コラム:負傷者数のデータで見るセリエA

コンディション維持が優勝争いの鍵に
先週の人気ラジオ番組の中で、ジャーナリスト・評論家のカルロ・ジェンタ氏と有名なFIFA公認代理人のエルネスト・ブロンゼッティ氏は、ミランのオーナーのシルヴィオ・ベルルスコーニがパトとカルロス・テベスの入れ替えを拒否したことが昨シーズンのセリエAの大きなポイントになったと指摘した。

以前のコラムでも述べたように、パトにはパリ・サンジェルマン(PSG)がオファーを準備していた。ミランはこのオファーに応じていれば、マンチェスター・シティからアルゼンチンの問題児を獲得した上で、1000万ユーロを余らせることができたはずだった。だが、長期にわたった交渉の末、結局取引は成立しなかった。

その後の展開は周知の通りだ。パトは相変わらず怪我に悩まされ、シティでマンチーニと和解したテベスはプレミアリーグ優勝に貢献。今では再び世界屈指のストライカーに戻ったと評価されている。

あるシーズンの筋書きがひとつの出来事だけで決まるとは思わないが、ここでパトの名前を挙げたことで、彼の負傷歴についてもう少し調べてみようという気になった。その中で、ユヴェントスのアスレチックトレーナーを務めるロベルト・サッシ氏が『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙に掲載した研究に出会うことができた。

サッシ氏によるデータは、これまであまり議論されてこなかったシンプルな事実を容赦なく指摘する。過去数シーズンの行方を何よりも大きく左右したのは、選手の負傷だったという点である。セリエAの各チームの選手が怪我のため欠場した延べ試合を数えると、2011-12シーズンのミランはなんと307試合。対して、そのシーズンの優勝チームであるユヴェントスはわずか44試合でしかない。

さらに過去へとさかのぼってみても、このデータの正しさは裏付けられる。2009-10シーズンと10-11シーズンのユヴェントスは、選手の怪我による欠場がそれぞれ延べ210試合と216試合。どちらもシーズンも彼らは7位という不振に終わっている。

2009-10シーズンを制したインテルは、延べ108試合の負傷欠場。2位と6位の終わったその後の2シーズンでは182試合と179試合であり、60%以上も怪我の影響が増大していることになる。

昨シーズンのユヴェントスには、欧州カップに出場しないというアドバンテージがあったことも確かだが、最終的にはミランとの試合数の差はわずか8試合にしかならなかった。フィジカルコンディションと怪我人の数の差は、これだけではやはり説明しきれない。

事実として、両クラブのフィジカル調整のメニューは大きく異なっている。サッシ氏によれば、ユヴェントスは昨シーズンから60~75分間の長距離走をベースとした有酸素運動を導入し、筋肉のケアに関しては等慣性負荷マシンと伸張性収縮を利用したトレーニングを用いているとのことだ。

トレーニングのプログラムはジュリウス・トゥス氏が考案した有名なバルセロナの方法論に基づいている。さらに、選手たちの食事や精神面にも十分な注意が払われる。

一方、ミランのフィジカル・アスレチックトレーニングは有名なミラン・ラボの密室の中で行われているが、主に一般的なトレーニングマシンの使用と厳密なデータ分析をベースにしていると言われる。このやり方は、ミランの前世代の選手たち(たとえばフランコ・バレージ、パオロ・マルディーニ、アレッサンドロ・コスタクルタ)の「長寿」の秘訣だったと考えられているが、普遍的に有効なシステムなのかどうかに関しては疑問も持ち上がり、ミラン・ラボには最近批判も向けられている。

セリエAでの怪我人の多さに影響している可能性があるもうひとつの要素は、イタリアのサッカー界全体を取り巻くフィジカル・メンタル両面でのプレッシャーの強さである。選手たちは週7日、1日24時間メディアからの視線にさらされており、その異常なプレッシャーの中で活躍を求められることは負傷を引き起こしかねない。

前述のパトは「慢性的負傷者」の典型例である。彼はまた、クラブオーナーのシルヴィオ・ベルルスコーニの娘との関係により常にメディアの好奇の目にさらされてきた選手でもあった。

ストレスが彼のフィジカルコンディションの問題にどれほど影響したのかを明確にするのは不可能だが、少なくとも我々が知っているのは、パトが2010年1月以来15回の負傷を経験してきたということだ。うち5回が昨シーズンのものである。イタリア国内でおそらく最低の状態だったサン・シーロの芝でプレーした影響もあるだろう。

人工芝と天然芝を混合させる形で、ミランとインテルは今年の夏に本拠地のピッチをどうにか手直しすることができた。シーズンを通して昨季よりも良い状態を維持し、怪我人が減少することが望まれるところだ。

だが、今シーズンのスタートもさほど順調なものではない。開幕からの2試合で、インテルは延べ14人が負傷欠場。ミランは13人が欠場した。

セリエAのクラブの中では、ジェノアがここまでまだ負傷者を一人も出していない唯一のクラブだ。その調子を維持することができれば、彼らにとって栄光のシーズンとなるかもしれない。データはそう示唆している。


文/チェーザレ・ポレンギ(Goal.comアジア版マネージングエディター @CesarePolenghi)