
グループ A

イタリア


2018年W杯出場を逃したイタリアは、何が何でもプライドを取り戻す必要があった。そして、ここまで最高の形で実現できた。
アズーリはEURO 2020予選で10戦10勝という完璧な記録を打ち立てた。比較的簡単なグループではあったが、2018年10月から続く無敗記録を25に伸ばすことに成功している。
2018年にロベルト・マンチーニが就任して以来チームは常に変化してきたが、それでも成功を収めてきた。マンチーニ就任以来63人の選手が起用され、33人もの選手が代表デビューを飾っている。
主要選手が揃わなかったという点で、今大会の成績は予想しづらい。ニコロ・ザニオーロが復帰後すぐに膝靭帯を再び損傷。中心人物の離脱はチームにとって大打撃だ。 ※完全ガイドのデータ・情報などは6月4日現在
監督: ロベルト・マンチーニ
代表を指揮することはマンチーニにとって長年の夢であった。ゼニト・サンクトペテルブルクとの高額契約をすぐに取りやめ、代表監督を引き継いでチームの再建にかかった。
非常によい成果を挙げたことと、おそらく意外にもポジティブな姿勢を取ったことで懐疑派を黙らせることができたのだ。彼のスタイルは時々慎重に過ぎることもあるが、定位置を確保している選手はほとんどいない。
インテルとマンチェスター・シティでリーグタイトルを獲得したが、EURO1988では選手として優勝を逃したことを未だに悔やんでいるマンチーニ。この男の審査はまだ終わっていない。

スター選手:L・インシーニェ

2018年W杯予選プレーオフでスウェーデンに敗れた時には、ジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督に完全に忘れ去られベンチに佇んでいたインシーニェ。この小さな左ウィンガーは、マンチーニ政権下で出場機会を増やしている。だが、30歳を目前に控えたインシーニェにとって自身の価値を証明するために残された時間は長くない。
今シーズンナポリで大活躍したインシーニェは、サイドで無限のエネルギーを与える存在だ。スウェーデン戦でインシーニェを起用するよう公然と要求したダニエレ・デ・ロッシが、マンチーニのコーチングチームに加わっているのも皮肉なことだ。
基本予想スタメン
ドンナルンマ
-
フロレンツィ
アチェルビ
バストーニ
エメルソン
-
ジョルジーニョ
ヴェッラッティ
バレッラ
-
キエーザ
インモービレ
インシーニェ
期待の若手:A・バストーニ

チームは大きく若返りを果たしたが、10代のライジングスターは代表チームに入っていない。つまり、22歳のバストーニでも、マンチーニのリストの中では最も若い選手の一人なのだ。
すでに経験豊富なインテルのセンターバックには「ニュー・レオナルド・ボヌッチ」との呼び声がある。ボールを持ってもレベルが高く、非の打ちどころもない完璧なロングパスを供給できる。
同ポジションの中で最高クラスに成長する可能性も秘めた大器は、今シーズンのスクデット獲得においても重要な役割を果たしている
日程
6月11日:vsトルコ @ローマ
6月16日:vsスイス @ローマ
6月20日:vsウェールズ @ローマ
スイス


他国籍・多言語のスイス代表チームは困難の時を迎えている。キープレーヤーたちがクラブであまり活躍できていないのだ。
ジェルダン・シャチリはリヴァプールでほとんど出場機会がなく、グラニト・ジャカはアーセナルでキープレーヤーになったり無慈悲な批判を浴びたりと状態が安定しない。リカルド・ロドリゲスはワールドクラスの左サイドバックだと言われていたこともあったが、今ではトリノでベンチを温める日々。
それでも予選は順調に通過した。チームはいくらかエキサイティングなサッカーができており、2019年のネーションズリーグでは準決勝に進出。だが、最近の調子は安定せず。世代交代が必要かもしれない。
監督:V・ペトコヴィッチ
2014年から指揮を執るボスニア生まれの戦術家。EURO2016と2018年W杯でともにベスト16にチームを押し上げたことでファンの人気を得た。しかし、若干保守的な傾向もあり、その上チームリーダーに相応しくないと思われる一部の選手たちの起用に固執しているようにも見える。
果たしてペトコヴィッチはこのチームを前進させ、若い世代のポテンシャルを活かせるのか。人選については意見が分かれるところだ。

スター選手:ジェルダン・シャチリ

アンフィールドではあまり有効に起用されていないかもしれないが、この29歳は未だにスイス代表では最も才能があり、インスピレーションにあふれたスター選手だ。
シャチリはEURO 2016で最も美しいゴールを挙げている。ベスト16で敗退することとなったポーランド戦でオーバーヘッドを決めたのだ。さらに2018年W杯でもセルビア相手に劇的な勝ち越しゴールを決めてみせた。
シャチリは大一番に強い男だ。ボールが彼の足元に転がると、ファンは特別な何かを期待してしまう。望むらくは、もっと安定してくれればよいのだが。
基本予想スタメン
ゾマー
–
ムバブ
エルヴェディ
アカンジ
ロドリゲス
ツバー
–
フロイラー
ジャカ
–
シャキリ
エンボロ
–
セフェロヴィッチ
期待の若手:ルベン・バルガス

バルガスはスピードに優れた左ウインガーで、セントラルMFとしてもプレーすることができる。この22歳のアウクスブルクでのパフォーマンスは非常に有望だ。
3月のフィンランド戦では投入直後に代表2得点目を挙げた。相手が疲れた時にスーパーサブとして投入され、ディフェンスに混乱をもたらしている。
日程
6月12日:vsウェールズ @バクー
6月16日:vsイタリア @ローマ
6月20日:vsトルコ @バクー
トルコ


トルコはEURO 2020予選で素晴らしい成果を残すことができたが、これは若い世代のディフェンス陣の抜きんでた能力によるところが大きい。10試合で許したゴールはたったの3点。ホームではなんと無失点だ。フランスを相手にホームで挙げた2-0の勝利はまぐれではない。
3月のW杯予選でもセンセーショナルなスタートを切ることができた。オランダ代表に4-2で勝利し、続いてノルウェー戦では3-0で勝利。アーリング・ハーランドの制圧に成功し、連勝を飾った。強敵を相手にしても自信たっぷりの若いチームに国中が沸き上がっている。これまでの結果から期待も高まるばかりだ。
準決勝進出を遂げ、EURO 2008を再現することが今大会の現実的な目標となるだろう。
監督:シェノル・ギュネシュ
ギュネシュは間違いなくトルコサッカー史において最も偉大なゴールキーパーだ。監督としても大きな成功を収めた一人となっている。
ギュネシュは監督として、2002年W杯で代表チームを準決勝まで導いた。その後ベシクタシュを2年連続の優勝に導き、2019年に代表監督に返り咲いた。
69歳のベテランであるギュネシュ。キャリア序盤には数多の批判を受けたが、今は高く評価されリスペクトを受けている。若手を登用したり、ストライカーのポテンシャルを活かすことに長けている指揮官だ。

スター選手:ブラク・ユルマズ

遅咲きのユルマズの才能が開花したのは10年前。トラブゾンスポルに在籍中、他ならぬギュネシュの薫陶を受けた時だ。今やユルマズは35歳にして代表キャプテンとなり、チームを率いる存在になった。
トルコ国内の「ビッグ4」全てに在籍したのは、ユルマズを含めてたった2人だけ。そんな記録を持つブラクは国中のファンから愛され、時には憎まれる存在であった。派手な一面も持ち合わせ、紙面を幾度となく賑わせた。
昨夏にはリールに移籍し、衰えない挑戦心を見せた。今年に入ってからの目覚ましい活躍が功を奏し、渡仏初年度にしてリーグ・アンのタイトルを獲得。このベテランは3月のオランダ戦でハットトリックを決めている。考えうる限り最高の状態で大会に臨む。
基本予想スタメン
ギュノク
–
チェリク
カバク
デミラル
メラシュ
–
カラマン
トゥファン
ヨクシュル
チャルハノール
–
ヤズジュ
ユルマズ
期待の若手:オザン・カバク

カバクはこれまで目覚ましい台頭を見せてきた。ジェイドン・サンチョと同日に生まれたカバクは、2019年にシュトゥットガルトに加入して以来、ブンデスリーガ最高クラスの若手選手と評価されてきたのだ。
同年の「NxGn」にノミネートされた後、沈みゆくシャルケに加入したが、個人としての成長速度は全く落ちなかった。その後半年の期限付きでリヴァプールに加入し、スタメン起用が続くカバク。21歳のセンターバックはさらに経験を積んで本戦にやってくるだろう。
日程
6月11日:vsイタリア @ローマ
6月16日:vsウェールズ @バクー
6月20日:vsスイス @バクー
ウェールズ


