コラム:富者から貧者へ、カルチョの凋落

T・シウバとイブラの売却に象徴される危機
チアゴ・シウバのパリ・サンジェルマン移籍が決定し、ズラタン・イブラヒモビッチも時間の問題だ。セリエA最高クラスの選手2人がイタリアを去ることになった。この国のサッカー界は、欧州のエリートサッカーファミリーの中で、貧者の位置に転落しようとしているようだ。

ミランのアドリアーノ・ガッリアーニCEOは先月、イタリアはもはやサッカー界のトップクラスのタレントを引き付けることができないと繰り返し話していた。

かつて世界最高峰リーグの座を誇り、地球上で最も優れた選手たちを集めていたセリエAは、過去に例を見ないほどの大物選手の大流出を経験しようとしている。特に主要な選手だけに限ってみても、この2年間でアレクシス・サンチェス、サミュエル・エトー、ハビエル・パストーレ、マリオ・バロテッリなどが他国のリーグへと新天地を求めていった。

ガッリアーニも繰り返し言及したように、問題は経済面にある。現在のイタリアサッカー界が直面する危機には様々な理由があるとしても、特に重要なのは2つ。サポーターとスタジアムの問題だ。そして、その2つはお互いに関係し合っている。

ここ数年、セリエAでは観客数が急激に減少してしまった。対照的に、欧州の主要なライバル国のチームはチケット販売による収益を大幅に増加させてきた。イタリアのスタジアムが恥じ入りたくなるような新スタジアムの建設も少なからずその観客増加に寄与している。

"セリエAでは十分なチャンスが得られないため、若いイタリア人選手たちは好んで他国へ移籍するようになってしまっている"
欧州のビッグクラブの多くが自前のスタジアムを所有している意味は大きい。レストランやバー、ショップやホテルなど様々な併設施設による商業活動を通してもかなりの収益がもたらされるからだ。2週間に1度や2度ではなく、クラブは1週間を通して毎日利益をあげることができる。

もうひとつの問題点は、イタリアのクラブは若手選手の育成に十分な投資を行っておらず、その代償を支払わされているという部分にある。その結果として、育ってくるタレントの質もトップチームでプレーできるほど高いものではなく、結局セリエAのクラブは外部からの選手獲得に大金をつぎ込まなければならない。ここ数年のバルセロナが、彼らの誇る「ラ・マシア」の上質なユースアカデミーから引き上げた選手たちを中心としてチームを組み立てることで、どれだけの節約に成功したか考えてみるといい。

ユースチームに関しての規定が存在しないことで、将来有望な若い選手たちがほんのわずかなはした金で他国のクラブに奪われてしまうという現実もある(育成費に相当する補償金しか受け取ることができない)。

加えて、セリエAでは十分なチャンスが得られないため、若いイタリア人選手たちは好んで他国へ移籍するようになってしまっている。上位クラブは腹立たしいほどに若手選手の起用に消極的であり、より経験豊富な、力の確かめられた選手を連れてくる傾向にある。イタリアのトップリーグの選手の平均年齢が欧州のどの主要リーグより高いのもまったく不思議なことではない。


過去10年間、クラブはテレビ放映権料からの安定した収入に頼りきってしまい、それ以外の収益方法を十分に開拓してこなかったという事実もある。他国に比べると、イタリアのクラブはグッズ販売部門からの収入が少ない。オフィシャルユニフォームの価格はイングランドやフランスより高く、そのことが模造品の氾濫を生んできた。クラブとしては貴重な収入源を奪われているということになる。

ユヴェントスはイタリアの他のクラブにとってモデルとなるべき存在だ。自前のスタジアムを建設したことで利益をあげつつあるという点だけではなく、若いイタリア人選手たちの育成にも成功し、ここ数年移籍金や年俸による出費を大幅に抑制することができた。今年の夏の移籍市場で彼らが主役となっているのもその効果によるものだろう。

この国には他にも問題点が山積みだが、特に国外からの投資を制限するような税制の問題を挙げたい。結果として、中東の「族長」たちはセリエAへの投資を行わず、欧州他国のより魅力的な市場へと資金をつぎ込んでいる。イタリアで唯一外資系のオーナーを持つローマが、経済的な理由ではなく感情的な理由で買収されたのも偶然ではない。

イタリアのサッカーはずいぶん前から様々な問題に悩まされてきたが、それでもこの15年間、誰もそれを解決しようとはしてこなかった。いまやイタリアのリーグは二線級に転落しまっている。誰かが突然のように現れて、この国のスタジアムに、この国の育成組織に、そしてこの国の未来に投資をしてくれないだろうか、などと期待しつつ待っているだけだ。そして、そんな期待も日に日に小さなものとなりつつある。

文/ヴィットーリオ・カンパニーレ(Goal.comイタリア版チーフエディター)