コラム:再考されるべき「ベストメンバー規定」

神戸への処分は議論の呼び水となるか
Jリーグは18日に開催された理事会において、J1神戸が「リーグ規約第42条の補足基準第1条を満たしておらず、同規約第42条に定められている『最強チームによる試合参加』に違反した」として、けん責処分と1,000万円の制裁金を科すと決定した。

いわゆる「ベストメンバー規定」に引っかかったということである。

この「ベストメンバー規定」は、「Jクラブは、その時点における最強のチーム(ベストメンバー)をもって前条の試合に臨まなければならない」とするJリーグ規約の第42条と、その詳細を示した補足基準によって定められたもの。具体的には「先発メンバーの11人は、当該試合直前のリーグ戦5試合の内、1試合以上先発メンバーとして出場した選手を6人以上含まなければならない」とされている。代表選出や負傷欠場による例外とともに、違反時の罰則も決められている。

今回の神戸は、6月27日に行われたヤマザキナビスコカップ予選リーグ第7節の横浜FM戦において、6人以上が必要となる「レギュラー」を4人しか起用せず、基準を満たしていなかったとして処分を受けた。処分がこの時期となったのは、当該試合後のリーグ戦5試合(J1第16節〜第20節)までを見て出場選手が「ベストメンバー」だったかをチェックしたためだったが、基準に満たなかったメンバーのうち、その後「レギュラー」と認められたのは都倉賢のみで、6人には届かなかった。

過去に同様の処分を受けたのは、2009年の広島のケースがある。今回同様ナビスコカップでのことで、直近のリーグ戦から10人を入れ替えて試合に臨んだ。これが初の適用で1,000万円の制裁金を命じられることになった。

今回の神戸は、決められているルールを守らなかったわけであるから、処分をされるのは当然のことである。それは神戸側も受け入れている。しかし、このルール自体の存続については、あらためて議論されるべき問題であると感じられる。

あいまいな「ベストメンバー」を規約として決めることで、ルールとして機能させてきたが、これはチームやチーム支えるサポーターからすれば厄介なものでしかない。中2〜3日での戦いが続くような時は、どうしてもメンバーを入れ替えて乗り越えたい場合もあるし、今回の神戸のように、予選リーグでの敗退が決まっていて、普段出場機会の少ない選手を試したいと思うのは当然のこと。出番の少ない選手にとってはこういう試合はアピールの場として貴重な舞台となる。「ベスト」な戦いをするには、選手の能力だけでなくモチベーションやコンディションも大きく影響するが、規約はそこまで考慮されているわけではないのだから、「ベスト」として正しいのかどうかは疑問が残る。また、この頃の神戸は安達亮ヘッドコーチが監督代行を務めた後、西野朗監督が就任したというチームの移行期だったのだが、指揮官が違えば起用される選手が違ってくるというのも当たり前であるから、「ベストメンバー」の設定もおかしくなってしまう。当該試合で3ー2と勝利を挙げていながら、「あなたたちはレギュラー、ベストメンバーではありません」とリーグから宣告される選手に対して失礼だとも感じられる。

「ベストメンバー規定」は、無気力試合やtoto絡みの不正や八百長試合が起こらないよう、またスポンサーへの配慮もあって制定されたものであり、そのことが理解できないわけではない。ただ、この規程が別のおもしろさを消してしまっているのも事実である。考え方によっては、ナビスコカップに関してはスポンサーにとってもこのルールが大会意義を邪魔しているのではないかとさえ思えてくる。さまざまな状況が重なってのことであり、スポンサー側からすれば本意ではないのかもしれないが、現状のナビスコカップは若手の登竜門としての一面があり、予選リーグはなかなかトップチームで出場できない選手の成長を見ることができる公式戦として貴重な機会となっている。それは紛れもない事実で、それを楽しみにしているサポーターも少なくない。そんな中、「ニューヒーロー賞」も用意されている大会で、ルールによって若手の出場が制限されるというのは残念であり、もったいないとも感じられる。

仮に「ベストメンバー規定」がなくなったとしても、若手の出場機会が増えるのはシーズンを通して数試合レベルにしかならないと予想される。それでもその数試合で人生を変えるようなプレーをする選手が出てくる可能性もあるし、長い目で見たチームづくり、選手の成長を考えればメリットはあるはずだ。今回の神戸への処分が、以前からあった「ベストメンバー」についての議論を再び活性化させるものになると期待したい。


文/永田 淳
1980年生まれのサッカーライター。Jリーグ登録フリーランス。Goal.com日本語版Deputy Editor。関西のJリーグを中心にあらゆるカテゴリーのサッカーを取材し、大阪のクラブでコーチも務める。JFA公認B級ライセンス保持。ツイッターアカウントは @j_nagata