今大会に向けたウェールズの取り組みは、ライアン・ギグス監督がDVで逮捕された関係で出場停止となった影響を大きく受けてしまった。
ギグス監督の指揮下、チームは徐々に進歩を見せていたのは確かだ。EURO 2020予選をドラマチックな結末で通過し、さらにはネーションズリーグでも確固たる成果を挙げてみせた。
EURO 2016で準決勝まで駆け抜けた際にはクリス・コールマン監督(当時)が最も重要な要素であった。コールマンよりはるかに経験で劣る監督の下で同レベルのパフォーマンスを披露できるかは未知数だ。
監督:ロブ・ペイジ
ワトフォードやシェフィールド・ユナイテッドでプレーしたディフェンダーは、監督としてのキャリアをポートベイルやノーサンプトン・タウンから出発した。だが、4年前にウェールズU-21代表の仕事を任されたときは、ほとんど無名の存在だった。
2019年にギグスのアシスタントに昇格してからよい評価を受けていた。元マンUウィンガーの出場停止を受け、暫定監督の候補に挙がるのも当然のことであった。つまり、今大会は彼自身の能力を証明する大チャンスなのだ。

スター選手:ギャレス・ベイル

イアン・ラッシュの記録を抜きウェールズ史上最高のゴールゲッターとなったベイル。常に代表チームを最優先に考えていることは、「ウェールズ、ゴルフ、マドリー。この順番だ」と書かれたあのフラッグが雄弁に語っている。
個人として壮大な才能を持つベイルだが、チームのためにハードワークを厭わない。EURO 2016での活躍でベイルは国の英雄になった。
最近は調子を取り戻しており、冷遇を受けたレアル・マドリーからトッテナムに期限付き移籍したことでフットボールに対する情熱を取り戻した。このことはファンにとって喜ばしいことだ。稀代のウインガーがポジティブな雰囲気でトーナメントに臨む。
基本予想スタメン
ヘネシー
–
メファム
ロドン
デイヴィス
–
C・ロバーツ
ラムジー
アンパドゥ
N・ウィリアムズ
–
ベイル
ジェームズ
ウィルソン
期待の若手:イーサン・アンパドゥ

チェルシーの神童は昨シーズン所属したRBライプツィヒでCLに出場。強烈な印象を残した。今シーズンはシェフィールド・ユナイテッドに所属。チームは降格の憂き目に遭ったが、出場時間を増やすことはできた。
センターバックとしてプレーすることができるアンパドゥだが、自身は中盤でのプレーを望んでいる。20歳にしてすでに代表チームでの立ち位置を確かなものにしているのだ。
これまで2度「NxGn」のリスト入りを果たしているアンパドゥ。ペイジによる3-4-3のフォーメーションでは特に重要なプレーヤーとなりそうだ。
日程
6月12日:vsスイス @バクー
6月16日:vsトルコ @バクー
6月20日:vsイタリア@ローマ
グループ B

ベルギー


ベルギー黄金世代にとってこれが最後のチャンスとなってしまうのだろうか?
EURO2016と2018年W杯では間違いなく最強チームを構成したが、それでも決勝にたどり着くことはできなかった。そして現状も気になるところだ。
ケヴィン・デ・ブライネは未だにこの惑星で最高のパサーだが、ディフェンス陣は歳を取りつつある。アクセル・ヴィツェルの調整が上手くいかなければ中盤の年齢層は若くなるが、エデン・アザールは2年前にレアル・マドリーに移籍してからずっと怪我しっぱなしだ。
最近2年間の結果はよいものではあったが、このチームに残された時間は多くない。
監督:ロベルト・マルティネス
スウォンジー、ウィガン、エヴァートンで指揮を執ったこともあるマルティネスだが、2016年マルク・ヴィルモッツからの交代の報は驚きだった。だが、前任と比べて大きくチームを進歩させたことは事実だ。
このスペイン人はチームのほとんどのスター選手と波長が合っている。カリスマ的な性格と攻撃的な戦術のおかげだろう。

スター選手:K・デ・ブライネ

シンプルにいうならば、彼の世代で最高のフットボーラーの一人だ。
デ・ブライネのゲームメーカーとしての能力は怪物じみている。稀に見る視野の広さとテクニックを持ち合わせることで、恐ろしいほど美しく、試合を決定づけるパスを出すことができるのだ。
マンチェスター・シティでの6年のうち5年間ペップ・グアルディオラの薫陶を受け、さらに万能性を増していっている。本大会の会期中に30歳の誕生日を迎えるデブライネは、代表チームでも最高の輝きを見せるに違いない。
基本予想スタメン
クルトワ
–
アルデルヴァイレルト
デナイヤー
フェルトンゲン
–
カスターニュ
ティーレマンス
デンドンケル
T・アザール
–
デ・ブライネ
E・アザール
–
ルカク
期待の若手:ジェレミー・ドク

スピードに長けたトリッキーなウインガーだ。10月にアンデルレヒトからレンヌに2600万ユーロ(約34億6000万円)で移籍したドクは、代表でのキャリアを華々しくスタートさせた。すでに2ゴールを挙げており、望まれていた運動量をチームに供給している。
NxGn 2021の14位に入賞したドクは、まだ19歳。大胆さと両サイドでプレーできる能力は、チームのローテーションを考えると非常に有効なオプションになるかもしれない。特に怪我がちなエデン・アザールが万全ではないとき、ドクの能力が活きるだろう。
日程
6月12日:vsロシア
@サンクトペテルブルク
6月17日:vsデンマーク
@コペンハーゲン
6月21日:vsフィンランド
@サンクトペテルブルク
デンマーク


負けなしでEURO 2020本戦進出を決めたデンマーク。ネーションズリーグでも非常によい印象を見せた。2022年W杯予選でもこれまで序盤の3試合で全勝。1つのゴールも許していない。
チームを率いるのは、ACミランのDFシモン・ケアーとトッテナムのセントラルMFピエール・エミール・ホイビュルク。二人ともクラブで素晴らしいシーズンを過ごしている。加えて、クリスティアン・エリクセンも最近インテルで復調傾向を見せている。
デンマーク代表は突如ダークホースになりつつあるようだ。チームは自信満々で本戦に臨む。
監督:カスパー・ヒュルマンド
ヒュルマンドの状況は独特だ。ベテランのノルウェー人監督オーゲ・ハレイデはデンマークを率いて本戦に臨むことになっていたが、2020年夏に契約満了。交代要員はずっと前から決まっていた。
ヒュルマンドはプロ選手としてのプレー経験はなく、監督としての経験はノアシェラン時代に培ったものだ。若手選手を積極的に起用し、2012年にリーグタイトルを獲得した。
冒険心が強い監督で、デンマークのサイドバックを非常に頻繁に攻撃に参加させている。

スター選手:C・エリクセン

トッテナム時代は世界最高峰のゲームメーカーと評され、セットプレーの名手でもあったエリクセン。だが、2020年1月のインテルへ移籍。当初はキャリアの選択を間違えたようにも見えた。
しかし、その後徐々に自分の立ち位置を確保していく。アントニオ・コンテのスターティングメンバーに入るようになっていったエリクセンは、歴史的なセリエAタイトル獲得に貢献するに至った。
これはデンマークのファンにとって朗報だ。皆のスーパースターが絶好調でEURO本戦に戻ってくるのを待っていたのだ。
29歳にして106の国際試合に出場しているエリクセンは、デンマーク歴代最多出場数を記録しそうだ。
基本予想スタメン
シュマイケル
–
ヴァス
ケアー
クリステンセン
メーレ
–
ホイビュルク
デラネイ
–
ポウルセン
エリクセン
ブライスワイト
–
ウインド
期待の若手:ヨナス・ウインド

デンマーク国内で未だに活躍するスタメン選手はウインドだけだが、その状態は長くは続かないだろう。
有名なGKを父に持つ22歳のウインドは、フィジカルに長けたフォワードだ。ポジショニング、パワー、両足での得点力を備え、FCコペンハーゲンで頭角を現した。
昨年10月に代表デビューを果たしてから3得点を挙げている。夏には大型移籍の可能性もある。
日程
6月12日:vsフィンランド
@コペンハーゲン
6月17日:vsベルギー
@コペンハーゲン
6月21日:vsロシア
@コペンハーゲン
フィンランド


