コラム:ディエゴ・フォルランはJリーグを救えるか?

久々の大物スター加入をどう受け止める
過去10年のこの国で、最大の大物選手獲得だと言っていいかもしれない。この積極的な補強はたちまちクラブの格を引き上げ、アジアのみならず世界に向けても日本サッカー界を代表するクラブと見なされることになる。

唯一の疑問点は、果たしてセレッソ大阪とJリーグは、ディエゴ・フォルランの加入を有効に活用することができるのかどうかということだ。

フォルラン自身が契約にサインした際の写真をツイートしてから15時間が経過した時点で、チームもリーグもそれぞれの公式ウェブサイトで何の正式発表も行っていない。世界中のメディアが先を競うようにこのニュースを取り上げる中で、公式発表は一番最後に出てくることになりそうだ。

2014年ワールドカップ(W杯)のスター候補が日本にやって来るというのに、これでは大きな機会の損失ではないだろうか。フォルランのツイートは、この原稿を書いている時点で12000回以上リツイートされている。彼のツイートがセレッソのツイッターアカウントにリンクされていれば、クラブは世界中で数千人の新たなファンを獲得し、世界に向けての地位を向上させることができたかもしれない。

だが残念ながら、問題点はまさにそこにある。セレッソ大阪も含め、いくつかのJリーグクラブは公式のツイッターアカウントを持っていないのだ。

日本の企業としては決して珍しいことではない。ソーシャルメディアの利用に関して、日本企業は欧米企業に数年間は後れを取っているのが現状だ。一刻も早く適応に努めるべきだし、適応しなければならない。

他のリーグがこのような大型移籍をどのように取り扱ってきたか、アメリカに目を向けてみればいい。MLS(メジャーリーグサッカー)のトロントFCは、イングランドのベテランFWジャーメイン・デフォーの獲得を発表したことで、シーズンチケットをほとんど売り切ってしまった。チームはデフォーの獲得を発表するTVコマーシャルまで作成し、その動画はネット上に広まることになった。セレッソ大阪が同じようなことをすると考えられるだろうか?

フォルランの加入は国外からの興味を高めることにもなるが、ここにもJリーグの問題点がある。セレッソはスタジアムへのアクセスマップを英語で提供しているが、これと同じことを行っているJリーグのクラブはわずかでしかない。首都圏の「ビッグクラブ」であるFC東京や横浜F・マリノスはこのようなガイダンスを提供していないし、横浜FMに至っては公式サイトにまったく英語版の存在していないクラブの一つだ。AFCチャンピオンズリーグが開幕するまでには、おそらくは何らかのものを用意することになるのだろうが。日本への外国人観光客は2013年に過去最高の1000万人を突破し、2020年東京オリンピックを控えてこの国のスポーツ文化への関心は高まっているが、旅行ガイドなどではJリーグにほとんど何も言及されていないことも多い。

Jリーグの試合のチケットを購入したい外国人がいたとしても、どうすればいいのだろうか? 英語でのチケット販売サービスを提供している日本のクラブは、セレッソのダービーライバルであるガンバ大阪だけだ。

賢明なメディア対応というものについて、ほかならぬフォルラン自身がJリーグのクラブに何かを教えてくれたと言えるかもしれない。契約のサインを発表した彼のツイートは、スペイン語、英語、日本語の3言語で書かれていた。ツイッターで400万人近いフォロワー(加えて、フェイスブックでも430万人のファン―J1からJ3までの、アカウントを持つ全クラブの合計をも上回る)を持つ2010年W杯MVPは、Jリーグの歴史の中でも、かつてのブラジルのレジェンド以来最大のアンバサダーとなってくれるかもしれない。

ジーコの銅像がカシマスタジアムの敷地内に建てられていることには十分な理由がある。鹿島アントラーズとしてJリーグ参入を目指すクラブにプロ意識を植え付けることを求められたブラジルの名手は、チームメートの食事法の改善からクラブの芝の管理についてのアドバイスに至るまで、ピッチ内外のあらゆる部分でその任務を完遂させた。

ジーコが日本においてクラブのマネジメントやレフェリーの質、ピッチ上のパフォーマンスの向上に成功したように、ディエゴ・フォルランはJリーグの外部に向けたマーケティングの向上を促してくれるかもしれない。これまでリーグと各クラブは、本拠地周辺のコミュニティーの中で、地元のファン層を築くことだけにほぼ専念してきた。20年間をかけて10チームから40チームへと規模を拡大する中で、この戦略は功を奏し、過去にはあり得なかったほどに国内におけるサッカーへの関心を高めてきた。

だが、そろそろ日本のクラブも内側だけでなく外側にも目を向けるべきときだ。2015年からの2ステージ制の導入を決定した際にリーグ関係者も認めていた通り、競争力のあるリーグはスター選手の力なくしては経営的に永遠に持続することはできない。皮肉にも、2011年にJリーグのクラブがアレッサンドロ・デル・ピエーロにオファーを出そうとしなかったのは、メディアからの不均衡な注目を恐れてのことだった。彼がシドニーFCと契約して以来、Aリーグではチケット売上げが急増し、ユニフォームは飛ぶように売れている。

セレッソがフォルランとともにその成功を再現することができたとすれば、おそらくより多くのクラブがその道に続こうとすることだろう。そうなればJリーグは、単にヨーロッパに選手を供給するだけのリーグではなく、競争力が高くて見応えがあり、国内外の優れた選手を集めた、ファンにとって親しみやすいリーグとして世界中に知られることになるかもしれない。

海外では日本人選手たちが個々に名を上げており、Jリーグに対する国外からの関心もかつてないほど高まっていると言えそうだ。あとはリーグとクラブが扉を開いて、新たなファンを受け入れることができるかどうかだ。


文/ダン・オロウィッツ
米国フィラデルフィア出身。Goal.com日本版所属のサッカージャーナリスト。
2006年より東京在住。メールはdan.orlowitz@goal.com、ツイッターアカウントは @aishiterutokyo