートを切った。カルロ・アンチェロッティ率いるバイエルンが苦戦続きだったこともあり、ドルトムントはメディアから優勝候補筆頭ともてはやされた。だが、ユップ・ハインケスが帰ってきたバイエルンの逆襲とともにドルトムントの衰退がはじまり、あっという間に窮地に立たされてしまったのだ。

キャプテンのマルセル・シュメルツァーは、1日のAPOEL戦を1-1で引き分けた後、危機感を口にし、後に撤回した。しかし、チャンピオンズリーグでの戦いぶりを見たファンたちにとって、キャプテンの言葉はまさに真実であったろう。レアル・マドリーとトッテナムに大敗したドルトムントは、キプロスのアポエルに対しても勝てなかったのだから、どのような批判的な言葉も受け入れる必要がある。

チャンピオンズリーグ敗退の公算が大きくなり、今シーズンを早々と棒に振ってしまうことのないよう、何としてでも国内タイトルをとらなければならない。だが、華々しいスタートを切った代償は、すぐに払うことになった。1カ月前には、2位と勝ち点差5で順位表のトップに君臨していたにも関わらず、土曜の試合に負けたことで、首位バイエルンとの勝ち点差は6にまで広がってしまった。

ドルトムントのハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOは、現在の危機的な状況を「病気」と称し、このままではバイエルンを倒してタイトルをとることは期待できないと繰り返し強調していた。ドルトムントが首位に立っていた時でさえ、ヴァツケは『ビルト』にこう語っている。

「バイエルンが今後どうなるのかが問題であることに変わりはない。バイエルンが復活すれば、我々にチャンスはない」

Peter Bosz Borussia DortmundGetty Borussia Dortmund

そしてハインケス監督率いるバイエルンが6連勝し、ヴァツケの正しさが証明された。「監督と選手との雰囲気が良くなれば、バイエルンが安定を取り戻すことは明らか」と話していた通り、「バイエルンはすべての試合に勝つことができる」とライバルは言葉通りの快進撃を続ける。

しかし、ヴァツケの見解では勝ち点3を失っても、今の段階ではまだ取り返せないことはないという。だが、バイエルンが今まで以上のミスを犯すことは考えにくい一方で、ドルトムントが勝利から遠ざかっていることこそ問題だ。今後1カ月の間にレヴァークーゼンとシャルケとの試合があり、完全にリーグ優勝を諦めてしまわないよう、すぐに体勢を立て直す必要がある。そして、幸か不幸か、DFBポカール3回戦の対戦相手は、FCBことバイエルン。宿敵に連敗すれば、年が変わる前に連覇の可能性も絶たれてしまう。

ケガ人と出場停止の選手が多数いる中、ボス監督は、ディフェンス陣を何度も入れ替えてきた。シーズン開幕から5試合は無失点だったものの、その後は失点続き。トッテナム、レアル・マドリー、フランクフルト、ハノーファーはすべて、ドルトムントのプレッシングを物ともせず、高いディフェンスラインの裏を取ってゴールを脅かした。一方、ドルトムントはミスを連発し、自らの首を絞めるようになっていた。

中盤の選手たちにも苦悩が見え始めている。ヌリ・シャヒン、ゴンサロ・カストロ、マリオ・ゲッツェの3人は、輝かしいスタートを切ったものの、すでに調子は下降気味。序盤戦ですでにコンディションの低下が見られていることは、チーム状況の悪さを如実に示す。

エースストライカーのピエール=エメリク・オーバメヤンは、16試合で15得点を挙げているものの、直近の5試合では1点しか取れておらず、不調のチームを象徴するような選手となってしまっている。

「自信がないように見えるかもしれない…とても難しい問題だ。我々は勝たなければならない。そうしないと、どんどん自信が失われていってしまう」

アポエルに勝てなかったことで、コメントの通りオランダ人監督と選手たちは困惑している。シュート数はドルトムントが29、アポエルが4で、ドルトムントが試合を支配していたことは間違いない。だが、枠内シュートはわずか8で、効率の悪さは、開幕からずっと変わらないことも記す必要がある。ビッグチャンスを作りだそうと奮闘しているが、最近では悲惨なミスを犯すほうが目立つ。

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ボス監督が高い位置でのプレッシングからの攻撃スタイルに執着していることが苦戦の原因ではないかというのが、論争の的になっている。敗戦を重ねながら、というジレンマを抱えた状況で選手たちは監督の戦術を弁護せざるを得なくなった。

「戦術が悪いわけではない」とシャヒンは語る。「シーズン当初からディフェンスラインは同じ高さだけど、当時は誰も何も言わなかった」。

また、夏のシーズン前には居心地の良さを語っていたゲッツェも『スカイ』で「システムやポリシーが悪いのではない。スタートはとても良かった。今、苦戦しているのは、良いことがいつまでもずっとつづくわけではないからだ。まだシーズン途中だし、これからよくなる」と前向きに語るのみだ。

クラブの幹部たちは、「監督の問題ではない。心配することは何もない」と、強気の姿勢を見せており、ヴァツケはこう語った。「今シーズン、停滞することもきっとあるだろうと思っている。だからと言って、監督の仕事に疑問をはさむことは絶対にないだろう」。

ボス監督は、アヤックスでも当初は同じような問題に直面したものの、クラブを国内リーグで優勝争いをするチームに改革して、ヨーロッパリーグの決勝に導いた経験があり、早々に事態を改善させられると確信している。

「成長するためのシステムを真に理解するには、時間が必要だ。停滞することもあるというのは、共通認識であるだけではなく、すでに何度もそう言っている」

シーズン中のチーム状況が最高から最悪へ変わり、これほど多くの問題が起こるとは考えていなかったかもしれない。

「コンパクトに試合を運びたいと思っていたが、全く機能しなかった。その理由は説明できない」

バイエルンに完敗を喫した直後、ボス監督は力なさげにそうつぶやいた。すでにドルトムントは、引き返せないところまで来てしまっているのかもしれない。

文=ピーター・マクビティ/Peter McVitie

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