フィンランドにとって初めての主要大会出場。ファンや専門家たちは未だに奇跡が起こったという扱いだ。
数十年に渡って成功を望み続けていたフィンランドは、予選でギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルメニアよりも上の順位で終え、国中に歓喜をもたらした。
2試合を近場のサンクトペテルブルクで行うことになっており、この状況下にも関わらずサポーターがチームを追って移動することになりそうだ。
下馬評は低いが、フィンランドの魂は誰にも負けないだろう。
監督:マルック・カネルヴァ
2016年、元教師がフィンランドの監督職に就き、EURO2020の本戦出場を目標にすると公言したとき、誰もが笑ったものだ。だが、皮肉げな笑みはとうにどこかに消えていった。
カネルヴァは監督候補の筆頭ではなかったが、U-21チームの監督やアシスタントコーチを10年以上務めていることから、最適な人材であった。彼はポジティブで、自信家で、自身の考えを分かりやすい方法で表現。シンプルなやり方が成功の秘訣なのだ。

スター選手:テーム・プッキ

ノリッジ・シティのレジェンドであるプッキは、驚くべきことにヤリ・リトマネンの持つ代表最多得点記録を抜きにかかっている。
カナリーズ(ノリッジの愛称)を2019年と2021年に昇格に導いたプッキは、EURO予選で10ゴールを挙げた。間違いなく予選突破に中心的な貢献を果たした選手だ。
3月に行われたW杯予選では3得点を挙げ、代表では90試合で30ゴールを挙げている。決してテクニックのある選手ではないが、あご髭を蓄えたターゲットマンは冷静なフィニッシャーだ。
しかし、イングランドではシーズン終盤にかかとの靭帯損傷に苦しんだ。トーナメントの前に自身の回復具合を証明するため、時間との闘いに追われることになる。
基本予想スタメン
フラデツキー
–
ライタラ
アラユーリ
トイヴィオ
ウロネン
–
ロド
スパルブ
カマラ
テイラー
–
プッキ
ポーヤンパロ
期待の若手:マルクス・フォルス

ブレントフォードに所属する21歳のストライカーにとって、大会の延期は幸運であった。成人したのがつい最近のことだからだ。
フォルスは昨年11月パリで行われたフランスとの親善試合で見事なゴールを決め、驚くべき2-0での勝利に貢献した。EURO本戦への帯同はほぼ決定とみられる。カネルヴァのプランAが上手く行かなかった時に起用しやすい選手となるだろう。
日程
6月12日:vsデンマーク
@コペンハーゲン
6月16日:vsロシア
@サンクトペテルブルク
6月21日:vsベルギー
@サンクトペテルブルク
ロシア


下馬評は著しく低かったものの、自国開催のW杯で準々決勝まで勝ち進み、代表チームは一躍ヒーローになった。
しかし時は過ぎ、ファンは再び徐々に現実を見るようになってきた。そして、悲しいことに、今のチームはそれほどの高いレベルを目指せないというのが現実だ。
簡単なグループだったため、EURO2020本戦出場はスムーズに確定することができ、情熱を保つことはできた。だが、最近の試合結果はかなり残念なものだ。たとえばネーションズリーグではセルビアに5-0で大敗し、2022年W杯予選ではスロバキアに敗れている。
監督:S・チェルチェソフ
現役時代はゴールキーパーであったチェルチェソフだが、W杯までは世界にほとんど知られていなかった。だが、下馬評を覆したことで自身のイメージをがらりと変えることに成功した。
それから3年が経ち、チェルチェソフは後退してしまった。奇妙なチーム編成をしたり、報道陣に向かって選手のことを公然と批判したりしているのだ。
蜜月時代は終わってしまった。チェルチェソフは今や、チームのスターたちと口論するのが大好きな無能監督と見られてしまっている。

スター選手:M・フェルナンデス

W杯後に代表を引退したGKイゴール・アキンフェエフと同様ブラジル出身のフェルナンデス。間違いなく、唯一チームに残ったワールドクラスの選手だ。
CSKAモスクワに在籍する攻撃的な右サイドバックは、才能に恵まれているだけではなく、疲れ知らずのスタミナを持っている。模範としてチームをリードし、自分のサイドをすべてカバーしている。
予選では8試合にフル出場。過去にはたくさんのトップクラブが接触していたようだが、30歳となった今となってはそれも過去のことのようだが、W杯で素晴らしいパフォーマンスを見せた後、また力量を見せることができる大会が待ち受けている。
基本予想スタメン
シュニン
–
フェルナンデス
ジキヤ
セミョーノフ
ジルコフ
–
ゾブニン
オズドエフ
–
クジャエフ
ゴロヴィン
A・ミランチュク
–
ジューバ
期待の若手:デニス・マカロフ

レオニド・スルツキ率いるルビン・カザンでフルシーズン活躍したマカロフがロシア代表に招集されたことは驚きではない。
23歳の右ウインガーは、2020-21シーズンに公式戦30試合に出場。9ゴールを挙げるなど、得点力も見せつけた。ウファ戦で見せたロングシュートやゴール・オブ・ザ・シーズンに選ばれたゼニト戦の得点などは彼の才能を証明している。
ロシア代表でも、彼の力がチームにとって大きな武器になる可能性は十分。スーパーサブとしても面白い存在になるだろう。
日程
6月12日:vsベルギー
@サンクトペテルブルク
6月16日:vsフィンランド
@サンクトペテルブルク
6月21日:vsデンマーク
@コペンハーゲン
グループ C

オーストリア


EURO 2016大会前、オーストリアは予選で印象的な活躍を見せたことでダークホースとみられていたが、実際は残念な結果に終わり、グループステージ未勝利のまま帰国の途に就いた。
今回は、誰もオーストリア代表のことを話していない。チームは5年前よりずっとよくなり、経験を積んでいるにも関わらずだ。
確かに勢いは衰えており、好不調の波が激しい。3月に行われたW杯予選のデンマーク戦では0-4と大敗したこともその表れだろう。
しかし、期待値が低いことが有利に働くこともある。比較的よいドローだったこともあり、この堅実で意欲的なチームは沢山の人を驚かせるかもしれない。
監督:フランコ・フォーダ
シュトゥルム・グラーツで選手としても監督としてもリーグ優勝を経験しているフォーダ。このドイツ人監督は、2017年に新監督が公募されたとき、かつてのスーパースターであるアンドレアス・ヘルツォークを破って就任し、少々物議をかもしていた。
プレッシャーと高いインテンシティを駆使した積極的でオフェンシブなサッカーで成功。その結果として弱点を露呈することもあるが、非常に面白いチームだ。

スター選手:ダヴィド・アラバ

オーストリア代表チームの中で唯一本物のスーパースター。万能なアラバは13年間所属したバイエルン・ミュンヘンを離れ、レアル・マドリーと5年契約を締結した。
左サイドバックとして、センターバックとして、ディフェンシブMFとして、そしてゲームメーカーとしても等しく素晴らしい能力を発揮。オーストリア代表では最近特に左ウィンガーとして起用される機会が増えている。
代表チームよりもクラブで活躍していることが批判されることもある。EURO 2016でのパフォーマンスは特に悪かったため、今回はその埋め合わせをする素晴らしいチャンスだ。
基本予想スタメン
A・シュラガー
–
ライナー
ドラゴヴィッチ
ヒンターエッガー
ウルマー
–
バウムガルトリンガー
X・シュラーガー
–
バウムガルトナー
ザビッツァー
アラバ
-
カライジッチ
期待の若手:C・バウムガルトナー

21歳のバウムガルトナーは昨年にフル代表デビューを果たしたばかりだが、非常に有望なパフォーマンスを披露している。
スピードとボールコントロールに加えて、優れたプレービジョンと強烈なシュートを兼ね備えるバウムガルトナーは、2列目ならどこでもこなすことができるユーティリティなアタッカーだ。
球際の強さにも特長があるホッフェンハイムの新鋭が今季ブンデスリーガ最高の中盤の一人とみなされたことは驚きではない。この大会でブレークする可能性も十分だ。
日程
6月13日:vs北マケドニア
@ブカレスト
6月17日:vsオランダ
@アムステルダム
6月21日:vsウクライナ
@ブカレスト
オランダ


