坂田大輔・連載コラム「ギリシャ戦記」(5):遅すぎるということはない

いまだピークの過程
ギリシャに来て、2カ月が過ぎ…

突然ですが、この間の試合は無観客試合でした。

スタジアムに近づくと、警察官がたくさんいて、ファンは近寄れないのかなと思ったら、無観客試合でした。以前に話した暴動後、初のホームゲームだったので、観客を入れなかったんでしょうね。海外ではよくあることだけど、なんだか練習試合みたいでした。それでも、メインスタンドには30人くらいファンが入っていましたけどね(笑)。

最近は、何があっても「ああ、そうなんだ」という具合に、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなりました。ギリシャに来てから、本当に驚く事ばかりでしたから。

ギリシャに入ったのが、1月17、18日頃。ちょうど2カ月くらいになります。

去年のシーズン終盤、マリノスから契約更新がないことを聞かされたときにも、冷静に受け止めました。それより、マツさん(松田直樹)やコージ(山瀬功治)が戦力外になったことに驚いたほど。自分のことは、新聞に「クビ」と出たのを見て「寂しいなあ」と思ったり、という感じで。

海外に行くというのは、あまり現実的ではありませんでした。代理人の人にチームを探してもらっていましたが、その中に正式なものではないけど、ギリシャのチームがありました。

J1か、海外でプレーすることを考え、住む場所もあるので、妻に相談しました。話をしていると、妻が「海外に行きなよ。絶対行った方が良い」と言ってくれたんです。何を話したかは覚えていないけど、たぶん体から「行きたい」というオーラが出ていたと思う(笑)。そのうちに12月下旬に入り、旅行先の韓国で、ギリシャから正式な話が来たと聞きました。「行きます」と答えました。

日本人選手が多いドイツのような国に行くわけではなく、ギリシャはまったく未知の世界。大悟(編注:小林大悟。2010年、テッサロニキに本拠を置くイラクリスに所属。年代別日本代表で、坂田とともにプレー)に電話をしたら、「お勧めだ」と言ってくれました。アリスというチーム、サポーターを含めて、そう言ってくれたんだと思います。当時、大悟はケガをしていたのに、いろいろと聞いてしまい悪いことをしたのですが…。「やりがいがあるよ」というのが、大悟の答えでした。

海外でのプレーは、ここ何年間か考えたこともありませんでした。ワールドユース選手権(編注:03年UAE大会。坂田は大会最多得点を記録)の頃から、海外からの話をもらって考えていた時期がありました。でも当時は、マリノスというチャンピオンチームで成長できるだろうと考えていた。そのうち話は来なくなり、海外挑戦は選択肢から消えていたのですが…。

今の段階での海外挑戦は、不安の方が大きかった。若い頃なら「とりあえず行っちゃえ」でいいんだろうけど、日本で10年もプロとしてやってきて、家族も持って…、となると難しい部分の方が大きかった。

そういう気持ちでしたが、「アリスにとっては何人かの候補の中の一人で、話はなくなるかもしれない」と聞かされていたオファーが正式なものとしてやってきた。ヨーロッパリーグ(EL)に出るということも聞いて、名門クラブなんだろうとも思った。「次はマンチェスター・シティとやるんだ」って…!

不安はあったけど、妻が背中を押してくれたのは、大きかった。でも、いざギリシャの空港に到着してからも、読めもしない文字を見て「うわー」。周りを見てもやたら大男が多くて、こんなのばかりなのかなと不安になったり。

サッカー選手として、人間として成長を


それでも、本当に来て良かったという気持ちしかありません。実際に、成長しているかは分からない。こちらは局面でのぶつかり合いは激しいけど、そのほかの量の部分など練習は日本の方がきついと思うし。

マリノスでは年齢も上の方でしたが、こちらでは関係なし。敬語もないので、年下から「サカータ」と呼ばれてもなんとも思わない。日本での先輩へのリスペクトというものは、気持ちの良いものではあるんですけどね。それに最年長としては37歳のブラジル人がいる。ロナウドという選手で、京都でプレーしていたと話していましたが…。

環境の変化は大きい。サッカーに打ち込むしかない環境で、妻がいないので栄養の問題はあるけど、睡眠を取ったり、風呂から出てストレッチなど、サッカーのために費やす時間が確実に増えました。最初はテレビもなかったし。

オレは今、サッカー人生の中で、ピークと言われる年齢の過程にあると思います。ポジションがMFに変わり、今までと違うスタイルも学んでいます。ぶつかり合いの激しさにも慣れてきたし、体の使い方一つで対処もできる。選手として、この国でプレーしているのは良いことだと思います。

一人の人間の人生としても、すべてが良い経験になっています。まさか、海外での挑戦が、こんなに良いものだとは思わなかった。来てみないと分からないことは、たくさんありました。でもサッカーをしに来ているんだから、サッカーでしっかり活躍しないと。

一時は無理かと思ったEL出場圏内も、可能性が見えてきました。残り3試合。次の次には、出場権を争う相手との直接対決もあります。そことは現在勝ち点5差ですが、勝てば2差に縮められる。

何が起こるか、分からない。チャンスを逃さないようにしないと。


~プロフィール~
坂田大輔(さかた・だいすけ)
1983年1月16日生まれ、神奈川県出身。2001年に横浜F・マリノスユースからトップチームへ昇格。プロ初年度から出場するなど、活躍した。03年にはU-20日本代表としてUAEで開かれたワールドユース選手権に出場し、得点王に輝いている。06年にはイビチャ・オシム監督の下、フル代表としてキャップも刻んだ。J1通算247試合46得点の記録を残し、今年1月にギリシャ・スーパーリーグのアリス・テッサロニキに移籍。オフィシャルブログはhttp://ameblo.jp/guapoblog/