マドリーの背番号7は、多くの忘れることができない選手たちに引き継がれてきた。マドリーのスタジアムで記憶と記録に残る男たちによってである。そういった覚悟を胸に、時間を超越した歴史の中に名を刻むべく、ユニフォームに名前を記してきた。
コパ、アマーロ、“フアニート”、ブトラゲーニョ…スペインの首都を本拠とするチームの基盤に、背番号7を着けた者として名を記してきた選手たちだ。そしてもちろん、私たちの思い出の中でマドリーの歴史の最高の選手としていき続ける選手の名前も加えられる。そう、ラウール・ゴンサレスである。
育ってきたクラブを離れ、ラウールはキャリアの晩年をドイツで過ごすことを選んだ。すでにシャルケのファンには、トレードマークであるチップキックでゴールを決めて、いまだ輝きは色あせていないことを証明した。ボックスの外から完璧な力加減で浮かされたボールは、バイエルン・ミュンヘンのGKの頭上をふわりと越えてネットを揺らした
ラウールはシャルケでも背番号7を着け続けているが、マドリーでのその番号は空いたままだ。

ラウールの旅立ちにより、スペインの首都には憂鬱な雰囲気が漂っており、ある者はマドリスモのシンボルを永久なものとするために、偉大なるキャプテンの背番号を永久欠番とすべきだと声を上げた。しかし、リーガでは1から25までの背番号を使用せねばならず、いかに歴史的なシンボルでさえ、欠番にすることは許されない。誰かが来季にはラウールの背番号を引き継がねばならず、そのためにここで一つの疑問が浮かび上がってくる。誰がレアル・マドリーの背番号7を背負うべきなのか、と。
もちろん、最も有力な継承者はいる。少なくとも個性という意味で、ラウールと正反対の位置にいる選手、クリスティアーノ・ロナウドである。
ラウールが謙虚さ、全般的に紳士的な振る舞いなどで称賛されるのに対して、クリスティアーノは派手さ、エゴの強さ、傲慢さで知られる。
マンチェスター・ユナイテッドの背番号7から歴史あるレアル・マドリーの9番へと着替えたときには、欧州中のメディアのヘッドラインを飾った。CR7からCR9となって歩みだしたのだ。だが今やラウールが背番号7を置き土産にしており、クリスティアーノは彼のブランドを復活させ、ジョゼ・モウリーニョ新監督の下でかつてのラウール王朝から自身がけん引する新時代へとマドリーを移行させようとしている。
昔ながらのマドリディスタの中には、この移行をクラブのキャラクターへの侮辱だと受け止める者もいるかもしれない。背番号7は昨シーズンまで、地元で育ち、フットボールの生きる伝説であった男のものだったからだ。それが銀河系軍団の中でも一際輝く、世界で最も高価な選手の手へと渡るのだ。他の契約や広告、モデルとなることでメガクラスの稼ぎを挙げ、マドリーがフットボールで生み出す金に匹敵するほどの男の手に、である。
しかし、彼を好むのであれ、嫌うのであれ、特別な選手であることは間違いない。ラウールのように、人生で一度あえるかどうか、という才能だ。個性という面ではラウールの対極にいるかもしれないが、すでに見せてきているように、フットボールの歴史の偉大な選手たち以上の輝きを放つ可能性を秘めている。
反対する声もあるかもしれないが、番号は番号に過ぎず、選手がどのように歴史に名を刻むかに、それほどの重要性を担うわけではない。おそらく新たなシンボルを据えることと、過去の選手たちの世代を乗り越えていくことこそが、レアル・マドリーが新たなページをめくり、もう一度欧州制覇のためにどんなアイデンティティーが欠けているのか思い出すために必要なのだ。
実際、最終的にC・ロナウドが白いユニフォームで自身のブランドを取り戻し、再びCR7と名乗るなら、ラウールのスピリットは違った方法で生きていくことになる。その存在がクリスティアーノにチームを背負う責任感を芽生えさせ、成熟度を増すようにさせ、一個人と選手としての規律を持たせることになる。、背番号7のスピリットが、C・ロナウドがチームをけん引するべく、たとえば攻守にわたって奮闘するようにさせるのだ。輝かしい年月の中、ラウールがしてきたように。
文/サイラス・C・マレク