ロナルド・クーマンは難しいタスクを課されていた。EURO 2016と2018年W杯で本戦に出られなかったオランダ代表チームの再生に取り組んだのだ。
だが、クーマンは多くの若手をチームに加え、素晴らしい仕事を果たした。オランイェ(オランダ代表の愛称)はネーションズリーグで決勝まで進出し、簡単にEURO2020本戦進出を決めた。自信にあふれ、ポジティブなプレーができていた。
昨夏に予定されていた本戦に向けて雰囲気は最高だったが、大会が延期され、クーマンはバルセロナの後任に。キャプテンであり屈強なDFフィルジル・ファン・ダイクは大ケガからの回復が間に合わず、今大会不参加が確定した。
昨年に比べて試合結果も不調であり、プロジェクト全体の様子も怪しくなっているのが現状だ。
監督:フランク・デ・ブール
元センターバックのスター選手であったデ・ブールはアヤックスの監督としてエールディビジを4連覇。だが、その後インテルとクリスタルパレスで悲惨な結末を迎え、短期で解任されたことで、名声にも自信にも大打撃を受けてしまった。
アトランタ・ユナイテッドでの冒険はあまり注目を浴びず、デ・ブールがクーマンの後任に決まった時も熱心なファンから歓迎されなかった。
その後も、就任後4試合連続で勝利できなかった初めての代表監督となってしまい、2022年W杯予選でもトルコに負け、黒星スタートを切っている。

スター選手:F・デ・ヨング

世界で最も優雅でエレガントなミッドフィルダー。2019年のCLでアヤックスが準決勝まで駆け抜け、この24歳は一躍スーパースターになった。
バルセロナに順応することは予想より難しかったが、最終的にデ・ヨングはクーマンの下でフリーロールプレーヤーとして躍動。EURO本大会にも絶好調で臨む。
自陣深くから攻撃を始めることができ、さらにドリブル、ラストパスもでき、自分で得点もできる。デ・ヨングはコンプリート・プレイヤーにかなり近い存在だ。代表チームになくてはならない存在であり、ほとんどのプレーは彼を経由して行われる。
基本予想スタメン
クルル
–
ダンフリース
デ・リフト
ブリント
ワインダル
–
クラーセン
ワイナルドゥム
デ・ヨング
–
ベルハイフ
デパイ
マレン
期待の若手:R・グラフェンベルフ

クラレンス・セードルフの有名な記録を破って、アヤックスで最年少リーグ出場を果たしたことは素晴らしい結果だった。それゆえ、19歳にしてフル代表に初招集されたのもさほど驚きではなかった。
万能なミッドフィルダーで、3度NxGnに名を連ねている(そのうち2度は10位以内に入った)。フィジカルの強さと卓越したボールコントロール、広いパスレンジ、そして非常に攻撃的なメンタリティを持ち合わせている。
大会中は交代出場で非常に危険な武器になるかもしれない。
日程
6月13日:vsウクライナ
@アムステルダム
6月17日:vsオーストリア
@アムステルダム
6月21日:vs北マケドニア
@アムステルダム
北マケドニア


北マケドニアはヨーロッパでもっともラッキーな国だと思っているはずだ。
普段通りであればEURO 2020本戦に出場することはできなかった。勝ち点14でグループ3位に終わったのだ。
だが、ネーションズリーグで小国が集まるリーグDからのルートを取ることで、不可能な夢を実現することができた。彼らはコソボとジョージアを倒せばよかったのだ。
国中の祝賀ムードの後、今度は3月に歴史を刻んだ。20年ぶりにW杯予選でドイツ代表を倒したチームになった。この驚くべき結果から、マケドニアのファンは今年の夏にはもっと幸運なことが起こるかもしれないと信じてやまない。
監督:イゴール・アンゲロフスキ
自国以外でのプレー経験や監督経験はなく、知名度は非常に低い。2015年後半にこのポジションに就いたときの結果は芳しくなかったが、サッカー協会の忍耐が報われる結果となった。政権を安定させたことで、奇跡的な形で報われたのだった。
面白いことに、この44歳は選手時代にゴラン・パンデフが目標の存在だったと語っていた。そして現在は、監督としてパンデフとチームを共にするという幸運に恵まれている。

スター選手:ゴラン・パンデフ

マケドニアのレジェンド。史上最高のマケドニア人プレーヤーであり、彼の本戦出場はEURO予選を通じて最も心温まるストーリーだった。
近年はほとんど中盤でプレーしている万能ストライカーは、2001年にイタリアに活躍の場を移すと、そこから20年間第一線で活躍を続け、2010年にはインテルでCL優勝を経験し、ラツィオとナポリでも素晴らしいシーズンを送ってきた。そして今年、ついにセリエA100ゴールを達成している。
37歳になった大ベテランだが、自身はEURO 2020本戦に参加するため引退を延期。プレーオフのジョージア戦で勝ち越しゴールを挙げ歓喜の涙を流した。
基本予想スタメン
ディミトゥリエフスキ
–
ニコロフ
リストフスキ
ベルコフスキ
ムスリウ
アリオスキ
–
アデミ
バルディ
エルマス
パンデフ
–
トライコフスキ
期待の若手:エリフ・エルマス

ドイツ戦で決勝ゴールを決めたことで、この21歳はすでに北マケドニアの歴史書に名前が載るレベルの偉業を達成した。だが、パンデフの後継者と期待されるこの男には、今以上の功績が期待されている。
アンゲロフスキは彼のことを誰よりも知っている。2015年、エルマスをマケドニアリーグ最年少出場選手にしたのは、ラボトニツキ時代のアンゲロフスキなのだ。
2年前にフェネルバフチェからナポリに移籍したエルマスは、強烈な交代選手として起用されている。一方、代表では揺るぎないスターティングメンバーであり、試合はほとんどすべて彼を通じて組み立てられる。
日程
6月13日:vsオーストリア
@ブカレスト
6月17日:vsウクライナ
@ブカレスト
6月21日:vsオランダ
@アムステルダム
ウクライナ


ウクライナはEURO 2016で勝ち点を得ることができず、得点すら奪うことができなかった。2018年W杯にも出場が叶わなかった。そういった背景から、予選を首尾よく通過できたことでチームの熱は上がっている。
2019年6月にセルビアに5-0で勝利した一戦はソ連崩壊以降の代表ベストゲームのひとつに数えられる。代表チームは内戦で分かたれた国をなんとか一つに纏めあげてきた。
ネーションズリーグと2022年W杯予選の結果の一部は残念なものだったが、ポジティブな雰囲気はまだ感じられる。ウクライナは自信に満ちた雰囲気で本戦に臨む。
監督:アンドリー・シェフチェンコ
間違いなく史上最高のウクライナ人選手だ。だが、フル代表の監督になることは期待されていなかった。
2016年に就任したときは疑念を持って迎えられた。その後のW杯予選の失態で解任を期待する声が多かったが、シェフチェンコは自身に疑いの目を向けるのは間違いであると証明した。
元ACミランのスーパースターはエキサイティングなチームを作り上げてきた。守備陣は見事に組織されていたが、同時に攻撃的なマインドを兼ね備えていた。もちろん、シェフチェンコ自身はベンチで指揮を執っていても大スターだが、それがかえって選手たちにかかるプレッシャーを和らげている。
シェバ(シェフチェンコの愛称)はEURO 2012でストライカーとして活躍したことで引退を延期した過去がある。今度は監督として歴史を作る時だ。

スター選手:O・ジンチェンコ

2016年、初めてペップ・グアルディオラが契約した選手の一人としてマンチェスター・シティにジンチェンコが加入したとき、元リヴァプールのストライカーであるアンドレイ・ヴォロニンは彼を指して「リヴァプールではプレイステーションの中でしかチャンスを貰えないかもしれないね」と語ったことがあった。
ヴォロニンの予想は間違っていた。あまり筋肉質ではないこのMFは規律に準じて動ける左サイドバックに変貌。チームのローテーションにおいて重要な役割を担うようになり、今シーズンのCL決勝進出によって重要な存在であることを証明した。
代表チームにおいては、元々のポジションであるセントラルMFでプレーしている。そして徐々にチームリーダーになりつつある。ウクライナの試合はジンチェンコを通じて組み立てられる。
基本予想スタメン
ブスチャン
–
カラヴァエフ
ザバルニー
マトヴィエンコ
ソボル
–
マカレンコ
ジンチェンコ
マリノフスキー
–
ヤルモレンコ
ヤレムチュク
ツィガンコフ
期待の若手:イリヤ・ザバルニー

怪我人が相次いだディナモ・キエフのトップチームで昨年9月に昇格したばかりの18歳。クラブアカデミー出身のザバルニーはミルチェア・ルチェスクの指導で急成長を遂げた。
デビューシーズンでリーグ優勝を経験。長身で、規律を守り、技術面でも恵まれたセンターバックは、EURO 2020の先発メンバーに選ばれる可能性もある。
日程
6月13日:vsオランダ
@アムステルダム
6月17日:vs北マケドニア
@ブカレスト
6月21日:vsオーストリア
@ブカレスト
グループ D

