英vs伊@CL:アンチェロッティとモウリーニョ、どちらが優れている?

智将同士の対決
チャンピオンズリーグ(CL)の舞台で、インテルのジョゼ・モウリーニョ監督が古巣チェルシーとの対戦を引き当て、その裏返しとして前ミラン指揮官のカルロ・アンチェロッティがサン・シーロへと“里帰り”することは、十分過ぎるほど予測できたことだった。この対戦は、多くの理由から興味深いものである。そこには、世界でもトップの監督の対決も含まれているのだから。

モウリーニョ監督のインテルを見てみると、近年の戦術上での明らかな欠陥は、中盤と最前線のつながりを欠いていたことだった。すぐさまこの問題に着手するよりも、モウリーニョは前任のロベルト・マンチーニが用いた、FWズラタン・イブラヒモビッチにロングボールを送って、彼に仕事を任せるという手法を踏襲した。ライバルたちがカルチョーポリ(2006年に発覚した審判操作による不正疑惑)と経営ミスに苦しむセリエAでは、大変うまく機能した。だが昨年、マンチェスター・ユナイテッド相手にそれがうまくいかなかったとき、「次の手」はなかったようだった。

“スペシャル・ワン”がインテルに加わる前に成し遂げた栄光の数々は、枚挙にいとまがない。CLを手に入れ、プレミアリーグを2度制覇した。ポルトガルの国内リーグタイトルを2度と、FAカップも。このような輝かしい経歴を引っ提げて、彼は一刻も早くCLをもたらすよう、インテルへと招かれた。ベスト16での敗退は、マッシモ・モラッティ会長の望んだものではなかった。

しかしながら今年は、インテルはここ数年で最強のチームである。モウリーニョは自身のキャリアを通じて、チームに冷酷な影響力を浸透させ、望む選手を集める夏場を2度過ごした。そうしてインテルは、彼の古巣であるポルトとチェルシーがそうであったように、派手さはないが、ナンセンスなものもないチームをそろえたのである。

モウリーニョのチームの特徴の一つがリベロというか、ボールを扱えるCBの存在である。ポルトとチェルシーでは、リカルド・カルバーリョが前へとうろついていける“ライセンス”を与えられていた。インテルでは、昨夏にバイエルン・ミュンヘンから加入したルシオが、同じ役を担っている。DFが前線で爆弾を落とすためにギャップをつくるチームなどほとんどないが、ハビエル・サネッティやエステバン・カンビアッソらのカバーが、それを可能にしている。

モウリーニョの選手への評価には、疑問が残る部分もある。マンシーニやリカルド・クアレスマといった有益な選手獲得の結果は、悲惨というほかなかった。サリー・ムンタリは、ハイクラスの選手獲得の呼び水にされているように映る。周囲の神経をすり減らせるような彼の性格は、選手を孤立させることにもつながりかねない。その冷え込んだ関係の最たるものが、マリオ・バロテッリとのものだろう。

より経験のあるアンチェロッティは、ずっと近付きやすい監督だ。最近では、スキャンダルが発覚したジョン・テリーへの手の差し伸べ方に、それがよく表れている。チェルシーのキャプテンはメディアと大多数のファンに叩かれたが、アンチェロッティはそばに寄り添っていた。ブルースのロッカールームでは、他の多くの選手に同様のアプローチが取られている。元監督のルイス・フェリペ・スコラーリはディディエ・ドログバを公に侮辱したが、そのドログバもアンチェロッティに肩を組まれる選手の一人である。

結果として、アンチェロッティはセリエAからプレミアリーグへと、すんなりと適応することに成功した。アンチェロッティが就任する前、チェルシーは“壊れた”チームに見えたが、今ではプレミアリーグの首位に立つ。この切り替わりは、もちろん彼の個性だけではなく、柔軟な戦術にもよるものだ。

アンチェロッティはチェルシーで、選手たちにギャップをつくらずコンパクトな守備組織をつくらせるよう指導することができる。カウンターアタックを仕掛けるのだが、その選手たちはまた、その後でより創造的であることを示すこともできる。監督が配置した中での選手の柔軟性による部分もあるのだが、アンチェロッティが次の対戦相手にダイヤモンド型の中盤で臨むのか、4-5-1を採用するかを決断するかは、より重要なポイントだ。

アンチェロッティがかつて手にした成功を再び楽しむためには、選手との密な関係、トレーニンググラウンドで磨き上げられた鋭い戦術眼といったファクターの組み合わせが必要だ。50歳の指揮官は、スクデット、コッパ・イタリア、クラブ・ワールドカップと同様に、CLも2度つかんできた。国内リーグでの記録は他のものと比べて印象的ではないが、カルチョーポリによる影響を過小評価してはいけない。

“カルレット”ほどにCLのことを知っている人間は、そうはいない。05年はPK戦の末にリヴァプールに敗れたが、彼に率いられたミランは3度決勝へ進出している。06年には最終的に王者になるバルセロナに敗れたものの、準決勝まで勝ち進んだ。今シーズン、彼のチェルシーはポルト、アトレティコ・マドリー、アポエルとのグループステージを勝ち抜いたが、最大の試練はまだ訪れていない。

モウリーニョの方が棚にたくさんのトロフィーを並べているかもしれないが、彼がこれまで率いたクラブでたくさんの資金を使ってきたことを忘れてはいけない。スペシャル・ワンは、彼も本当はどうしたらいいか分からないくらいのアブラモビッチ・オーナーの資金を使ってきた。ショーン=ライト・フィリップスには、2100万ポンドを無駄遣いしたのだから。インテルでも同じである。ただしモウリーニョの言葉を信じるならば、彼だけが大金を使って集められたスターたちをマネジメントできたのだという。

さらに言えば、チェルシーのキープレーヤーだったペトル・チェフ、ジョン・テリー、フランク・ランパード、クロード・マケレレ、ダミアン・ダフらは、彼の前任者であるクラウディオ・ラニエリによって連れてこられたか、ブルースのユースアカデミーからもたらされた選手たちだ。アンチェロッティも、アレッサンドロ・コスタクルタ、パオロ・マルディーニ、アンドリー・シェフチェンコといった選手を引き継ぎはした。それでも陽気なタレント、カカーをたった850万ユーロで獲得する前には、アンドレア・ピルロを中盤の底にコンバートし、マヌエル・ルイ・コスタにさらなる自由を与えた業績がある。

ポルトガルのチームにとっては極めて信じがたい事実である、ポルトでのCL優勝を忘れるように務めなければ、トロフィーを掲げるためのより良い道は見つけられない。当時、グループステージではレアル・マドリーに上回られた。ラウンド16でマンチェスター・ユナイテッドをなんとか退けた後、ポルトはリヨン、デポルティボ・ラ・コルーニャ、モナコと対戦していった。そう、ほとんどヨーロッパのビッグクラブと顔を合わせることはなかったのである。

モウリーニョにとって今こそ歴史を塗り替え、ヨーロッパのエリートが集まる大会でさらなる高みにインテルを導く時だ。彼は相手ベンチにいる狡猾なアンチェロッティを、打つ手なしにさせることはできるのか。見ものである。

文/アンソニー・ライト

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