ガイジン’sアイ:外国人記者が見る浦和の横断幕問題

差別問題とその対応をどう受け止めるべきか
3月8日の埼玉スタジアムで人種差別的な横断幕が掲げられたことが明らかになって以来、日本の世界のサッカーコミュニティーから様々な反応が湧き起こった。
 
リーグは浦和レッズに対する処分を発表し、浦和自身も問題を起こしたサポーターへの処分を発表している。Goalでは、数人の外国人記者に話を聞き、事件およびその後の余波についての思いをうかがった。

 
◇日本のサッカーファミリーの力強いリアクション

2週間前、一部の浦和レッズサポーターによって埼玉スタジアムのコンコースに掲げられた横断幕は言葉による人種差別であり、脅迫めいたものであった。卑劣な行為であることに疑いはないが、この事件そのものではなく、Jリーグとそのコミュニティーが事件に対して見せたポジティブな対応に注目したいと思う。
 
クラブに直接関係する人物によるものとしては、槙野智章のツイートが最初の反応だった。迅速かつ直接的な、直接の関係者による発言であり、選手たちはこの種の差別を受け入れないという意志を明確にするものだった。続いて浦和レッズの公式声明や、村井チェアマンの強い言葉が発せられた。
 
私自身のリアクションとしては、日本のツイッターのフォロワーの皆さんに、母国イタリアで暴力と人種差別がスタジアムにもたらした損害について考えてほしいと呼びかけた。イタリアではそういった問題(およびその他の問題)のためにサッカーの観客が減少する一方だ。
 
反響は非常に素晴らしいもので、数時間のうちに1300件を超えるリツイートと。多くの賛同の声が寄せられた。
 
残念な出来事ではあったが、この件に対するJリーグのリアクションは、日本のサッカーコミュニティーが強く健全であることを示す証拠だと信じている。リーグの対応は当然厳格なものとなったが、関係する誰もが素早く、前向きな行動を見せたことは希望を感じさせてくれる。
 
今回の事件は、日本のサッカー界が大きく広がったファミリーであることを改めて示したものでもある。私たちのような外国人も、そこに属していることを誇りに感じられる。
 
文/チェーザレ・ポレンギ
Goal日本版編集長。毎週水曜日のJ Sport『Foot!』に出演しセリエAやJリーグを語る。ツイッターアドレスは@CesarePolenghi
 
 
◇どのクラブも自分たちの問題として考えるべき
 
今回の一件は様々な視点から捉えることができる。
 
イエス。確かに差別ではある。人種差別ではないとしても民族差別ではあり、差別が根絶されるのは誰もが望むことだ。我々は繋がり合う世界の中で生きており、お互いが尊重し合うことが必要だ。
 
ノー。彼らは決して日本のサッカーファンを代表する存在ではない。普段であれば、世界の中でも特に友好的で親切なのが日本のサッカーファンというものだ。
 
イエス。浦和レッズの対応は適切なものではなかったが、クラブ自身はすでに差別との戦いに力強く取り組んでいる。この一件が浮き彫りにしたのは制度上の問題だ。グラウンド上の人々は、自分たちでは気がついているつもりでも十分な認識に欠けており、必要な時に問題を特定したり断固とした行動を取ったりすることができないということだ。

イエス。Jリーグからの処罰は正しかった。崩壊をここで食い止めるためにも、重要な前例を作るためにも。
 
イエス。レッズは不運だった。他の全てのJリーグクラブは、これが自分たちのクラブで起こっていたかもしれないと意識しなければならない。
 
イエス。リーグやクラブだけではなく、日本の社会を構成するあらゆる団体や個人にとっても、非常に重要な教訓になった。少なくともJリーグにおいては、失敗が繰り返されることはないだろう。
 
イエス。この一件は世界に向けての日本の評判を傷つけた。
 
イエス。たとえば英国のクラブであれば、現在ならJリーグよりもうまくこういった件に対処したはずだが、40年前ならおそらくできなかっただろう。
 
イエス。どの国にも差別はあるものだし、おそらくは今後も常に存在し続けるだろう。どの社会でも時々このような事件が起こりながら、それを通して全ての人にとってより良い場所となることを目指したり、維持したりしていくものだ。
 
ノー。レッズは決してスケープゴートにされるべきではない。本当に素晴らしいサポーターたちのいる素晴らしいクラブだ。その中にはひょっとしたら、いてほしくないような者も含まれるかもしれないが。
 
文/マイケル・プラストウ
ライター、翻訳家。イギリス『ワールドサッカーマガジン』の日本特派員。
 
 
私のチームをずっと応援し続ける
 
私たち浦和レッズのファンにとって暗く重い一日となった。私自身は3月8日に埼スタにはいなかったが、試合終了直後に『ツイッター』で横断幕を目にすると胸を蹴り飛ばされたような思いだった。
 