クロアチア


2018年ワールドカップで準優勝を果たしたクロアチアだったが、その後の3年間は必ずしも順調ではなかった。
ロシアで歴史的快挙を成し遂げた代表チームを引退したGKダニエル・スバシッチとスター・ストライカーのマリオ・マンジュキッチの代わりの選手を見つかることができないでいるのである。
ネーションズリーグの結果も大いに失望させるものであり、EUROの予選でもハンガリーに負けアゼルバイジャンと引き分けるという残念な結果で、2022年ワールドカップの予選も初戦でスロベニアに惨敗した。
中盤には才能ある選手たちがいることは変わりないが、センセーショナルな快挙を成し遂げたチームが急降下中であるというのが一般的な見方である。
監督:ズラトコ・ダリッチ
ワールドカップ前は無名で、クロアチアサッカー連盟に政治的な意味あいで任命されたというのが大方の見方だったダリッチ監督は、2018年、突然国民の熱狂の的となった。
この時の成功により、過去3年、他の監督だったらクビになっていただろうと思われるような散々な結果を残しながら、辞任が取り沙汰されることはほとんどなかった。
2017年に監督に就任するまでは中東でしか監督をしたことがなく、時に戦術面で甘さを見せることがあるのが懸念だ。

スター選手:ルカ・モドリッチ

レアル・マドリーのマエストロは9月に36歳になるが、最近契約を更新し、依然としてサッカー界最高の選手の一人であり続けている。
モドリッチは過去2シーズン、短期の不調を脱してからはラ・リーガで素晴らしい活躍をしており、フィジカル面ではむしろ強くなっているように思われる。
代表キャプテンとしての重要性は、とりわけイヴァン・ラキティッチが引退を選んだため増しており、クロアチアの成功は2018年にバロンドールを獲得した男に大いにかかっている。
基本予想スタメン
リヴァコヴィッチ
–
ヴルサリコ
ロヴレン
ヴィダ
バリシッチ
–
ブロゾヴィッチ
モドリッチ
コヴァチッチ
–
ブレカロ
クラマリッチ
ペリシッチ
期待の若手:J・グヴァルディオール

壮大な名前を持つこの19歳は、アンダー世代から長く将来が嘱望されてきたヤングスターだ。
2021年のNxGnでも19位にランクインしたグヴァルディオールは天井知らずのポテンシャルを秘めるDFで、センターバックと左サイドバックでプレーすることが可能。戦術的インテリジェンスとスピード、素晴らしいボールスキルを有している。
ディナモ・ザグレブからRBライプツィヒへのステップアップも決定済みの男は今大会、今後のさらなる飛躍を予感させるようなパフォーマンスを見せるかもしれない。
日程
6月13日:vsイングランド
@ロンドン
6月18日:vsチェコ
@グラスゴー
6月22日vsスコットランド
@グラスゴー
チェコ


パベル・ネドベドとトマーシュ・ロシツキーの時代は遠く過ぎ去った。チェコは過去3回のW杯に出場できず、2016年のEUROでは惨敗した。今回も楽観的な要素を探すのは慎重を要する。
トマーシュ・ソーチェクの台頭は心強く、アダム・フロジェクの将来性にもワクワクするが、チーム全体として真に才能ある選手が足りないのだ。
直近のW杯予選でウェールズに敗戦。コロナ禍で確かなことを見つけるのは難しいが、グループステージ突破は困難が予想される。
監督:ヤロスラフ・シルハヴィー
今世紀初め、のちに伝説となるカレル・ブリュックナーのアシスタントとして、チェコの大いなる成功の一翼を担ったのが現在のヤロスラフ・シルハヴィー監督である。
シルハヴィー監督は実力でトップリーグのチームの監督となり、2012年にFCスロヴァン・リベレツで、2017年にはSKスラヴィア・プラハでリーグ優勝を果たすと、2018年、カレル・ヤロリームに代わって、チェコ代表の監督に文句なく選ばれた。
これまでの監督としてのキャリアとしてのハイライトのひとつは、EURO2020の予選でイングランドを破ったことである。

スター選手:T・ソウチェク

今季のプレミアリーグで大きなインパクトを与えた長身MF。デイヴィッド・モイーズ率いるウェスト・ハムの躍進において非常に重要な存在となった。
疲れ知らずの運動量を誇るランナーは特に、セットプレーでの空中戦においてチームにとっての大きな武器となる。
2019年と2020年にはチェコの年間最優秀選手賞も受賞。6-2で勝利した3月のエストニア代表戦ではチェコ代表として初のハットトリックを記録し、真のスターへと成長している。
基本予想スタメン
ヴァツリーク
–
ツォウファル
カラス
チェルーストカ
ホレシュ
–
クラール
ソーチェク
–
マソプスト
ダリダ
ヤンクト
–
シック
期待の若手:アダム・フロジェク

18歳ながらACスパルタ・プラハでセンセーショナルを巻き起こしているフロジェクは、チェコの大いなる希望であり、このティーンエージャーが偉大な先輩たちに追いつくチャンスはあるだろう。
ペナルティエリア内での嗅覚に優れ、左右どちらのウイングでもプレーできる。天性のスピードとテクニックがあり、身長も非常に高い。NXGN 2021に新たに加わったフロジェクは、はっきり言ってすべてをもっている。
中足の骨折でシーズンのほとんどを棒にふったが、それでもチェコのトップリーグで2桁の得点を記録。はたしてシルハヴィー監督には、これまで代表として2試合しか出場していない選手に命運をかける勇気があるだろうか?
日程
6月14日:vsスコットランド
@グラスゴー
6月18日:vsクロアチア
@グラスゴー
6月22日:vsイングランド
@ロンドン
イングランド


良くも悪くもイングランドはあらゆる主要大会で優勝候補であり、そのせいでどんな試合ぶりになるか、ファンはピリピリしていることだろう。
しかしながら、今回ばかりは「スリー・ライオンズ」にチャンスがあると真剣に信じてよさそうだ。
ガレス・サウスゲート監督が多くのポジションで自由に配置できる才能ある選手が豊富にそろっており、ハリー・ケインというワールドクラスのストライカーがいる。中盤やウイングにも創造性あふれる若手を大勢有しており、デクラン・ライスという将来性豊かなホールディング・ミッドフィルダー(アンカー)の他、フルバックのオプションも豊富だ。
2018年のワールドカップで準決勝に進出したことも明るい材料であり、そこから一歩前進することが期待される。
監督:ガレス・サウスゲート
サウスゲート監督は2016年9月、悪名高きサム・アラダイス前監督の更迭後、ほとんど偶然といっていい経緯でイングランド代表監督となったが、ほどなくして暫定ではなく正式な監督になるべき人物であることが判明した。
サウスゲート監督は戦術よりも精神面の強化の方がより重要であることを理解しており、大きな問題なく世代交代を成し遂げようとしている。
彼が率いるイングランドは2018年のワールドカップでサポーターから愛されるようになったが、今のチームは当時よりも強く、より高みを目指している。
1996年のEUROの準決勝でドイツに運命のPK戦で敗れた男は、25年後の今年、リベンジを果たすだろうか?

スター選手:ハリー・ケイン

イングランド代表におけるケインの重要性はどれほど評価してもしすぎることはないだろう。キャプテンであり、比較的若手の多いチームにおいて最も経験豊かな選手の一人にして、最も危険なストライカーである。
トッテナム所属のケインはマルチな才能の持ち主で、どんなポジションからも得点することができる。昨シーズンはその才能に、司令塔としてのスキルも加わった。
2016年のEUROでは不調で笑いものになってしまったケインだが、ワールドカップでは得点王となっており、今回は前回とは違う意味でニュースとなるだろう。
基本予想スタメン
ピックフォード
–
ジェームズ
ストーンズ
マグワイア
チルウェル
–
ベリンガム
ライス
マウント
–
サンチョ
ケイン
フォーデン
期待の若手:ジュード・ベリンガム

NXGN 2021で5位だったベリンガムは、ボルシア・ドルトムントでの最初のシーズンで、驚くべき進化を遂げた。
特に印象的だったのは、チームとしては不運にもマンチェスター・シティに負けて敗退したCL準々決勝で、不当にも取り消されたゴールとセカンドレグの先制点となったゴールである。
イングランド代表としては3番目の若さでデビューしたベリンガムは、スターダムを駆けあがろうとしており、この夏、17歳でスターティング・メンバーに選ばれてもおかしくない。
日程
6月13日:vsクロアチア
@ロンドン
6月18日:vsスコットランド
@ロンドン
6月22日:vsチェコ
@ロンドン
スコットランド


