移籍コラム:マンチーニ、ゼニト就任は復帰への好機か

インテルは25億円の呪縛から逃れるチャンス?
リーグ3連覇を果たした監督ながら、インテルに解雇されて1年と2カ月。ロベルト・マンチーニに、一昨季のUEFAカップ王者ゼニト・サンクトペテルブルクが関心を示しているという。ゼニトはベルギー代表就任が決まっていたディック・アドフォカート監督を成績不振を理由に解任したが、その後任候補に見立てているそうだ。

ベンチを離れて2シーズン目になるマンチーニにとって、決して悪い話ではない。引退後すぐに指導者の道を歩み始めた彼にとって、ピッチこそが生きる場所だからだ。ともすれば陰うつな印象すら与えるマンチーニは、コメンテーターなどに向いておらず、解任後は表舞台にはほとんど出ていない。本人も事あるごとに現場復帰への希望を明かしている。

現役時代から好むプレミアリーグへの挑戦を願うマンチーニだが、その夢はいまだ実現していない。インテルで成功した以上、彼が大きな野望を抱いているのは当然だ。だが、ゼニトは名門とは言えないものの、UEFAカップ優勝で脚光を浴びたチームである。何より、EURO2008での代表チームの躍進以降、ロシアは新興勢力のひとつとして注目されている国だ。そのロシアでリスタートを切ることは、刺激的なチャレンジにならないだろうか。

さらにイタリア・メディアの報道によれば、ゼニトは“イタリア化”を目指しているという。実際、すでにトリノからMFアレッサンドロ・ロジーナを獲得しており、一部ではインテルFWマリオ・バロテッリへの関心も報じられているほどだ。現実的にバロテッリの移籍はあり得ないだろうが、イタリア人にとって多少なりともやりやすい環境にあると言えるだろう。

問題となるのは、ロシア代表のフース・ヒディンク監督のアシスタントで、ゼニトのフットボール・ディレクターに就任したばかりのコルネエフ。アドフォカートは「ロジーナは欲しくなかった」と語るなど、補強に自分の意見が反映されなかったと不満を露わにし、これが解任につながったと見られている。コルネエフがチーム作りの主導権を握っているとも言われ、頑固者のマンチーニにとっても、コルネエフは「目の上のたんこぶ」になりかねない。

いずれにしても、インテルは注意深く進展を見守っているだろう。マンチーニとインテルの契約はまだ3年間残っている。年俸は税抜きで600万ユーロ(約8億2000万円)。合計約25億円を払わなくてすむのなら、多少の補償金を支払ってでも、インテルとしてはマンチーニにゼニトへ行って欲しいと願っているのではないだろうか。

文/中村大晃