ドイツで最も騒々しいFWヴァーグナーは最高の点取り屋か、ただのビッグマウスか/コラム

彼は、思っていることをすべて口に出す。だが、ブンデスリーガでコンスタントに得点を挙げるようになって初めて、人は彼の発言にまともに耳を傾けるようになった。ヴァーグナーが注目を浴びているのは、歯に衣着せぬ発言だけではなく、彼が数々のゴールを勝ち取っているからこそなのである。

ゴールを決める者は正義を手にする。そして、数多くのゴールを決めれば、発言する権利も手に入る。たとえば、『得点力に関して自分は最も優れた選手だ』などと。ホッフェンハイムのサンドロ・ヴァーグナーがまさにそれである。彼は『ビルト』紙に「しばらく前から俺はドイツでダントツに最高のFWなんだ」と語ったのだ。

「しばらく前から」と「ダントツに」という挿入句をひとまず措けば、残るのは「俺はドイツで最高のFWだ」という発言である。ところで、DFやMFの場合に比べて、“最高のFW”というのはいくらか判断しやすいものである。たとえばゴール数を判断材料にして、最も多くのゴールを決めた選手を最高だと呼ぶことができるからだ。あるいは、統計的数字は脇に置いて、最高の才能に恵まれた選手や、素晴らしいプレーによってこれまで最も多くの勝利を獲得してきた選手を最高だと呼ぶこともできる。

サンドロ・ヴァーグナーは、上記の発言をした際(13節を終えた時点)、12試合で7得点をあげていた。これは頼もしい成果である。しかし、ヴァーグナーと同様に今シーズン攻撃陣の中心として活躍しているライプツィヒのティモ・ヴェルナーは、この時点でヴァーグナーよりさらに1点多く稼いでいた。つまり、統計的に見るならヴァーグナーの発言は妥当ではない。ということは、彼が自分をドイツ最高のFWと見なしたのは、彼の得点数とは関わりがないのだと考えざるをえない。

■ドイツ代表FWの抱える問題

バイエルン・ミュンヘンのトーマス・ミュラーはドイツ代表チームのセンター・フォワードのオプションの一人だが、今シーズンのブンデスリーガで初得点を挙げるまで999分もの時間を要した。EUROで再び日の目を見たマリオ・ゴメスは、新天地のVflヴォルフスブルクに移って以来、自らの軌道を見出せずにいる。問題という点では、今シーズンのザンドロ・ヴァーグナーは何ら憂いを知らない。

「最高のFW」というのはもちろん強気の発言だが、これはまたヴァーグナーらしい発言でもある。今年29歳になるヴァーグナーは、ブンデスリーガにはあまりいないタイプの選手である。彼は語る。大いに語り、性急に語る。思っていることはすべて口に出し、人がどう思おうと気にかけない。だから、彼に対する評価は人によって両極に分かれる。先日、ホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督はヴァーグナーのことを「こういうタイプ」と呼んでいたが、ヴァーグナーは間違いなくそういうものであり、ひとつのタイプを体現しているのだ。

ヴァーグナーは2007年8月にバイエルン・ミュンヘンからブンデスリーガにデビューを飾り、2009年にはサミ・ケディラ、マヌエル・ノイアー、マッツ・フンメルス、メスト・エジルらと共にU21のヨーロッパチャンピオンになった。だが、若い選手にとって、レコードマイスターで存在価値を証明し続けることが容易でないのは当然のことだ。ヴァーグナーは2部リーグのMSVデュースブルクという回り道を経て、ヴェルダー・ブレーメンへの移籍を果たした。しかし、そこで芳しい活躍を見せることができず、さらにその後のキャリアでも多くのクラブで活躍できずに終わった。

■鳴かず飛ばず

ヴァーグナーの低空飛行は、ブレーメンであろうと、1.FCカイザースラウテルンであろうと、ヘルタ・ベルリンであろうと変わらなかった。これらのクラブがヴァーグナーという長身のFWに満足を覚えることはなかったのだ。最終的に監督たちは「ブンデスリーガでは使い物にならない」との判決を下したが、インスピレーションに欠け、テクニックに乏しいヴァーグナーのプレーに業を煮やしたファンたちも、性急に彼を断罪した。そして2015年の夏にベルリンで不用品として選別され、勝利の当てもなく見放された昇格チームのダルムシュタットに移った後ようやく、当時27歳だったヴァーグナーの局面が一変したのだった。これが多くの驚きを与えたことは想像に難くない。

突如として彼の放つシュートがコンスタントにゴールネットを揺らすようになったのだ。ヴァーグナーは「リーリエン(「百合たち」の意、ダルムシュタットの愛称)」のために14ゴールを挙げ、チームの残留に大きく貢献した。同時に、彼自身はホッフェンハイムの関心を引くことにもなった。クライヒガウ(ホッフェンハイムの拠点)においても、今シーズンの彼はコンスタントにゴールを決めている。もちろん、ファンの見方はまだ完全に変わってはいない。インターネットでは『髭と発言によってドイツのズラタン・イブラヒモビッチになろうとしている』との非難を浴びている。とはいえ、この1年半の間に彼が決めたゴールを「幸運なゴール」と決めつけるとすれば、それは的外れというものだ。

もしサンドロ・ヴァーグナーが19歳の若手選手であったら、おそらくメディアや観客は彼の強気な性格を「屈託がない」とか「大胆だ」というふうに見なしたことだろう。だが、彼はもはや若手ではないため、その発言はしばしば「傲慢」という括りに入れられるのだ。もちろん、彼が『ビルト』紙に語った言葉はそういう見方を立証してはいるのだが。

「彼は試合に必要なやる気を、それに勇敢な姿勢を持ち込んでくれる。よく対戦相手のセンターバックを手こずらせるし、観客の関心を引きつけもする」と、TSGのユリアン・ナーゲルスマン監督は語った。ヴァーグナーの評価は、まさに真っ二つに分かれている。ある人々は、彼の発言が「僕たちは一試合一試合のことを考えなければならない」的な、心地よくソフトに加工されたものではないゆえに、その独特の性格や発言を良しとする。別の人々は、彼はあまりに自信家で、あまりに攻撃的だと考える。

いずれにせよ、ナーゲルスマンが正しく指摘したように、ヴァーグナーは感情を表に出して観客の関心を引きつけている。ひょっとしたらヴァーグナーにとって、彼が本当にドイツ最高のFWかどうかという問いに答えることは、何ら重要ではないのかもしれない。もしかしたら彼は、ただ単に、ドイツで“最も騒々しいFW”という評判を確立したいと思っているだけなのかもしれない。

文=ダニエル・ブーセ/Daniel Buse

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