レアル・マドリーを追い詰めた鹿島アントラーズ…健闘を支えた運動量と組織力/コラム

FIFAクラブワールドカップ決勝戦は、レアル・マドリーが延長戦の末、鹿島アントラーズを4-2で制し、優勝を果たした。しかし、欧州王者をあと一歩のところまで追い詰めた鹿島アントラーズの戦いぶりは、延長戦に入るまで、決して引けを取らない内容だった。サッカーライターの河治良幸がこの試合を分析する。

鹿島アントラーズがFIFAクラブワールドカップ優勝に、あと一歩まで迫った。個々のプレーを見れば、確かにレアル・マドリーが大きく上回っていた。だが、それ以上に際立ったのはチームとしての明確な意図を持ち『白い巨人』に立ち向かっていった鹿島の健闘ぶりだった。

早い時間に失点したことで、鹿島の理想的なプランは崩れただろう。だが、そこから相手に適応し、チームの良さを発揮して一度は逆転したことは見事の一言である。その、鹿島の強さの根底にあるものとは――?

■先制されても動じない鹿島の強さ

試合はレアル・マドリーが序盤に先制するも、その後の追加点が中々奪えない展開となった。鹿島のGK曽ヶ端準が相変わらず研ぎ澄まされていたこともあるが、先制点を奪われてからも、世界を驚かせる接戦に持ち込んだことは、鹿島のチームとしての強さの証左である。

守備では4-4-2をベースに組織の連携を保ちながら相手の個人技をしっかり潰す。攻撃ではダイナミックな展開にオフ・ザ・ボールの機動力を加えて相手陣内のスペースを突く。得点経過によって大きくテンポが変わったレアル・マドリーとは対照的に、鹿島は90分を通して変わらなかった。

レアル・マドリーが次第に間延びしていく一方で、鹿島がどんどん数的優位を作っていく。相手の左サイドにマルセロしかいないシステムの穴を突き、右サイドバックの西大伍を攻撃の起点としたことは戦術上のキーだった。それだけでなく、相手の出方を観察しながら中央と左の攻撃も織り交ぜていた。

■セカンドボールを引き寄せた鹿島

時間の経過とともに鹿島のアドバンテージとなったのがセカンドボールだ。最初は相手の攻撃に対応するのに精一杯で、何とか跳ね返しても再びボールを拾われていた。それが相手に順応するに連れて、鹿島が運動量と組織のコンパクトさを生かす形でセカンドボールの多くを拾うようになった。

レアル・マドリーがボールを持った状況の1対1ではほとんどボールをキープされたものの、セカンドボールを巡るコンタクトプレーでは鹿島の選手たちが決して負けていなかった。それを牽引していた小笠原満男を、疲労が見えかけたところでフレッシュなファブリシオに交代。石井正忠監督の判断も的確だった。

■明確だったイスコが投入されてからの鹿島の狙い

レアル・マドリーは80分過ぎにイスコを投入し、3-4-2-1の様な形で中盤を厚くしてきた。だが、鹿島は逆にサイドのスペースを使い、クロスからゴールを狙う。さらにセカンドボールを奪っての二次攻撃をチームで共有したことが、80分過ぎの連続的な得点チャンスにつながった。イスコは非常にキープ力が高くやっかいな選手だが、レアル・マドリーの攻撃が中央に偏ったことで、鹿島としては中央を守ってサイドを突くという狙いが明確になった。

延長戦で息を吹き返したレアル・マドリーに対し、相手の自陣でのミスを突いてファブリシオがゴールに迫ったシーンは最後の勝機だったかもしれない。その直後にロングパスから、カリム・ベンゼマが落とし、クリスティアーノ・ロナウドが抜け出す形で勝ち越しゴールを決められた。試合後石井監督が「決定的なチャンスを決め切るというところも体力は必要だと思うので、その辺は不足していた」と語っている。

致命的とも言える4点目を取られて大勢が決したように見えたところからも、最後まで鹿島らしく、勝利の望みを捨てずゴールを狙って行った。結果論としては、赤崎秀平を延長前半の開始から投入しても良かったかもしれない。勝利を感じさせる試合だっただけに、鹿島にとっては悔しさが残る試合だった。それは、2得点を決めてブロンズボールを獲得した柴崎岳の表情と「勝てなかったので悔しい」という言葉に象徴されている。

欧州王者に対しても、周りの予想や相手の名前に関係なく、目の前の試合に全力で勝ち、タイトルを掴みに行く鹿島の姿勢というものが凝縮された試合だった。

文=河治良幸