【日本代表コラム】連勝スタートににじむハリルホジッチの「理由」と「展望」

3月13日に来日すると1週間も経たない19日にはメンバー発表、2週間後の27日にはチュニジアを相手に初勝利を収め、さらにその4日後には大差でウズベキスタンを下してみせた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はブラジル・ワールドカップ(W杯)で1勝も挙げられず、アジアカップ連覇もできなかった日本代表を短期間で立ち直らせた。

その要因は監督が幸運に恵まれたことだけではない。監督とスタッフは連日0時近くまでミーティングを重ね、データ分析を行っているとチーム関係者は語る。その準備の丁寧さが連勝に結びついた。

また、監督に就任する前から「自分なら日本代表をこう指導してこんなチームにする」とプレゼンテーションしていたくらい、日本代表を調べ上げていた成果とも言えるのだ。だからこそ、「堅守速攻」を植え付けると言いながらも、これまでの日本の戦いぶりと融合させたスタイルをつくり出すことができた。

監督の詳しい下調べがあった以上、この2試合の選手選考と起用方法は日本サッカー協会主導とばかりは言えない。選手を知らないままピッチに送り出す監督ではないのだ。つまり、すべてに監督なりの「理由」があったと考えるべきだろう。

そうなると、この2試合でどう起用されたかということが大きな意味を持つ。まず考えが及ぶのは、何試合出たかということだ。

2試合ともに出場したのは7人。内田篤人・今野泰幸・香川真司・岡崎慎司・本田圭佑・川又堅碁・宇佐美貴史だ。川又は当初バックアップメンバーとして発表されていたことを考えると、ほかの6人は監督の構想の中心となるのではないか。

ここで意外なのは、長谷部誠と吉田麻也が1試合のみの出場だったということだ。長谷部はチュニジア戦で最も多くボールをさばいていた選手であり、吉田もこれまで守備陣を引っ張ってきた。これは、それほど重要な選手でもポジションは確保されていないという表現でもあるのだろう。

そしてフィールドプレーヤー全員を出場させたことで、競争がきちんと行われていることも示した。呼ぶだけで使わない選手がいることは、先発が固定化していることを意味する。現時点ではチーム構成は流動的であると選手には伝わったはずだ。生存競争の激化は確実に起きるだろう。

メンバー発表の時のパフォーマンス、記者からの質問に言葉「多く」答える記者会見、宣言したとおりの選手起用、観客を意識したかのような選手交代など、ハリルホジッチ監督の革新的なスタイルは現在のところ、ほぼ満点とも言える成績と好感度を持って受け入れられている。

だが、まだ安心するのは早い。 勝利を収めている間は問題点は見えにくいのだ。

W杯予選でプレッシャーがかかったときにどうなるか。また、アジア予選では高温多湿の気候や、極端に引いた相手などという独特の条件が出てくる。その解決策が示されるまでは不安が残るはずだ。

合宿初日に恒例となっていた監督の囲み取材がなくなったり、試合前日は選手たちがミックスゾーンで答える時間が短いなど、メディアとの緊張感は続いている。勝っている間は良いのだろうが、成績が出なくなれば、一気に不満爆発となる可能性もあろう。

それにしてもハリルホジッチ監督がここまで見せてきた手腕を考えると、この時期にこのレベルの監督がいたということが不思議でならない。そして、このレベルの監督がわずか半年で職を失うのが日本以外のサッカー界だとするならば、そこにこそ大きな彼我の差があると思わざるを得ないのだ。


文/森雅史