今夜決勝! なでしこジャパン対アメリカ女子代表

聖地で2度、国歌を聴くのはどちらのチームか?
8月9日19時45分(日本時間の27時45分)、"聖地"ウェンブリースタジアムでロンドンオリンピック女子サッカー、決勝戦が行われる。

女子サッカーに参加する12チームのうち、ただ1チームだけが、聖地で2度、国歌を聴くことができる。
1度目は、キックオフの前に――。
2度目は、表彰台の一番上に立ったときに――。

なでしこジャパン対アメリカ女子代表。奇しくも昨年の女子W杯決勝戦と同カードとなった。

なでしこジャパンは今年、アメリカと3回対戦している。その成績は1勝1分け1敗。とはいえ、"互角の相手"とは言い切れない。最後の戦いとなった6月の親善試合では、1-4で惨敗した。

そのときのアメリカの戦い方はロングボールを多用して日本の最終ラインの裏を突く、シンプルなものだった。加えて、前線からプレッシャーをかけて高い位置でボールを奪うと、日本ゴールに次々と襲い掛かった。

防戦一方であった、あの試合から約2カ月。なでしこたちはロンドンオリンピックを戦いながら、さらに成長してきた。特に守備陣は安定度が増している。GK福元は的確なコーチングと好セービングを連発。センターバック岩清水と熊谷は相手にボールを自由に触らせない守備を続けてきた。彼女らを中心に、準決勝のフランス戦では、全員が高い集中力と粘り強さで猛攻を跳ね返した。佐々木監督は「劣勢でも耐える力を持って、スピードやパワーを誇る相手とも戦えた。こういう経験値が(なでしこを)成長させてくれた」と、胸を張る。苦しい状況も全員でしのげる強さが、なでしこらしさである。

対するアメリカは準決勝でカナダと顔を合わせ、予想以上に苦しんだ。カナダのFWタンクレディとシンクレアに最終ラインを切り裂かれて3点を失った。スピードとパワーを兼ね備えたDF陣が、冷や汗をかきながら背走させられるシーンも見られた。しかし、先制されては同点に戻すシーソーゲームが続き、延長後半ロスタイムにモーガンのヘディングで決勝のチケットをもぎ取った。これが女王の意地だ。アメリカは女子サッカーがオリンピックの正式種目となった96年のアトランタ大会からすべて決勝に進み、3度の金メダルを手にしている。今回も決勝進出は譲らなかった。

なでしこジャパンとアメリカは、ともに壮絶な試合を勝ち抜いて、金メダルを争う最高のステージに立った。互いのモチベーションは最高潮に達しているはずだ。

なでしこジャパンのキャプテン宮間は「間違いなく、いいチーム」と自ら評した。チームをまとめる宮間自身も苦しい日々が続いていた。プレー面ではW杯以後は相手チームに研究されてマークが厳しくなり、らしくないパスミスも増えた。ピッチ外でもチームを鼓舞し続けて、厳しい表情を見せることも多かった。

準々決勝のブラジル戦終了後、宮間は円陣の中で短い言葉を掛け終わると、両手を突き挙げてジャンプしながら、無邪気にはしゃぎ始めた。大会一番の笑顔がようやく見られた。そして準決勝では宮間が蹴ったフリーキックからの2得点で勝利をつかむ。決勝進出を決めて、彼女は涙をこぼした。

宮間が昨年の女子W杯優勝後から、ずっと言い続けてきたことがある。
「オリンピックでも優勝して、W杯で世界一になったことが、まぐれではなかったことを証明したい」

念願の"真のワールドチャンピオン"になれるチャンスがやってきた。15歳から19年間日本代表のユニフォームを着続けている、澤も感慨深げだ。大会前、彼女は「今は一人一人のレベルが高いし、世界一を目指せるチーム。(初出場となった96年の)アトランタのころはオリンピックに出られるだけで喜んでいたのを思うと、全然違いますね」と笑顔で語った。日本の女子サッカーの成長曲線とともに歩んできた、彼女らしい言葉だ。

日本女子代表が結成されてから31年目にして、ついにオリンピックのファイナルにたどりついた。

日本時間の8月9日27時45分。いつもとは違った時間にベッドから跳び起きる少女たちがたくさんいることであろう。そして、聖地で2度流れる君が代を聴きながら、「私もなでしこジャパンみたいになりたい」そう思ってくれるに違いない。

そうして、日本女子サッカーの歴史は紡がれていく――。


文/砂坂美紀(Miki Sunasaka)
1975年生まれ。慶應義塾大学法学部中退。女子サッカーを約15年取材し続けるフリーライター。著書は『なでしこ つなぐ絆 夢を追い続けた女子サッカー30年の軌跡』(集英社)。
ツイッターアカウントは @sunasaka1