魅力満載のJ3がいよいよ開幕!気になる優勝の本命は?U23チームは波乱を巻き起こせるか/コラム

明治安田生命J3リーグが3月11日に開幕する。今季のJ3はどうなるのか?栃木SCを中心に取材するライター・鈴木康浩が、優勝争いの本命、対抗、穴、そして波乱をもたらすU-23チームの見どころを、余すところなく紹介する。

昨季の栃木SCはシーズンのラスト2試合を「1勝1分け」にできればJ3優勝を手にできる立場だったが、クリアできなかった。

2016明治安田生命J3リーグ第29節(全30節)AC長野パルセイロ戦、後半アディショナルタイムにまさかの失点を喫して敗れた試合直後、選手たちは茫然(ぼうぜん)自失、ピッチ上でうなだれた。この結果、大分トリニータに逆転優勝を許し、その後に回ったJ2・J3入れ替え戦では、メンタル的に落ちた状況から這い上がれず、J2ツエーゲン金沢に抵抗むなしく敗れ去り、至上命令だった1年でのJ2復帰を逃した。

「足りなかったものを埋めないといけない。あれだけ追い込んでいた練習をもっと厳しくやればいいのか」

ある主力選手はそう振り返るが、はっきりとした答えはまだ見つかっていない。昨季の二の舞を避けるべく、あのラスト2試合を1勝1分け以上で乗り切れるだけの何かを身につけるための戦いがこれから始まる――。それが、僕が番記者として寄り添う栃木の、今季の意識レベルだ。当然、優勝争いに加わる1つと予想する。

対抗は、J2から降格してきたギラヴァンツ北九州だ。ざっと戦力を見れば、昨季J2で16ゴールを奪ったエース原一樹は移籍したものの、それでも前線には小松塁、池元友樹、平井将生ら、過去にJ1やJ2で二桁ゴールを奪った実績がある選手たちが居並ぶ。J3ならば間違いなくゴールを量産できると見るのが自然だろう。一方、昨季のJ2で64失点を喫した守備の再構築はどうか。J3はJ2とは異なり、失点を恐れずに攻撃に特化するようなチームが多いだけに、去年の序盤の栃木のように、チームに少しでもJ3を甘く見る雰囲気があると防ぐのは難しいかもしれない。ただ、リーグ戦を戦う中でJ3の環境に慣れれば、それもおのずとクリアされるはずだ。徐々に地力を発揮して少しずつ下位との勝点差を広げていく可能性は高い。

この優勝争いに加わりそうなのは、昨季のJ3で3位に終わった長野だ。長野は近年、J3で2位、3位、3位と、堅守をベースに組織的で安定した戦いを見せており、今季も上位争いに加わるのは間違いない。今季は、昨夏に加入して存在感を発揮したボランチの橋本英郎が抜けた後釜として、またもビッグネーム、元日本代表の明神智和の獲得に成功するなどクラブの力、資金力もJ3トップクラス。長野の課題は昨季の30試合で33ゴールに終わった得点力をどう引き上げるかだが、かつて長野のライバル松本山雅FCで活躍し、昨季は京都サンガF.C.でプレーした岩沼俊介は長野の前線に新たなスピードと技巧を加える選手として期待できる。

だが、それ以上に大きな補強に見えるのは、すでにJ3界隈で“智将”の呼び声高い浅野哲也監督を招へいしたことだ。昨季まで2年間率いた鹿児島ユナイテッドFCでは、JFLから昇格させると、昨季のJ3で一時は首位争いを牽引し、最終的に5位に導いた。攻守の切り替えが非常に速く、かつ、攻守に絶妙なバランスを保ちつつ攻撃時にはわき出るように前に人数を掛けられるサッカーを構築した。今オフ、J2降格に見舞われた古巣・名古屋グランパスの新指揮官に適任だと見ていたが、智将は長野が持っていった。J3でくすぶる長野にとって歴史的転換点となる可能性を秘める勝負手とみる。

