コラム:「クアレスマ化」の危機に直面するナニ

低調なプレーに加えピッチ外でも問題
マンチェスター・ユナイテッドのスター選手ルイス・ナニは、ほんの2シーズン前には世界のトップ選手になろうとしているかに思えた。

2011年には3度目のリーグタイトルを獲得し、同僚の選手たちによってクラブの年間最優秀選手に選出された。ユナイテッドのウインガーは世界のサッカー界を席巻する準備ができたかに見えた。

2010-11シーズンには10ゴールを記録。ユナイテッドの先輩であり同じポルトガル人でもあるクリスティアーノ・ロナウドと比較されるのもそれほど不自然には感じられなかった。ロナウドと同様、彼もスポルティングの有名なユースアカデミーの出身であり、その後オールド・トラフォードでスターダムにのし上がった選手だった。

だがそこから18カ月が経過した今、ロナウドが正真正銘世界のサッカー界の偉人となる一方で、ナニはある種の「キャリア中盤の危機」に直面している。サッカーにおいてはメダルや記憶はすぐに色あせてしまう。同胞のロナウドがベルナベウで忙しく記録を塗り替えていた昨季の1年間に、ナニは不安定で怪我に悩まされるシーズンを過ごしてきた。

ポルトガル代表としてEURO2012を戦うまでには体調を回復させ、準決勝に進出したチームで全試合に先発したが、最終的に優勝することになるスペインに敗れた。

ロナウドが大会のスター選手として注目を集め、オランダ戦やチェコ戦の殊勲者となる活躍で称賛を浴びる一方で、ナニは決して悪くはないが比較的静かな大会を過ごした。

今季はプレーのレベルを引き上げることが期待されていたナニだが、契約を巡る論争や、リザーブチームの選手であるダヴィデ・ペトルッチとの乱闘疑惑を巡る騒動に巻き込まれてしまっている。契約に関して言えば、ユナイテッドには2年間残された彼との現在の契約を延長する意志がなさそうな様子だ。

9月末に行われたアンフィールドでの宿敵リヴァプールとの試合をはじめ、何度か覇気の感じられないプレーを見せたことで、ナニはファンからの批判の対象となってしまっている。リーグ戦の前節のニューカッスル・ユナイテッド戦ではサー・アレックス・ファーガソンも彼をベンチ入りメンバーから外すことを選択した。

ナニの状況をさらに悪くさせているのは、ファーガソンが最近「ウイング無し」のダイヤモンド型の中盤を思い付いたことだ。3-0で勝利を収めたニューカッスル戦でもそれが採用されており、ナニにとって面白いことではない。

いったいどこで間違ったのだろうか? オールド・トラフォードでのナニのキャリアはもはや取り返しのつかないところまで来てしまったのだろうか。あるいは、彼はここから調子を取り戻し、ポテンシャルを存分に発揮することができるのだろうか。能力に疑いの余地はない。緩急の変化も足元の技術も素晴らしいものだし、クラブでも代表チームでも5試合に1点近いペースでゴールを記録しており、試合を決められる選手でもある。

だが、能力だけでは必ずしも十分ではない。非常に高い能力を備えていたポルトガルのウインガー、リカルド・クアレスマのキャリアがそれをよく物語っている。彼もまた、次々とスター選手を輩出するスポルティングの出身である。現在はベシクタシュに流れ付いている29歳の彼は、21世紀が始まった頃には間違いなくポルトガルの「ゴールデンボーイ」だった。

まだ10代のうちからアルヴァラーデ(スポルティングの本拠地)で頭角を現した彼は、技術的には必要なものを全て備えていることがすぐに明らかになった。両足を完璧に操り、まばゆいばかりのドリブル能力も、鋭い緩急の変化も、優れたボディバランスも身に付けていた。彼のサッカー選手としてのキャリアは決して失敗だったわけではない。ポルトガルリーグで4度の優勝(スポルティングで1度、ポルトで3度)を経験し、バルセロナやインテル、チェルシーといった欧州屈指のクラブでプレーしてきた。

だが彼は、多くの者が予想していたような高みに達することはできなかった。その主な要因は彼の態度と、柔軟性のなさにある。サッカー選手としての彼の履歴書は、同僚の選手たちや監督たちとの衝突で埋め尽くされている。
また、活躍のピーク時でさえも、彼は戦術に従わず自分勝手なドリブルに頼りすぎることをいつも批判されていた。重要な場面での決断力に欠けており、味方からの絶好のパスを受ける時に「盲点」が存在することも多くの者が感じ取っていた。

クアレスマは自らのサッカー選手としてのDNA内に存在するこの穴を埋めることができず、現在母国では才能を無駄にしてしまった選手の典型例と見なされている。2人の選手に類似点があることは間違いない。クアレスマと同じく、ナニも間違った選択肢を選んでしまい責められることが多い。たとえば他の選手がより有利な位置にいるのに自らシュートを撃ってしまうようなことだ。ディフェンスへの協力を怠る部分も共通している。

おそらく、ナニがクアレスマから得なければならない最大の教訓は、ポテンシャルを存分に発揮して成長するためには学ぶ姿勢が必要だということだろう。現在の彼は、数年前と同じように高いテクニックを持った選手であることに変わりはないが、弱点である部分を修正したようには感じられない。成長の速度が鈍れば、それだけ彼自身にも、監督にも、サポーターにも不満が高まってくる可能性が高い。

対照的に、ロナウドのような選手たちは常に成長の途上にあり、ピッチの内外で常に自らのプレーを磨き続けている。かつてジョゼ・モウリーニョは、インテルの監督だった際にクアレスマについて言ったことがあった。「彼は素晴らしい才能を持っているが、学ばなければならない。そうでなければ出場はできないだろう」と。

同じことはナニにも確実に当てはまる。


文/スティーブン・ジレット