「ドローOK」が落とし穴 挑戦者・愛媛をしのぐ積極性が求められるセレッソ大阪

11月23日の2015年J2最終節まで熾烈を極めたJ1昇格争いだったが、すでに1年でのJ1復帰とJ2優勝を決めていた大宮アルディージャに続き、自動昇格圏の2位の座を射止めたのはジュビロ磐田だった。磐田と勝ち点82で並びながら得失点差で下回って3位に甘んじたアビスパ福岡、シーズン終盤にペースダウンした4位・セレッソ大阪、逆に尻上がりに調子を上げた5位・愛媛FCと6位・Vファーレン長崎の4チームが、ラスト1枠を懸けて、J1昇格プレーオフに挑むことになった。

29日のプレーオフ準決勝は福岡対長崎、セレッソ対愛媛のカード。年間順位上位クラブのホームで試合が行われ、上位クラブは引き分け以上で12月6日の決勝戦(大阪・長居)にコマを進められる。  

だが、過去の昇格クラブを見ると、2012年は大分トリニータ、2013年は徳島ヴォルティス、2014年はモンテディオ山形といずれも6位が最終切符を手にしている。昨年を振り返っても、準決勝では後半ロスタイムの守護神・山岸範宏のミラクルゴールで4位・磐田が山形に敗れる波乱が起き、山形はその勢いで3位・ジェフユナイテッド千葉を撃破した。勝利しかない下位クラブのチャレンジャー精神とアグレッシブさは、やはり凄まじいものがあるのだ。

「僕たちは次の愛媛との準決勝で引き分けでもOKだけど、『勝たなくてもいい』って発想になったら絶対にダメ。点を取りにいかななければ負けるし、90分間受け身になってはいけない」とセレッソのベテランMF橋本英郎も強調していたが、そういう強い意識を持ち続けられるかどうかが上位クラブにとってのカギ。とりわけ、終盤勝ち点を取りこぼしてきたセレッソは、今こそメンタル面をしっかり立て直して戦うことが肝要だ。  

11月14日の第41節・長崎戦で苦杯を喫した後、パウロ・アウトゥオリ監督を解任し、大熊清強化部長を暫定監督に就任させるという大ナタを振るったことは、今の彼らにプラスに働いている。23日の最終節・東京ヴェルディ戦でも、指揮官のFC東京時代の秘蔵っ子である茂庭照幸がセットプレーから2点をゲット。守備面でも大いに奮闘したベテランDFから他の選手たちも刺激を受け、チーム全体から躍動感が見て取れた。

「僕がセレッソに復帰したのは、大熊さんの男気があったから。大熊さんを男にしたいという気持ちは他の選手より強い」と殊勲の茂庭は興奮冷めやらぬ様子で語っていたが、そういうラッキーボーイが出てきたのは前向きな要素。雰囲気もガラリと変わった様子だ。

「大熊さんは前の監督のやってきたことをそのまま引き継ぐ形で、戦術や戦い方はそこまで変更はないけど、戦う気持ちはより強く求められている」とキャプテン・山口蛍も話したが、もともとセレッソは個人能力が高い集団だけに、やはり貪欲に勝利を狙う積極性を持つことが重要になってくる。大熊監督はFC東京時代もユース代表監督時代もそういう部分に誰よりも強くこだわってきた。指揮官が闘争本能を確実に注入すると同時に、スキが生まれがちだった守備を固め、数多くの攻撃チャンスを決めきれるように仕向けていけば、愛媛戦はいい戦いができるに違いない。

とはいえ、愛媛もそう簡単には勝利をプレゼントしてはくれないだろう。指揮を執る木山隆之監督は千葉を率いていた2012年のプレーオフ決勝で残り5分足らずで大分に敗れるという苦い経験をしているだけに、その教訓を生かしてくるはずだ。ある意味、プレーオフの戦い方を誰よりも知っているのが木山監督と言っても過言ではない。そのあたりはセレッソとしても警戒を払うべきだ。

今季の愛媛はシーズン途中の秋山大地のセレッソ復帰、小島秀仁や内田健太のレンタル加入など戦力の入れ替えがあったが、GK児玉剛、DF西岡大輝、林堂眞、玉林睦実、前線の近藤貴司、河原和寿、瀬沼優司ら中核メンバー軸に、安定感ある戦いを続けてきた。  

チームで2ケタ得点を挙げているのは河原1人で、総得点も47とセレッソより10少ないが、総失点39という手堅い守りと試合巧者ぶりを遺憾なく発揮して、初のプレーオフ挑戦権を手に入れた。昨季松本山雅でJ1昇格を経験している玉林も「今季の愛媛はプレーオフ参戦が目標。みんな一丸となって戦っている」と語ったことがあり、その結束力と泥臭く上を目指す姿勢というのは傑出したものがある。一発勝負を制するポイントは技術や戦術以上に、チームとしての底力だろう。それを木山監督がどのように引き出させるかが注目点と言える。

この試合の勝者が決勝の舞台に立つが、順当であれば、福岡対セレッソという3位・4位対決になる可能性が高い。最近12試合無敗・8連勝でリーグ戦を終えた福岡は攻守両面でバランスの取れたチーム。前線は城後寿、中原貴之、ウェリントン、酒井宣福とどこからでも点を取れるタレントが揃っているし、守備陣も濱田水輝や中村北斗らJ1経験豊富な面々が陣取る。彼らが自力に勝る集団なのは間違いないだけに、セレッソとしては愛媛戦で次につながるようないい内容の勝ち方を見せなければならない。そのためにも、課題である流れの中からのゴールは必須。それを玉田圭司や田代有三、楠神順平らアタッカー陣が奪ってくれれば最高だ。

まず注目すべきなのは、29日の2試合。最後に笑うのはどのチームか。大勝負の行方をしっかりと見守りたい。


文/元川悦子 1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」 (カンゼン刊)がある。