この3チームが優勝争いの本命となり、そのほかに、三浦泰年監督率いる鹿児島、昨季まで間瀬秀一監督(現愛媛FC監督)が率いてクラブ史上初めて4位に食い込んだブラウブリッツ秋田、2014年以来のJ2復帰をもくろむカターレ富山が上位争いの顔ぶれになるはずである。

だが、J3の見どころは上位争いだけにあらず。リーグの色として注目ポイントに挙げたいのは、降格がない現状がその色を強くさせるのか、3点奪われたら4点取り返せ!とばかりに攻撃比重を高めて戦うチームが実に多いことだ。見る者を飽きさせないリーグなのである。FC琉球、藤枝MYFC、グルージャ盛岡、Y.S.C.C.横浜がその代表格。総じて得点数も多いが失点数もべらぼうに多い。賛否はあるものの、失点のリスクを恐れずにゴールへ向かう、ボールを握りながら隙があればすかさず縦パスを入れようとする姿勢は爽快そのもの。J3の予備知識がない観戦者の腰をもクッと浮かせ、気づけば前のめりにさせるだろう。

その中で特筆したいのは、キム・ジョンソン監督が率いて2年目となる琉球だ。昨季序盤は首位に踊り出ながら主力にケガ人が相次いで失速。最終的に8位に終わったが、ケガ人が戻った最終盤10戦は5勝3分け2敗と右肩上がりでシーズンを終えた。今季は序盤から上位を堅持する可能性がある。昨季のキャプテン田中恵太はJ2水戸ホーリーホックに引き抜かれたが、そのほかにも、テクニカルな富所悠、コンダクター田辺圭佑、右サイドバックから個を発揮してゴールに迫れる藤澤典隆らはJ2でも通用する力の持ち主とみる。そして今季のエース的存在の富樫佑太は異色。12日の開幕戦で琉球と対峙する栃木の横山雄次監督は彼を「今季のブレイク候補」として警戒を強めている。今年1月に行われたDAZNニューイヤーカップでのJ1北海道コンサドーレ札幌戦では、ゴール前の狭いスペースをドリブルで強引にこじ開け、豪快なゴールを演出した。大物感漂わせるそのプレーにぜひ注目したい。

最後にもう1つ、別角度からJ3の見どころを。

これもJ3の特色であり、かつリーグの行方を混沌とさせているのが、FC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪が昨季から参戦させるU-23チームの存在だ。昨季のG大阪U-23はジュニアユース時代から長い間ともにプレーしてきたまとまりのある選手たちを、「東京五輪の星」とされる堂安律がエースとして牽引し、終盤戦で無双した。当時、リーグ戦17戦無敗を誇った首位栃木は、このG大阪U-23と対峙し、堂安律のビューティフルゴールの前に完敗。最終盤に失速するキッカケを作ってしまった。あのチームはもはやJ3レベルではなかった……。

このG大阪U-23も同様だが、昨季はU-23チームのいずれもがシーズン終盤になってしり上がりに調子を上げた。昨季の序盤戦は、トップチームの選手たちが急きょ参戦する“調整の場”として利用された感もあったU-23チームだが、シーズン終盤になって3チームとも徐々にメンバーを固定化、本来の目的である若手育成に重きが置かれると、比例するようにチーム力を上げてシーズンを終えた。今季もこの流れは継続する模様で、C大阪はプレシーズンに何とU-23単独のキャンプを実施するなど徹底している。G大阪も今季、トップチームとU-23の間で選手の入れ替えを実施しないと表明。今季はそれぞれのU-23がある意味で“本気で”J3に挑む元年となるかもしれない。

ちなみに、今季のG大阪U-23を率いるのは宮本恒靖である。宮本と同様、SC相模原の安永聡太郎、ガイナーレ鳥取の森岡隆三など、現役時代に日本代表や海外のトップリーグでプレーした経験がある世代の選手たちが引退し、指導者としてプロのトップチームで指揮を執り始めるのも、多くがJ3から。新世代の若手指導者たちの新たな船出を見守るのも、J3の楽しみ方の1つである。

文=鈴木康浩

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