1998年以来の主要大会出場に、スコットランド全土は湧きたっている。
チームの選手層は極めて薄く、予選の戦いは苦戦を強いられた。本大会出場を決めたのは予選プレーオフでイスラエルとセルビアの2カ国にPK戦で勝ったおかげである。だが、今となってはそんなことは大したことではない。
最も重要なのは、スコットランドが欧州選手権に出場するということであり、ホームのグラスゴーで2試合を戦うことである。
2022年ワールドカップの予選は2分け1勝スタートと満足できるものではなく、これ以上の失望を避けるべく、進化する必要がある。
監督:スティーブ・クラーク
選手としてはチェルシーのレジェンド。指導者としてのキャリアは、ジョゼ・モウリーニョとケニー・ダルグリッシュのアシスタントとして始まった。
2019年5月、前任のアレックス・マクリーシュがカザフスタン戦で0-3と惨敗した後、スコットランドの監督に就任したクラーク監督は、最も重要な試合の前に選手たちのモチベーションを上げるのが得意な指揮官だ。
センターバックに3人の選手を配置することを好み、ウイングバックにできるかぎり頻繁に攻撃参加を要求している。

スター選手:A ・ロバートソン

スコットランド代表が強いとき、そこには必ずリヴァプールのスターがいる。現在のキャプテンがまさにそうだ。
クイーンズ・パーク在籍時は無名だったが、アンフィールドではCLとプレミアリーグで優勝を果たし、チームを鼓舞することのできるロバートソンは、スコットランド代表のキャプテンとしても尊敬されている。
クロスボールの精度が高く、アシストを量産することが可能。スコットランド代表ではウイングとしてより自由な役割を謳歌している。だが、リヴァプールの大半のチームメイト同様、2020-21シーズンは必ずしもベストの状態ではなかった。EUROで再び名を上げることができるか。
基本予想スタメン
マーシャル
–
ヘンドリー
ハンリー
ティアニー
–
オドネル
マクトミネイ
マクレガー
ロバートソン
–
マッギン
フレイザー
–
ダイクス
期待の若手:ビリー・ギルモア

スコットランド代表の数少ない若手有望株がギルモアだ。
チェルシーアカデミーで常に高く評価されてきた19歳は、2020年のNxGnにもランクイン。これまでに幾度か、スタンフォード・ブリッジでも光るプレーを見せてきた。
今季の公式戦出場は11試合にとどまったが、中盤の底からのパスワークや創造性、そのポテンシャルの高さは確実。スコットランドでも流れを変えるようなプレーを見せる可能性がある。
日程
6月14日:vsチェコ
@グラスゴー
6月18日:vsイングランド
@ロンドン
6月22日:vsクロアチア
@グラスゴー
グループ E

ポーランド


世界一のストライカーを擁するポーランドは2018年W杯のダークホースとみなされていたが、グループステージで敗退し、国民は再び高い期待をかけることに躊躇している。
今回のEUROには与しやすいグループから順調に勝ち上がって出場を決めたが、イェジー・ブジェンチェク前監督はロベルト・レヴァンドフスキと相互理解を構築することができず、結局、ネーションズリーグでいくつか残念な結果を残した後、2021年1月に解任となった。
現在の最大の懸念は、チームがスーパースターをサポートできるかどうかということである。
監督:パウロ・ソウザ
ブジェンチェク前監督の解任は大きな驚きではなかったものの、代わりが誰になるかは予想がつかなかった。
ポルトガルの元スターであるソウザは素晴らしいミッドフィルダーではあったが、ハンガリー、イスラエル、スイス、イタリア、中国、フランスと続く監督としてのキャリアは、レオ・ベーンハッカーに次いでポーランドでは2人目となる外国籍監督にふさわしいとは言い難かった。
これは非常に興味深い賭けである。センターバックに3人を配置する戦術は、レヴァンドフスキにできるだけ機嫌よく快適にプレーさせることを優先するためのものである。

スター選手:R ・レヴァンドフスキ

ポーランド代表として歴代最多の出場を誇り、最多得点を記録しているバイエルン・ミュンヘンのストライカー、レヴァンドフスキは32歳になっても進化を続けている。
所属チームが歴史的3冠を達成した2020年、バロンドールが開催されていれば受賞していただろうし、今シーズンはさらに調子を上げていると言ってよく、ゲルト・ミュラーのブンデスリーガ1シーズン最多得点記録も更新した。
しかしながら、これまでポーランドを世界最高の舞台に導くことはできておらず、2016年のEUROでも2018年のW杯でも、そのプレーぶりは控えめに言ってつまらないものだった。この夏がポーランドにとって真に素晴らしい夏になるかどうかは、レヴァンドフスキにかかっている。
基本予想スタメン
シュチェスニー
–
ベレシニスキ
ヘリク
グリク
ベドナレク
リブス
–
クリホヴィアク
モダー
ジエリンスキ
–
レヴァンドフスキ
シヴィエルチョク
期待の若手:K・コズラウスキ

ポゴニ・シュチェチンの司令塔をつとめる輝かしき17歳のコズラウスキは、3月のW杯予選で代表デビューを果たして大いに驚かれたが、彼の能力がそれに値するものであることは間違いない。
15歳でトップチームデビューを果たして以来、その創造性、パスレンジの広さ、鋭いミドルシュートを売りとしており、数多くのトップクラブのスカウトから注目されている。
ソウザ監督がベンチ入りさせるオプションとして彼を大会に連れていくのは、当然としか言いようがない。
日程
6月14日:vsスロバキア
@サンクト・ペテルブルク
6月19日:vsスペイン
@セビリア
6月23日:vsスウェーデン
@サンクト・ペテルブルク
スロバキア


10月、スロバキアは予選プレーオフの最中にパヴェル・ハパル監督を解任するという尋常ではない賭けに出たが、北アイルランドに劇的な勝利を果たし、EUROへの出場を決めた。
チームのポテンシャルは相当なものがあるように見えるが、コンスタントに結果が出せないでいる。W杯予選の始まりは、キプロスとマルタ相手に無様な引き分けとなり、続くロシアで何とか勇気ある勝ちを収めた。
2016年のEUROではベスト16入りして大いにニュースとなったが、今回はあまり期待を集めていない。だが、そのことがかえって良い方向に働く可能性もあるだろう。
監督:シュテファン・タルコヴィチ
2018年にスロバキア指揮官を辞任したヤーン・コザックは、後任にアシスタント・コーチだったタルコヴィチを任命することに強くこだわった。
しかしながらスロバキアのサッカー連盟は別の決定を下し、ハパルを監督に任命してタルコヴィチはテクニカル・ディレクターとなった。だが1年後、ドラマのような展開でタルコヴィチが監督に就任することになる。
48歳のタルコヴィチ監督は、自身の最も重要な仕事について、更衣室に一体感や連帯感を取り戻すことであると言っている。それをやり遂げられるかどうかは今後を見る必要があるだろう。

スター選手:マレク・ハムシク

スロバキアで歴代最多の代表選出を誇り、歴代最多の得点を挙げているハムシクは、すでに母国のレジェンドである。
2019年、12年在籍し最も愛される選手の一人となったナポリを去り、中国のクラブに移籍した。しかしながら今年初め、33歳のハムシクはEUROでプレーするためにヨーロッパに戻ってヨーテボリと契約。ハムシクが中盤で攻撃を牽引しないスロバキアなど、想像もできない。
基本予想スタメン
ドゥブラフカ
–
ペカリーク
ヴァヴロ
シュクリニアル
ハンツコ
–
フロショフスキー
クツカ
ハムシク
–
ドゥダ
ボジェニーク
ルスナーク
期待の若手:トマーシュ・スソロヴ

マルチな才能を誇る左足のストライカーは、右ウイングでプレーすることを好むが、今シーズン、フローニンゲンでほろ苦いデビューを果たした。古巣のクラブに戻ってきたオランダのレジェンド、アリエン・ロッベンの負傷により、代わりにピッチに立ったのである。
エールディビジでの最初のシーズンは将来を期待させるものであり、10代のスソロヴは昨年11月にスロバキア代表デビューを果たしている。
18歳のワンダーボーイ、スソロヴは素早くマークを外し、ボールを持った際にも素晴らしいスピードを見せる。中央にカットインするプレーも持ち味だ。
日程
6月14日:vsポーランド
@サンクト・ペテルブルク
6月18日:vsスウェーデン
@サンクト・ペテルブルク
6月23日:vsスペイン
@セビリア
スペイン


