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ライブ

明治安田生命J1リーグ

  • 2012年11月7日
  • • 19:00
  • • 日立柏サッカー場, Kashiwa
  • 主審: H. Matsuo
  • • 観客: 10389
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終了
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J1第31節:ドローに終わるも2人の若武者が躍動

J1第31節:ドローに終わるも2人の若武者が躍動

Getty Images

柏の下部組織出身選手が成長感じさせるプレー


柏はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得、G大阪は残留を果たすため、勝ち点1ではなく、是が非でも勝ち点3が欲しい試合だった。特に柏は、3位浦和との差は3に縮めたものの、今節勝利を挙げた名古屋、横浜FM、鳥栖には追い抜かれ、8位に後退している。同様にACL出場権獲得も後退したと言わざるを得ない。

ただ、その中で2人の若者が躍動した点はポジティブに捉えていいだろう。工藤と茨田、柏の下部組織出身の2選手である。工藤はFW、茨田はボランチを主戦場とするが、この試合において工藤は中盤の右サイド、茨田はトップ下という、本来のポジションとは異なる位置でプレーをした。

「ボランチよりも守備の負担が少なかったので、落ち着いて攻撃に絡むプレーを心掛けていた」と茨田は振り返っている。チーム全体として守備に懸念がある今シーズンは、ボランチは攻撃よりも守備に追われる時間が長く、茨田の攻撃センスやパスを生かし切れていなかった。だがトップ下では守備の負担が激減、それに伴い茨田のセンス溢れるプレーがこの試合では随所に見られた。

これにはG大阪の戦い方も関係している。遠藤が低い位置でパスを捌く際には、そのマークは茨田の役目だった。ただ、遠藤が上がった時には、そのマークを栗澤に受け渡す約束事が事前になされていたため、遠藤が比較的高めの位置でプレーしたことで茨田は守備のタスクから解放され、逆に「明神さんが1ボランチのようになっていたので、その両脇に空いたスペースを狙っていた」と、フリーでパスを受ける場面が増えたのである。

試合途中からトップ下を務める、あるいは2シャドーの1枚を担うことは以前にもあったが、試合のスタートからトップ下に入るのは今回が初めてのケースだ。ジュニアの頃から“天才肌”として期待されてきたこの逸材は、巧みなワンタッチコントロールでマーカーをかわすプレーや、バイタルエリアで相手守備陣の意表を突くパスを放つなど、その類稀なる才能を披露した。12分にはスペースへ流れ、クロスから工藤の先制弾をお膳立て。そのほか、ネット・バイアーノにも決定的なパスを数本通しており、このブラジル人ストライカーに決定力があれば、茨田は複数アシストを記録していただろう。

また、2ゴールの活躍を見せた工藤は、前々節の広島戦から中盤の右サイドで起用されている。不慣れなポジションにも、試合前には「最初から前を向いてプレーできることをポジティブに考えている」と話し、彼がイメージしていたのはサイドからゴール前に入って得点を挙げる日本代表FW岡崎慎司のような動きだという。そのイメージを漠然と抱いていたわけではない。柏の左サイドバックには、前節は怪我で欠場した橋本が復帰し、ジョルジ・ワグネルとの本来の攻撃ユニットが復活した。しかもG大阪は、負傷の加地に代わって、武井が右サイドバックに入る。となれば、柏の攻撃が左サイドに偏る傾向は強まり、橋本とワグネルから何本もクロスが供給される。そのクロスに対し、右サイドからゴール前へ飛び込み、得意のワンタッチシュートでゴールを陥れる。それが岡崎を引き合いに出した工藤の思い描いていたゴールのイメージだ。そして狙い通りその展開から、2つのゴールを叩き出したのである。

G大阪のレアンドロに2ゴールを許し、試合は2-2のドローに終わった。それでも、工藤と茨田が本来とは異なるポジションで切り開いた新境地は、間違いなく彼らの成長、プレーの幅の広がりを示すものであり、柏にとっては今後への光明となり得る。


文/鈴木 潤
1972年生まれ、千葉県出身。2002年のフリーライター転身以来、国内育成年代から海外サッカーまで取材活動を行う。柏レイソルの取材は現在ではライフワークと化し、オフィシャル刊行物やサッカー専門誌をはじめ、各媒体に柏関連の記事を執筆中。

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