2019_5_22_Shonan(C)J.LEAGUE

【動画】浦和vs湘南、“世紀の大誤審”はなぜ起きた?当該の審判団は「憔悴し切っている」

気になったジャッジを徹底解説する「Jリーグジャッジ リプレイ」の第12回が21日、DAZNで先行配信された。

今回は、Jリーグ原博実副理事長、Jリーグウォッチャーの平畠啓史さん、JFAトップレフェリーグループの上川徹シニアマネージャーが2度目の登場。SNSでつぶやきが多かったシーンを解説した。

『Goal』では同コンテンツの中から、注目のジャッジをピックアップ。第12回は、17日に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第12節の浦和レッズvs湘南ベルマーレの一戦から、湘南MF杉岡大暉のゴールが認められなかった場面を取り上げる。

以下に続く

■世紀の大誤審はなぜ生まれた?

試合は31分、湘南が2点を追いかける場面で、梅崎の縦パスに反応した杉岡が相手をかわして左足でミドルシュートを放つ。すると、ボールは右ポスト内側を叩いて、左側のサイドネットを揺らしたが、ゴールは認められず。ネットからの跳ね返りを拾った浦和GK西川周作がハーフウェーライン方向にボールを投げると、プレー続行となって浦和のカウンターが発動し、浦和FWアンドリュー・ナバウトが一対一のチャンスを迎える。そこでGK秋元陽太と交錯して笛が鳴り、ようやくプレーが止まることとなった。

上川氏は、この場面について「ボールがゴールラインを越えたかどうかというところで一番判断をしやすいのは副審」だとして、「主審のポジションからは、右のポストに当たるのは見えるのですが、左側にボールが飛んだ時には何名か選手が主審の前に立っているので、最後のボールの行方は確認できなかった」と説明する。

そして、「担当した副審とも話をさせてもらいました」と語る上川氏曰く、副審も「自分からゴールインがなかったかどうかを判断して主審には伝えた」とのことだが、肝心の判断は「右のポストに当たって、左のポストに当たってGKのところに跳ね返ってきた」と解釈してノーゴールとしてしまったことを明かす。「そのままボールがそこにとどまるか、ゴールの奥に入っていくのが通常のケース」であるため、左のネットから跳ね返ってきたボールを「ちょっと自分の思い込みで判断をしてしまったのではないか」とノーゴールの判定に至った理由を推測した。

ピッチ上では湘南側の選手やスタッフたちが猛抗議していたが、それに関しても「(審判団の)4人で集まって確認をするというのも一つの方法」ではあるが、「一番近い、良い角度で見ているのが副審のセカンド、逆サイドの副審」であり「副審からそれだけ自信を持った情報」が入ってきたのであれば、「結局副審の答えしか出てこない」と説明。「(他の審判が)セカンドの副審の判定を覆すだけの情報は持っていないということで、主審は自分で判断をして、6分間の中断はありましたが、次のプレーを再開させた」ということだったようだ。

とはいえ、「選手のリアクション」や「ベンチの雰囲気」を見ていて、審判団は「ああ、入ったんだな」という考えも持っていたとのこと。しかし、「セカンドの副審が一番正しく見えるところでそれだけ強いメッセージ」があれば、「印象だけで覆すことは危険」だと主審が考えたことが今回の誤審に繋がったというのが全貌のようだ。

原副理事長は、「そこ(副審の判断のみを信頼したこと)に問題があった。それ(審判団)以外はみんな分かっている」と指摘し、「これだけの反応(抗議)というのはJリーグを見ていてほとんど無い」ため、「『ちょっと待て』という、それ(熟慮)があれば、ここまで(の騒動に)はならなかったのではないか」と見解を述べる。

また、競技規則第5条、主審の決定に関する項目を抜粋すれば「プレーを再開した(中略)、主審がその直前の決定が正しくないことに気づいても、または、その他の審判員の助言を受けたとしても、決定を変えることができない」とあるとおり、今回の場面では浦和のチャンスシーンまでにプレーが途切れていなかったため、ルール上は後からゴールインと判断することも可能となっていた。

上川氏もそのことは認めつつ、「選手のリアクションだけで判定を下すことはしてはダメだ」とレフェリーグループは考えていると語る。結局、抗議によって判定を覆すことはなく、審判団の誰一人としてゴールインしたという「情報が十分ではなかった」点が、主審の判断に影響したと上川氏は再度解説している。

