2017-11-30-iceland(C)Getty Images

【W杯欧州予選総括】“最少国”アイスランドとスウェーデンの躍進…縮まる大国と小国の差

2018年ロシア・ワールドカップを目指す欧州列強の壮絶な戦いが終了した。今回の予選でも、歓喜から悲劇まで、数多くのドラマが生まれてきた。1年以上にも及んだ国のプライドをかけた戦いを振り返っていこう。

第1弾の「予選を突破したフットボール強国」、第2弾の「イタリア、オランダの敗退」に続き、最後に焦点を当てるのは「フットボール小国の躍進」だ。

W杯史上“最少国”となったアイスランドや、プレーオフでイタリアを破って突破を決めたスウェーデンの戦いを振り返ろう。

以下に続く

■W杯“最少国”の躍進の秘訣

今回のテーマである「小国の躍進」において、最たる例がアイスランドだろう。

人口約33万5000人、国土は102,828平方km――。人口は新宿区並み、国土は北海道よりわずかに広いだけの小国は、近年のフットボール界に旋風を巻き起こしている。

昨年行われたEURO2016で国際大会初出場を果たすと、グループステージ突破どころか、決勝トーナメントでは“フットボールの母国”イングランドを破ってベスト8に進出。世界にその名を轟かせた。この大会中に、サポーターとともに行う“バイキング・クラップ”は、一大ムーブメントにもなった。

そして、初の国際大会で自信を掴んだアイスランドは、クロアチアやウクライナ、トルコといった難敵と同居したW杯欧州予選でも素晴らしい結果を残す。

強敵クロアチアと1勝1敗で五分に渡り合うと、ウクライナと1勝1分、トルコには2連勝と難敵を次々に破り、7勝1分2敗で22ポイントを獲得。驚くことにグループ首位で、初の本大会出場を決めている。

これにより、アイスランドは2006年に出場したトリニダード・トバゴ(人口130万人)が持っていたW杯出場国の人口最少記録を塗り替えた。

アイスランドで選手として登録されているのは、男女合わせておよそ2万人。世界で最も少ない国の一つである。しかし、国民500人に1人というUEFAコーチングライセンス取得率を誇り、指導者育成に力を入れ、その優秀なコーチたちが育成年代から指導にあたっているのが近年の躍進につながっているということができるだろう。

もはやアイスランドは“ダークホース”ではない。「フットボール強国」に足を踏み入れつつある“最少国”の戦いに、ロシアW杯でも注目だ。

■大きな転換期の中、強国を次々と退けたスウェーデン

EURO2016でグループリーグ敗退となったスウェーデンは、同大会をもって長年チームをけん引してきたFWズラタン・イブラヒモヴィッチが代表引退を発表。絶対エースが引退し、大きな転換期を迎えた中、今予選に突入した。

フランスやオランダといった大国たちと同じグループAで、“死の組”に入ってしまったスウェーデンだが、組織的な守備と勇敢な戦い方で、強国たちと台頭以上に渡り合った。

グループ初戦でオランダと引き分けると、その後2連勝を記録。敵地でのフランス戦は1-2で落としたが、第6節のリターンマッチでは後半アディショナルタイムの決勝点で見事2-1と撃破した。最終戦ではオランダに敗れたが、得失点差で2位の座を死守し、プレーオフ進出を決める。

迎えたプレーオフの相手は、GKジャンルイジ・ブッフォンへ最高の花道を用意するために燃えるイタリア。最後の最後まで強敵が立ちはだかったが、ホームでの第1戦を1-0で勝利すると、第2戦では気持ちの入ったイタリアとの死闘を守りきってスコアレスで終える。2試合合計スコア1-0で、最後まで苦しみながらも3大会ぶり12回目の出場を決めた。

前回の欧州予選では、プレーオフでポルトガルとの激戦の末2-4で敗退を余儀なくされたスウェーデン。ここ数年、主要国際大会では毎回のように厳しい相手に苦杯をなめてきた北欧の雄が、ついに世界最高峰の舞台への切符を手にしている。

■縮まりつつあるヨーロッパの大国と小国の差

昨年のEURO2016でも話題となった小国の躍進。

アイスランドはもちろん、今回の欧州予選では出場を逃したウェールズや、プレーオフにまで進出した北アイルランドとアイルランド、グループリーグ敗退ではあったが、最後まで可能性を感じさせたモンテネグロなど、これまで日の当たらなかった「フットボール小国」が躍進を見せている。

各国に良質な育成メソッドや指導者が生まれてきたことにより、フットボール強国と弱小国と呼ばれてきたチームの差は、確実に縮まりつつある。W杯本大会でも、“ジャイアント・キリング”が多く見られるかもしれない。

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