「Japanese Only?」 私は日本人ではない。だが、クルバ・エスト以外の場所に立ち入ったことなどない。
 
「私も排除されるのだろうか?」 もちろんそんなことはない。別の何かを意味しているのだろう。
 
だが、それは英語で書かれ、コンコースに掲げられていた。彼らはその意味を分かっていたはずだ。
 
私はそこに望まれていない。私のファミリーは私の存在を望んでいない。
 
私は蹴り出されてしまった。
 
それが私の感じた思いだった。怒りから悲しみまで、感情があらゆる方向へと飛び回った。ショックと不快感が湧き起こっていた。しばらくは何が起こったか信じられないくらいだった。
 
今では横断幕の背後にあった理由が分かっている。それを掲げた少数のサポーターグループは、「統制が取れない」という理由で「私のような人々」がいることを望んでいなかった。彼らは何を望んでいるのだろうか? 私はすべてのチャントを歌い、歓声を上げ、ゴールを祝い、飛び上がり、試合の間ずっと手を叩いている。これは応援ではないのだろうか。彼らに受け入れられるために、ほかに何をするべきなのか? 肌の色を変える? 埼玉弁を話せなければならない?
 
彼らが私を変えることはないし、変えることもできない。私は一人の浦和レッズファンとして、ずっと自分のチームを応援し続けるつもりだ。We are Reds.
 
文/ライアン・スティール
サッカーのユースコーチを務め、Goal日本版にも寄稿。浦和レッズサポーター。ツイッターアドレスは@steelinho


◇事件の記憶は薄れても忘れられはしない
 
この事件に対するJリーグの対応は、リーグの国際的なPR感覚が試される機会であると同時に、日本のサッカー界における人種差別に真っ向から立ち向かっていく村井チェアマンの意志が試される機会でもあった。
 
浦和レッズに対する力強い戒告を行った村井氏は、この試験に見事合格してみせたと言える。だが、この件についての発表を行う上での体制そのものは話が別だ。彼らが木曜日の記者会見まで沈黙を保ったことは決断力不足だと捉えられたし、発表された処分の英訳が低水準だったことも、新任のチェアマンの力強く断固とした声明に見合うものではなかった。
 
レッズのPR体制もほぼ同様だった。彼ら自身が発表した英語での声明は、横断幕によって差別された外国人たちに対する心からの謝罪というよりは、日本のファンやスポンサーに対して行った謝罪をそのまま翻訳したものでしかなかったからだ。
 
村井氏と、レッズの淵田敬三代表取締役社長には最大限の賛辞を送りたい。淵田社長は自身のクラブの事件に対する対応のまずさを心から悔やんでいるように感じられた。だが、この事件の記憶が薄れることはあったとしても、すぐに忘れ去られてしまうことはないだろう。リーグは今回の事件を教訓として、信じられないほどに友好的な環境であるというJリーグの本来の姿を、海外のファンに向けて売り込んでいくという困難な任務に再び専念しなければならない。
 
文/ダン・オロウィッツ
Goal日本版エディター・フォトグラファー。ツイッターアドレスは@aishiterutokyo
 
 
◇レッズファンは評判を取り戻せる
 
浦和サポーターは長年にわたって、日本で「最高」のサポーターだと評価されてきた。どんなスタジアムにも最大限の人数で乗り込み、2週間に1回は埼玉スタジアムを驚異的なまでに真っ赤に染め上げ、対戦相手の根性試しをするような舞台を作り出している。
 
彼らはまた、日本で最も欧州的なサポーターであることを誇ってきた。だが近年ではいくつかの事件が浦和のイメージを損ない、彼らが愛すると訴えるクラブに少なからぬ経済的処分が科されることにもつながっていた。
 
ついにレッズの熱狂的サポーターの少数のグループが、「Japanese Only」の横断幕によってJリーグを苦境にまで追い込んでしまった。だが、これからも残っていく中心的なサポーターに課される試練は、今まで以上に大きく声を張り上げることで彼ら自身とクラブの評判を取り戻すことができるかどうかだ。
 
それが彼らの新たな姿となるのだろうか? チームによっては試合場の雰囲気を強調するために横断幕やフラッグを用いているし、それを必要としている。だが、リーグから下された処分に加えて、クラブからそれらの使用を無期限禁止された浦和サポーターは、日本のサッカーコミュニティー全体から彼らがどう見られるかというイメージを再構築するチャンスを与えられたことにもなる。
 
上半身裸になっての応援や、声を揃えての応援を通して、すべてのレッズファンはその情熱を正しい方向へと向かわせることが可能なのだと証明できるはずだ。彼らのチームを後押しするという方向へと。
 
文/ベン・マクスウェル
英語でJリーグを語る「J-Talk Podcast」創設者。ツイッターアドレスは@JTalkPod