■主審は憔悴…今後の審判員のスキル向上へ

しかし、原副理事長が「(審判団の)4人だけが気が付かなかったとすれば、それは普通ではあり得ない。選手、スタッフのリアクションが普通ではない」と嘆けば、平畠さんも「これは、いわゆるヒューマンエラー」と審判のミスを追及。「今エラーだったねと認めて、正しい判定というか、そちらに持っていくようにできないのか」と議論を呼びかけた。

それに対し、原副理事長が「DAZNを置いておいて、ちょっと確認して、すぐ見られる。もちろんVARとか、そういうのがあれば一番良い」と意見を投じれば、上川氏はDAZNで確認するという点について「ルール上はダメ」だと返答。「VARだけしか許されていない」ため、「申請をして、いろんな資格を取って、そういうものを使わないといけない」と、簡易的にビデオ確認を導入することはできないことを示した。

そして、Twitter上で現役のJリーガーたちからもジャッジが苦言を呈される事態となっている今回の騒動に関して、平畠さんは「審判を守るという部分」でもVARが有用なのではないかと見解。すると、原副理事長は「準備はしています」と導入が近づいているとしつつも、「時間とお金もかかる。すぐ、ハイとやるわけにはいかない」と内情を明らかにする。

また、原副理事長はVARを「シーズン途中からやると、(適応の仕方や審判の練度などについて)それはそれで違う混乱」が生まれると口にする。さらに、ゴールの判定に関して「ゴールラインテクノロジーだけ入れるのは、シンプルはシンプル」と認めつつ、「VARと変わらないぐらいの値段がかかる。FIFAが要求しているので入れようとすると、4億円近く、J1だけでもかかります」と、まだまだ議論の段階だと主張した。

上川氏は、代案として追加副審の導入を挙げ、「実際に昨年までルヴァンカップに全部取り入れていますし、そこは何か特別な資格が必要だとかいうことではない」と実現可能であることを提示。とはいえ、「まずは現場の主審・副審が正しく判定を下すべき」であるため、今回のボールの挙動などをレフェリーグループで共有し、同じミスを犯さないことも重要だとしている。

さらに、原副理事長が審判団へのバッシングについて「今回のコメントでも『僕ら(選手たち)は命を懸けてやっている。何試合出場停止とかで発表される。レフェリーは、そういうのは無いですよね』、みたいに言うけど、それは全く違う」と主張。「3カ月ぐらい笛が吹けない」ことや、「もう一回やり直して勉強」することがあり、表には出ていないものの審判にも厳しい処分があると語った。

続けて、「(審判を)変に囲うだけではなく、オープンにして、みんなでどうやって彼らを今度サポートしていくかという議論に入っていけたら、一番良い」と原副理事長が見解を述べれば、「ここに関わった審判員はすごく憔悴しきっています」と上川氏。

今回の一件に関しては「映像を見たら明らか」ではあるものの、「色んな経験をしていて、色んなすごい判定も下してきているというのが、一方ではある」ため、「彼らがちゃんと自信を取り戻して、もう一回フィールドに戻ってくることが大事だし、そこで良い判定を下すことが大切だ」と審判団の今後を慮った。

また、審判員も「どの試合で、どんなパフォーマンスだったのかをチェックされて、ちゃんと評価点を下されて。シーズンの最後にその評価点を見ながら、J1からJ2に入れ替わる」とのこと。「競争の世界で彼らもやっているんだというのは、理解してもらえるとありがたい」と配慮を呼びかけた。

それに対し、原副理事長は審判員の評価方式について「(現在の元レフェリーが主に評価するだけでなく)クラブ関係者、あるいは元監督、元選手、そういう全体の目線が入ったほうが良い」と改善を促す。「問題が起きた時のコミュニケーションの取り方や、周りとの雰囲気」も評価に入れていくべきだと訴えた。

そして、「審判委員会のほうでも、彼に対してどういうサポートをして、どういうことをやるというのをオープンにした方が良い」と呼びかけ、「ミスはミスだけれど、選手だって、監督だって、みんなミスばっかりしているのがサッカーだから。これをどうやって改善していって、ということをみんなで力を合わせてやるというのが一番大切かなと思います」と締めている。

▶Jリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【関連記事】
DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZNが「テレビで見れない」は嘘!6つの視聴方法とは?
DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃料金体系→こちらへ ※
【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

Goal-live-scores
広告