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コラム:不完全燃焼感をベラルーシ戦にぶつける長友佑都

今季インテルで開幕から2試合連続ゴールを挙げ、9月のセリエAでも2アシストと、絶好調を持続している長友佑都。香川真司(マンU)や吉田麻也(サウサンプトン)がクラブで出場機会を失い、岡崎慎司(マインツ)や長谷部誠(ニュルンベルク)がクラブの苦境にあえぐ中、彼はザックジャパン欧州組で勢いを感じさせる数少ない存在の1人である。それだけに今回の10月2連戦(11日=セルビア、15日=ベラルーシ)では目覚ましい働きが期待された。

本人も「僕らはワールドカップに出るってことで、プライドを持って戦わないといけないし、ここでセルビアやベラルーシに内容で劣ってるようじゃ、僕らもプライド的に傷つく。やっぱり日本はアジアナンバーワンだ、日本がブラジルへ行くならしょうがないって思われるような試合をしたいなと思いますね」とセルビア戦前も鼻息が荒かった。

この一戦は2011年1月にチェゼーナからインテルへ移籍した当時に面倒を見てもらった偉大な先輩であるデヤン・スタンコビッチの引退試合を兼ねているということで、長友の意気込みはひと際強かった。

 「彼とは2年半くらいプレーして、サッカー選手という以上に人間的に素晴らしかった。何もわからない僕をすごくサポートしてくれたし、自分がケガで苦しんでる時もチームのために行動を起こしていた。学ぶべきところは沢山ありました」と本人もしみじみ言う。だからこそ、日の丸を背負って堂々と戦う姿を焼きつけたかったのだろう。

ところが、セルビアはそんなに甘いチームではなかった。日本の生命線である香川・長友の左サイドを徹底マークして封じ、主導権を握ったのだ。前半25分くらいまでは攻め込まれる時間帯が続いた。その後日本のボール回しが改善され、少し落ち着きを取り戻したが、今度はイバノビッチ(チェルシー)ら屈強なDFにゴール前を封鎖される。長友も左サイドを突破してクロスを何本か入れるが、単純に跳ね返される状況が続く。0-2という結果を含めて、彼自身が思い描いた理想とはかけ離れたゲームになってしまった。

そのショックはあまりにも大きかったようで、試合後のミックスゾーンでは「ちょっと今日、ゆっくり考えたいんで、また整理して話します」とだけ言い残してバスに乗った。常日頃からメディアにきちんと受け答えする長友がそんな行動を取ることは滅多にない。それほど複雑な心境だったのだろう。

それでも一夜明けた練習時には落ち着きを取り戻し、日本の課題を冷静に分析した。

 「前半の前半は相手が相当高い位置を取ってきて、真司も相当低い位置に下がって守備をしないといけない状況だった。そうなるともう僕らは上がれないし、自分たちのサッカーなんかできない。体力も消耗してしまう。相手のカウンターが怖くてあまりにも後ろで余りすぎていて、リスクを冒して攻めることができなかった。もっとミドルとかシュートを打っていいんですよね。そういう選択肢があれば、相手も前に出ざるを得なくなる。そういう駆け引きを僕らはもっと覚えないといけない」と長友は語気を強めた。

確かにインテルの長友はサイドにいながらつねに虎視眈々とゴールを狙っている。「なぜ長友がそこにいるのか」と周囲を驚かせるような高いポジションを取って、得点に絡んでいるケースも少なくない。彼個人はそれだけの能力を持っているはず。そういう仕事をが日本代表で出せないのは、周りとの関係や距離感、カバーリングの問題などが大きい。

 「もっと動きの質と量を増やして、相手を惑わせないと引いている相手を崩すのは難しい」と香川も語っていたが、左のタテのラインでもっと意思統一を図ることも肝要だ。

左の生命線が輝かなければ、日本代表の勝利は遠のく。長友にはインテルのプレーを思い出して、闘志を振り絞って次のベラルーシ戦のピッチに立ってほしい。


文/元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代 表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。8月末に上梓した近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人と して韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。