インテル長友佑都、フランク・デ・ブール監督解任で揺れた30日/コラム

連載企画「河治良幸の真眼 日本人プレーヤー30日の評価」では、欧州で活躍する日本人選手を中心に毎週1選手をピックアップ。サッカージャーナリスト河治良幸が鋭く、その選手の"今"に切り込みます。

長友佑都は混迷する名門インテル・ミラノでいまだ競争の最中にある。

10月2日のローマ戦で開幕戦から6試合ぶりのリーグ戦に途中出場したが、日本代表の合宿中に槙野智章と衝突し、負傷のため離脱。クラブに戻って調整した。代表ウィーク明けから公式戦7試合で4試合に出場し、先発は4試合、フル出場が2回。出場4試合の成績は2勝2敗となっている。チームは10月30日に行われた第11節のサンプドリア戦に敗れた直後、フランク・デ・ブール監督が解任された。在位期間はわずか84日。正式な後任を探す間に、下部組織のステファノ・ヴェッキが暫定的に指揮を取る形となった。

ヴェッキ監督の初陣となる11月3日ヨーロッパリーグのサウサンプトン戦は長友もフル出場し、持ち前の精力的な動きで攻守を活性化させたが、60分に長友のオウンゴールで敗戦。インテルは4試合を終えた段階でグループKの最下位となった。監督代行は「不運な形で佑都が自分たちのゴールに入れてしまった」とかばったが、2-0で勝利した11月6日のクロトーネ戦は出場なし。新体制でも厳しい競争が待っていそうだ。

▽10月16日(日)セリエA カリアリ戦

試合結果:1-2(負け)
出場せず
評価:なし

▽10月20日(木)ヨーロッパリーグ サウサンプトン戦

試合結果:1-0(勝ち)
90分(途中交代)
評価:6.0

吉田麻也を擁するプレミアリーグのサウサンプトンをホームに迎えた試合で、長友は4-3-3の右SBを担当。ボール保持率45%、シュート数が8対16と守勢の中、相手のクロスをカットするなどサイドを堅実に守り、時にゴール前でクリア。対面の仕掛けを封じるだけでなく、ワイドに流れてくるFWシェイン・ロングを阻止するシーンも目立った。

インテルは67分、左SBダビデ・サントンのクロスにアントニオ・カンドレーヴァが合わせてゴール。77分にMFマルセロ・ブロゾビッチが二枚目の警告で退場し、終盤は10人の戦いを強いられたが、長友も守備陣と協力して粘り強く守り抜き、後半アディショナルタイムにダニーロ・ダンブロージオと交代したものの、1-0の勝利に貢献した。

▽10月23日(日)セリエA アタランタ戦

試合結果:1-2(負け)
61分(途中交代)
評価:5.0

サウサンプトン戦から中3日だが引き続き右SBで先発出場。10分にCKからアンドレア・マシエッロに決められリードを許すと、2分後には長友が対面のブカリ・ドラメに突破を許す形でクロスを入れられ、アンドレア・コンティのシュートはGKサミル・ハンダノビッチが好セーブで防ぎ、難を逃れた。攻撃のリズムを作れない状況で長友もなかなか攻め上がれず、守備では同サイドのウィングであるイヴァン・ペリシッチがタイトに守れないため、長友が相手のサイドハーフと左SBに対して数的不利になるシーンもあった。

インテルはFWのエデルが直接FKを決め同点としたが、主導権を握れないまま長友は61分にクリスティアン・アンサルディと交代した。終盤にアタランタのFWマウリシオ・ピニージャに強烈なミドルシュートを叩き込まれてセリエAで3連敗となった。直接の敗因とはならなかったが、攻守にインパクトを残せなかったことも事実。チームの守備がはまらない中でも、最も得意とする球際の部分でタイトに守り切れたら評価は上がったはず。攻撃も機を見た思い切りがほしかった。

▽10月26日(水) セリエA トリノ戦

試合結果:2-1(勝ち)
90分(フル出場)
評価:6.5

前節の敗戦で厳しい立場に追い込まれていたデ・ブール監督だが、ホームで好調のトリノ相手に2-1で勝利を収め、ひとまず面目を保った。左SBで先発の長友は過去の数試合より高めのポジションを取り、左足で危険なクロスを上げるなど相手ディフェンスの脅威を与えた。カンドレーヴァのスルーパスにエースのマウロ・イカルディが飛び出して決めた先制シーンでも長友はウィングの様な位置まで上がっており、ゴール後に最初にイカルディと抱擁することとなった。

その後もダビデ・ザパコスタの突破を防ぐなど、長友は左サイドで奮闘を続けた。インテルは右SBと両CBの連携ミスからトリノに同点ゴールを許したが、88分に長友がキープしたところから途中出場のロドリゴ・パラシオがつなぎ、最後はイカルディが豪快な右足で決勝ゴールを決めた。フル出場したことに加え、攻守で両方で貢献。今季最高のパフォーマンスだった。

▽10月30日(日) セリエA サンプドリア戦

試合結果:0-1(負け)
出場せず
評価:なし

▽11月3日(木) ヨーロッパリーグ サウサンプトン戦

試合結果:1-2(負け)
90分(フル出場)
評価:4.5

デ・ブール監督が解任され、ヴェッキ暫定監督が率いる最初の試合は左SBで先発した。1-1の同点で迎えた69分に致命的なオウンゴールを献上。また持ち前の運動量をうまく発揮できず、攻撃でも効果的なサポートや決定機に絡むようなプレーもなかった。オウンゴールは逆サイドからのクロスがダンブロージオに当たってコースが変わり、2人の味方の前を通ったボールが長友の左太腿にボールが当たり、そのままゴールに入ってしまった。不運とも不用意とも言えるが、それを挽回するプレーに乏しかったのは残念な結果だ。

▽11月6日(日) セリエA クロトーネ戦

試合結果:0-0
出場せず
評価:なし

■今後の課題

パスサッカーを標榜するデ・ブールが両SBにビルドアップ能力を求める状況で、序盤戦はなかなか信頼を得られなかった。チームが苦しい状況でようやく長友の機動力やサイドラインの1対1が評価されたのか、出番が回ってきた。守備面の持ち味は出したが、攻撃参加はチームのリズムが良い時間帯に限られ、長い距離を一気に走ってチャンスを導くプレーは出せていない。

良くも悪くもバランスを意識している様子だが、爆発力が完全に失われているのは長友のSBとしての価値を下げてしまう。オウンゴールは不運で片付けるには重すぎるが、切り替えるしかない。ただ、今のようなバランスワークや局面の粘り強さだけでは存在感を印象付けるのは難しい。

もちろん新しく就任する監督の戦術によりSBに求める役割の比重も変わるが、30歳という年齢もあり、もはやゴリゴリ前に行くスタイルではない。タイミング良く“爆発力”を発揮して、チャンスに絡むシーンを生み出すプレーを期待したい。

文=河治良幸(サッカージャーナリスト)