2018年のW杯以降、スペイン代表の成績は必ずしも安定していないが、これはひとえにチームに才能ある選手が多すぎて、ルイス・エンリケ監督がスターティングイレブンを固定できないからである。
ピッチのどこのポジションでもプレーできるトップレベルの選手たちが多く、先発メンバーが頻繁に変わるため、大会にあたってどんな戦術が最高なのかを予言することすら難しい。セルヒオ・ラモスの不参加で不安が高まった一方、代表入りを果たしたアイメリク・ラポルトへの期待感が高まる。
スペインが優勝候補なのは間違いないが、優勝するには11月にドイツを6対0で粉砕したときのようなプレーが必要であり、その1カ月前にウクライナに1対0で負けたときのようであってはならない。
監督:ルイス・エンリケ
歴代のスペイン代表監督と違い、ルイス・エンリケ監督はスペイン中で人気者である。
現在51歳のルイス・エンリケ監督は2015年、バルセロナを率いた最初のシーズンで歴史に残る3冠を達成し、W杯で大敗した代表を引き継いだ。チームに招集する選手や先発メンバーを目まぐるしく変えながらも、おおむね全員を満足させる結果を出してきている。
1996年のEURO準々決勝でイングランドに負けたスペイン代表のひとりであるが、今回再び、ウェンブリーにたどりつくことが期待されている。

スター選手:チアゴ・アルカンタラ

彼の世代で最高のテクニシャンとみなされてきたチアゴが30歳となって41キャップというのは意外な数字かもしれない。
チアゴは2011年と2013年のアンダー年代のEURO制覇チームで絶対的な存在となったが、フル代表では多くの実績を残したわけではない。
リヴァプールへの挑戦のシーズンをまずまずの形で終えたチアゴは、父マジ―ニョがブラジル代表としてワールドカップを制覇してから27年後となる今大会で、欧州最高の栄誉を手にしたいと考えているだろう。
基本予想スタメン
シモン
–
M・ジョレンテ
ラポルト
パウ・トーレス
J・アルバ
–
ロドリ
チアゴ
ペドリ
–
F・トーレス
モレーノ
オルモ
期待の若手:ペドリ

卓越した司令塔ぶりがアンドレス・イニエスタと比較されるペドリは、スペイン2部のラス・パルマスからバルセロナに加入して早々にセンセーショナルを巻き起こした。
18歳にしてNxGn 2021で4位となったペドリは、ロナルド・クーマン監督のもとで先発メンバーの座を確たるものにし、リオネル・メッシと同じ波長でコンスタントにプレーしている。同世代で最も優れた選手の一人となり得るだろう。
日程
6月14日:vsスウェーデン
@セビリア
6月19日:vsポーランド
@セビリア
6月23日:vsスロバキア
@セビリア
スウェーデン


3月、ズラタン・イブラヒモビッチの突然の復帰で、スウェーデンの本大会への準備は一変した。だがその後、5月に再びケガで大会への参加は不可能になった。
ヤンネ・アンデション監督は、伝説のストライカーなしでバランスの取れたチームを構築。スウェーデン代表は2018年のW杯で準々決勝に進出して、ここ最近では最高の結果のひとつを達成した。
ACミランのカリスマが再び離脱することとなったが、いずれにせよチームは彼なしでやっていることをしっかり証明したいと思っているだろう。
監督:ヤンネ・アンデション
58歳のアンデション監督はプロとしてサッカーをプレーしたことはなく、監督としてもゆっくりと確実に実績を積んできた。
2015年に最高のタイミングで、ノルシェーピンでスウェーデンのリーグ優勝を果たし、その結果、2016年のEUROが終わった後、エリック・ハムレンの後を継いで代表監督となった。
アンデション監督が最も優れているところは、若い選手を育て、選手たちの総合力以上にチームの能力を高めることができる点にある。

スター選手:エミル・フォルスベリ

フォルスベリが2015年、当時所属していたマルメからドイツ2部のRBライプツィヒへ移籍したとき、スウェーデンでは多くの人が驚いたが、今となっては素晴らしい決心であったことが明確に証明されている。フォルスベリはRBライプツィヒがブンデスリーガに昇格するのに大いに貢献したのであった。
祖父で元サッカー選手のレナートが昨年9月に92歳で亡くなった後、エミルは往年の祖父を彷彿とさせる活躍で、非常に自信に満ちたシーズンを謳歌した。
代表では速攻の要であり、2018年W杯のベスト16でのスイス戦では決勝点を挙げて、母国で記憶に残る選手となった。
基本予想スタメン
オルセン
–
ルスティグ
リンデロフ
ヘランデル
アウグスティンション
–
クラーソン
K・オルソン
ラーション
フォルスベリ
–
クルゼフスキ
イサク
期待の若手:デヤン・クルゼフスキ

代表に戻る前、イブラヒモビッチはクルゼフスキを招集しないことが多いアンデション監督をたびたび批判していた。
21歳のストライカーに、右ウイングでもセカンドトップとしてでも、明るい将来があることは間違いない。
ユヴェントスは2020年1月、アタランタに3500万ユーロを払ってクルゼフスキを獲得したが、トリノでの最初のシーズンは好スタートを切ったものの、2021年に入って次第に調子を落とした。
スウェーデン代表にはクルゼフスキの復調が必要である。クルゼフスキはチームに、パワー、スピード、テクニカルなスキル、決定力をもたらすことができる。
日程
6月14日:vsスペイン
@セビリア
6月18日:vsスロバキア
@サンクト・ペテルブルク
6月23日:vsポーランド
@サンクト・ペテルブルク
グループ F

フランス


世界チャンピオンであるフランスは、2018年にルジニキ・スタジアムでW杯を掲げて以来、素晴らしい安定感を見せてきた。
ディディエ・デシャン政権になってから守備を重視するのが通例となり、その能力に比べて必ずしも見ていて楽しいフットボールをしているわけではない。しかしながら、その力は驚くべきものであり、チームにはすべてのポジションで恐ろしいほど人材が豊富だ。
アントワーヌ・グリーズマンがバルセロナで復調しつつあるのはまさにグッドタイミングであり、カリム・ベンゼマもついに復帰を果たした。
フランスは2016年のEUROで開催国ながら決勝で敗れたが、今回は間違いなくより強い優勝候補の一角である。
監督:ディディエ・デシャン
1998年にキャプテンとしてW杯制覇を果たしたデシャン監督は、EUROでも2000年に優勝を遂げている。
その後、2018年に監督としてW杯を制覇しており、今回も勝てば4度目の優勝となる。まったく信じられない、あるいはほとんど想像できないような偉業を成し遂げようとしているのだ。
その戦術は、時に少し慎重にすぎることがあり、スター揃いのフランスはもっとエキサイティングなプレーができるはずだと思われている。しかしながら、現時点でフットボール史上最高のチームの一つに疑問を呈するのもおかしな話だろう。

スター選手: ヌゴロ・カンテ

2016年にレスター・シティがリーグ優勝を果たした時の中心選手だったカンテ。チェルシーに加入してからのシーズンは特に華々しい。
CL準決勝のレアル・マドリー戦でのパフォーマンスのみならず、決勝でも圧巻の存在感を発揮し、ビッグイヤー制覇の立役者に。その稀に見る才能を見せつけた。
デシャンの戦術の下、カンテは今回の大会に関しても、中盤の相棒であるポール・ポグバよりもはるかに重要な存在になり得るだろう。
基本予想スタメン
ロリス
–
パヴァール
ヴァラン
キンペンベ
リュカ・エルナンデス
–
カンテ
ポグバ
–
コマン
グリーズマン
ムバッペ
–
ベンゼマ
期待の若手:キリアン・ムバッペ

この男をこの枠に入れるのはもう失礼かもしれない。W杯でベストヤングプレーヤー賞を受賞したムバッペは、3年後の今、俊足の22歳としてスーパースターの座を確立している。
誰にも止められないスビートと的確な決断力をもち、得点の機会を決して逃さないパリ・サンジェルマンの選手として、サッカー界で最も見ていて楽しい選手の一人となっている。
将来はバロンドールを獲得するとみなされているが、フランスに新たな優勝トロフィーをもたらせば、今年そうなる可能性さえあるだろう。
日程
6月15日:vsドイツ
@ミュンヘン
6月19日:vsハンガリー
@ブダペスト
6月23日:vsポルトガル
@ブダペスト
ドイツ


