コラム:イタリアの勝利を決めた5つの場面

波乱万丈の120分間の末、最後はPK戦でイングランドを撃破
日曜日の夜に行われた準々決勝では、イタリアが劇的なPK戦を制してイングランドに勝利。準決勝ではドイツと激突することになった。

だが、ほとんどの時間帯で試合を支配されながらも諦めようとしないイングランドに対して、アズーリは最後まで苦戦を強いられた。

イタリアに詳しいマーク・ドイルとイングランドに詳しいオリバー・プラットの2人が、勝敗を分けたポイントについて解説する。

5分:ジョンソンのシュートをブッフォンがセーブ


キエフで行われたEURO2012準々決勝は開始直後から目まぐるしい展開。イングランドは開始5分で早くも決定的なチャンスを作り出した。

後半アディショナルタイムのウェイン・ルーニーのオーバーヘッドキックもそうだったように、ゴール前にわずかな隙間が生まれてグレン・ジョンソンがチャンスを迎えたが、ややぎこちない形でのシュートとなってしまった。ラインまで6ヤードの至近距離から放たれたシュートは鋭さを欠き、イタリアのゴールを守るジャンルイジ・ブッフォンの見事なセーブに阻まれることになった。

惜しいゴールチャンスではあったが、チャンスそのものが試合の決定的な瞬間だったわけではない。重要なのはこれが、今大会で初めてイングランドが先制点を逃したことを象徴する場面だったということだ。

ゴールを奪うまでに時間がかかればかかるほど、ますますゴールの気配は薄くなっていく。フランスとの大会初戦で肉体的に厳しい試合を強いられたスティーブン・ジェラードとスコット・パーカーは、そのドネツクでの試合でも今回の試合でも同じように、後半にタックルやブロックを繰り返して体力を消耗することを余儀なくされた。結局ジェラードはジョーダン・ヘンダーソンと交代したが、影響力の強いジェラードの不在は試合が佳境に入るにつれて響くことになった。

イングランド代表のキャプテンは、この大会におけるチームのベストプレーヤーだった。彼が中盤の中央からボールを前へ運ぶプレーがなくなると、イングランドが試合の均衡を破るチャンスも消えていった。

文/オリバー・プラット

25分:バロテッリがチャンスを逃す


試合がPK戦にまでもつれた要因は、イタリアがゴール前でのチャンスを無駄にしてしまったことにある。その点でマリオ・バロテッリの責任は特に大きい。

マンチェスター・シティのFWは前半の半ば頃に先制点を決めていてもおかしくないはずだった。タイミングよくイングランド守備陣の裏へ走り込み、味方からの絶妙なロングボールをファーストタッチで足元にピタリと止めたところまでは完璧だった。

だがスペイン戦で絶好の決定機を逃してしまった時と同じように、今回も彼はそこから怠惰にも思えるような動きを見せる。バロテッリはジョー・ハートの頭上を抜く浮き球のシュートを放とうとしたが、体勢を整えるのにほんの一瞬時間をかけすぎてしまい、守備に戻ったジョン・テリーにブロックを許した。

PK戦ではイタリアの1本目を成功させ、ここぞという場面での冷静さと勇気を示したバロテッリだが、流れの中での緊迫感とゴール嗅覚の欠如はあいかわらず心配ではある。

文/マーク・ドイル

78分:ディアマンティにチャンスが与えられる


試合を通して何度か素晴らしいボールタッチを披露し、序盤にはバロテッリに絶妙なスルーパスを通す場面もあったが、ミランのMFモントリーヴォはやはり「トレクアルティスタ」ではないことがこの試合でも浮き彫りになった。もちろん、彼が悪いわけではない。その場所は彼のポジションではないというだけのことだ。

一方、後半残り10分あまりとなったところで投入されたアレッサンドロ・ディアマンティは、「トップ下」でプレーできる選手であることをあらためて証明。非常に波の激しいタイプの選手ではあるが、運動量の豊富さと創造性に関しては確かなものを持っている。ただし、延長戦でポストを叩いた彼のクロスは、間違いなくただのクロスだったが。

アントニオ・ノチェリーノと同じく、途中出場したディアマンティはエネルギーを存分に発揮し、やや停滞しつつあった試合を活性化させた。その二人がともにPK戦でキッカーに名乗りを上げ、シュートを成功させたのも偶然ではない。最後はディマンティがストライカーとしての名に恥じないシュートを決め、イタリアはこの試合の内容にふさわしい結果を手にすることができた。

文/マーク・ドイル

PK戦:ピルロが流れを変える


勇気を見せたという点では、アンドレア・ピルロのPKを取り上げないわけにはいかない。笑ってしまうほどに冷静で、かつ勝負の行方を大きく左右したキックだった。

リッカルド・モントリーヴォがアズーリの2本目のPKを失敗し、ルーニーが力強くシュートを決めてイングランドが2-1でリードすると、PK戦の展開はロイ・ホジソンのチームの有利に大きく傾いたかに見えた。スポットへと向かうアンドレア・ピルロは、この3本目を冷静に決めねばならないことを十分に理解していた。プレッシャーのかかる状況だった。

だが、彼のキックにプレッシャーなどは微塵も感じられなかった。ピルロが何でもないかのようにふわりと蹴り上げたボールはゴールの中央へと収まり、右へ飛んでボールを止めようとした哀れなハートはただ見送ることしかできなかった。PKを蹴る際にこれほどの度胸を見せたのは、おそらく欧州選手権の歴史の中でも1976年大会のチェコ代表アントニン・パネンカ以来だろう。

このシュートで試合が決まったわけではないが、影響はきわめて大きかった。イタリアの選手たちは彼の豪胆さによって明らかに勇気付けられたようだった。アントニオ・ノチェリーノは笑顔を隠しきれない様子で、ピルロの後押しを受けた彼が4本目のPKを成功させるのも当然だと感じられた。

文/マーク・ドイル

PK戦:ヤングとコールの失敗


結果は運命に定められていたかのようだった。ボールはポストを叩き、GKのセーブに救われ、幻のゴールを決められる。それがEURO2012におけるイングランドだった。

イングランドが幸運であったことに疑いの余地はない。それでも、チャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたチェルシーがそうであったように、スリーライオンズも今はまだ自分たちの時間ではないだけだと信じているかのように見えた。

結局、幸運はどこかで見たことのあるような形で尽き果ててしまった。モントリーヴォのシュートが枠を外れた時には、イングランドが過去のPK戦の悪夢を払拭できるかに見えたのだが、大会を通してなぜか自信なさげな様子が続いていたアシュリー・ヤングがPKをクロスバーに直撃させてしまう。さらにアシュリ・コールの弱いシュートを読み切ったブッフォンが危なげなくボールを腕の中に収めた。

試合を支配していたイタリアは、勝利にふさわしいチームだった。過去の大会でPKを失敗したワドル、ピアース、サウスゲート、バティ、ベッカムらに続いて、ヤングとコールもイングランドの不名誉な殿堂に名を連ねる結果となった。

文/オリバー・プラット