EURO2020は、3月に15年務めた監督の座を退くことが発表されたヨアヒム・レーヴのお別れパーティーとなるだろう。EUROの後にはハンジ・フリックが指揮官に就任する。
2014年のW杯で優勝を果たしたレーヴ監督は今大会後に勇退するわけだが、そのことが発表された後、チームのパフォーマンスや方向性に関する雰囲気が大きく変わった。
ドイツは、2018年のW杯やネーションズリーグで散々なパフォーマンスをしたことで、ずっと暗い雰囲気が漂っていた。スペインに6対0という記録的な大敗を喫したこともあった。
プランに従って世代交代が行われこともなく、トーマス・ミュラー、マッツ・フンメルス、ジェローム・ボアテングを軸とした華々しさとは正反対のレーヴ監督の戦略に対し、論争さえ起きたのだ。
容赦ない批判もあったが、それでも今や風向きが変わり、全員が同じ方向を向いているドイツがどこまで進むか注目だ。
監督:ヨアヒム・レーヴ
61歳のレーヴ監督は、フットボール史上最高の代表監督の一人として記憶されることだろう。
3位入りした2006年のW杯では、ユルゲン・クリンスマン元ドイツ代表監督のアシスタントとして、舞台裏で歴史的変革の一翼を担った。その後、15年にわたって代表監督を務め、2008年のEUROで決勝進出を果たし、W杯でも2010年に準決勝進出。2014年には優勝を果たしている。
もっと早く監督を辞するべきだったが、この夏に優勝を果たせば、これまでの困難な年月は結局のところ忘れ去られることだろう。

スター選手:マヌエル・ノイアー

ドイツ代表での試合数がまもなく100キャップとなる35歳のゴールキーパーは、ドイツ代表のキャプテンであり、リーダーである。
正真正銘のレジェンドは、見事な足技と守備範囲の広さ、ゴールライン際での驚くべきレスポンスをそのキャリアで披露してきた。
さまざまなケガを乗り越えて復調した後、2020年にはバイエルンの歴史的3冠に貢献。大会後には代表を引退すると言われている名手のプレーを存分に楽しみたい。
基本予想スタメン
ノイアー
–
クロスターマン
フンメルス
リュディガー
ゴセンス
–
クロース
キミッヒ
ゴレツカ
–
サネ
ミュラー
ニャブリ
期待の若手:ジャマル・ムシアラ

2020年6月、ムシアラは3部リーグのバイエルン・ミュンヘンのリザーブチームでデビューを果たした。そして1年後の2021年6月、EUROでスターになるかもしれない大器だ。彗星のごとく現れた18歳は、あっという間にこの世代最高の選手の一人となった。
MFとして、とりわけ狭いスペースでのプレーがうまく、その若さにもかかわらず決断力に優れている。
ドイツ生まれチェルシーアカデミー育ちの若者は、イングランドのユース代表であったが、その後にレーヴ監督とバイエルンのフリック監督の説得により、ドイツ代表に変更している。
日程
6月15日:vsフランス
@ミュンヘン
6月19日:vsポルトガル
@ミュンヘン
6月23日:vsハンガリー
@ミュンヘン
ハンガリー


ハンガリーはプレーオフに勝って本大会出場を勝ち取った。アイスランド相手に90分の試合終了直前に2ゴールを挙げ、敗色濃厚だった試合をひっくり返したのである。本大会では2試合がブダペストで開催されることになっており、ファンは興奮していることだろう。
同組となったポルトガル、フランス、ドイツを相手に、ハンガリーは失うものなど何もない状況。そうしたプレッシャーのない立場であるからこそ、2016年のEUROでベスト16入りを果たしたのである。だが残念ながら、その後の5年間で大きな進歩は見られず、2匹目のドジョウを狙うのは難しいかもしれない。
監督:マルコ・ロッシ
選手としてミルチェア・ルチェスク元監督とスヴェン・ゴラン・エリクソン元監督のもとで学んできたロッシが、今や良き監督になったことは驚くべきことではない。
ブダペスト・ホンヴェードで監督を務め、2017年にリーグ優勝を果たしたロッシは、外国籍ながらハンガリーのサッカーを熟知している。
どちらかというと保守的で用心深いフットボールは、つねに優勝候補にあがることのないハンガリーにはピッタリである。いずれにせよ、才能あるストライカーがいないのだから。

スター選手:ピーター・グラクシ

グラクシは2008-09シーズンにヘレフォード・ユナイテッドでプロ選手としてのキャリアを開始し、その後リヴァプールへレンタル移籍したが、大きな成功を成し遂げることはできなかった。
しかしながら、その後はずっとレッドブル関係のクラブでプレーしている。ザルツブルクから始まって、その後の6シーズン、RBライプツィヒに所属しているのだ。
ブンデスリーガで最高かつ最も信頼できるゴールキーパーの一人であり、ハンガリー代表ではレジェンドのキラーイ・ガーボルの素晴らしき後継者である。
基本予想スタメン
グラクシ
–
ラング
オルバン
アッティラ・サライ
–
ネゴ
カルマール
ナギ
クラインヘイスレル
ハンギャ
–
アーダーム・サライ
ロランド・サライ
期待の若手:アッティラ・サライ

23歳のセンターバックであるサライは1月にフェネルバフチェ入りして以降、印象的なパフォーマンスを披露。トルコで最も話題を集めたディフェンダーになった。
屈強なフィジカルと空中戦の強さを誇るサライは足下の技術も高く、左足も器用に使いこなす。既にレスターやウェスト・ハム、ニューカッスルといったクラブが彼に興味を示しているとみられており、多くのスカウトが今大会のプレーを注視しているはずだ。
日程
6月15日:vsポルトガル
@ブダペスト
6月19日:vsフランス
@ブダペスト
6月23日:vsドイツ
@ミュンヘン
ポルトガル


近年最も成功している代表チームのひとつであるポルトガル。2016年のEUROチャンピオンは第1回のネーションズリーグも優勝し、フランスで戴冠したときよりもさらに強くなっている。ブルーノ・フェルナンデス、ベルナルド・シウバ、ルベン・ディアスが成長し、ワールドクラスのスターであることを証明した。
ほとんどすべてのポジションで数多くの強力な選択肢があり、本大会代表に26人を選ぶことすら難しかったに違いない。選ばれなかった中にも素晴らしい選手が大勢いる。
強力な守備と、見る者を興奮させる攻撃で、ディフェンディング・チャンピオンは5年前よりもさらに素晴らしいフットボールを見せてくれるだろう。優勝候補筆頭である。
監督:フェルナンド・サントス
2014年に就任して以来、厳しい戦略家であるサントスは、ポルトガル代表監督として最長の在任期間を誇る。2016年の優勝以来、事実上、他に代わるもののない存在である。
2012年のEUROではギリシャ代表の監督として成功し、3大会連続でEUROを経験することとなった。
そのスタイルは、必ずしも目で見て最高に楽しいものではないかもしれないが、66歳のサントス監督は究極の権威的存在である。これは、更衣室ですべてのスター選手を把握するのに必要な資質だ。

スター選手:C・ロナウド

36歳となっても、フットボール史上最高の選手の一人であるC・ロナウドは、まだ成長を続けている。
ユヴェントスでのシーズンは、それまでの活躍から比べればさえないものではあるが、それでも1試合平均1得点を記録。他に類を見ない選手で、国際試合で100得点以上を挙げている2番目の選手となった。この夏、アリ・ダエイの109得点を抜いて1位となることを目論んでいるだろう。
2016年の決勝で開始直後にケガをしたことは忘れられない出来事であるが、7月11日のウェンブリーでは今度こそ90分フル出場を果たすつもりでいる。
基本予想スタメン
ルイ・パトリシオ
–
カンセロ
ペペ
R・ディアス
ヌーノ・メンデス
–
ダニーロ
モウティーニョ
B・フェルナンデス
–
B・シウバ
C・ロナウド
J・フェリックス
期待の若手:ヌーノ・メンデス

今シーズン、スポルティングは2002年以来のポルトガルリーグ優勝を果たしたが、この快挙を生んだ最高のスターの一人が2002年生まれのアカデミー出身選手であったことは、いささか象徴的であった。
ヌーノ・メンデスはEURO開催中に19歳となる。代表として初の大舞台は特別なものだろう。タックルが強く、前線にも出て行く危険な選手。攻撃的なメンタリティを持つ左サイドバックは今や、ポルトガル代表のスターティングメンバーになれるほどの成長を遂げている。
日程
6月15日:vsハンガリー
@ブダペスト
6月19日:vsドイツ
@ミュンヘン
6月23日:vsフランス
@ブダペスト
決勝トーナメント


歴代優勝国

