thumbnail こんにちは,
ライブ

明治安田生命J1リーグ

  • 2012年8月18日
  • • 19:00
  • • 埼玉スタジアム2002, Saitama
  • 主審: K. Ogiya
  • • 観客: 44131
2
終了
1

浦和対鹿島:「紙一重」の永田が見せた存在感

浦和対鹿島:「紙一重」の永田が見せた存在感

Getty images

試合後にはジョルジーニョがレフェリング改善を訴える


J1第22節の浦和対鹿島が18日行われ、ホームの浦和が2-1で勝利した。

■ ジョルジーニョの戦術的手当てを上回った浦和

浦和のビルドアップは阿部が最終ラインに下がって永田と並び、槙野と坪井がサイドへ広がるところからスタートする。この浦和の形と、鹿島の4-4-2のかみ合わせを見たとき、鹿島の2トップである大迫と興梠は、浦和の阿部と永田をそれぞれ見張る形になり、ボランチの鈴木が空きやすくなる。鈴木に対しては柴崎がしばしば前へ出てプレッシャーをかけようとしていたが、2ボランチ(柴崎&青木)は浦和の2シャドーの動きに注意を払わなければならないため、どうしても鈴木にフリーで前を向かせてしまう傾向が強くなる。

このようなシステムのかみ合わせがあり、序盤の浦和は鈴木が起点となって攻撃が組み立てられた。結実したのは26分、宇賀神のゴールだ。中盤で前を向いた鈴木から右サイドの平川へ展開。平川はこれをワンタッチコントロールで中央へカットインして左足でシュート。こぼれ球を宇賀神が流し込み、浦和が先制点を挙げた。

この状況に対し、鹿島はジョルジーニョの戦術的手当てが施された。ボールが収まらず、イエローカードを受けるなどなかなか試合に入れないで停滞していた大迫を早々と諦め、28分に遠藤康を投入してシステムを4-2-3-1へ変更。浦和の起点となっていた鈴木を、鹿島のトップ下に移動したレナトがマークする形へ。鹿島はこれで守備が安定するかと思われたが…。

ここで存在感を見せたのが浦和の永田だった。

■ 良くも悪くも紙一重の永田

鹿島が興梠の1トップに変化したことで、阿部と永田は興梠に対して数的優位が生まれる。ここでフリーになった永田はドリブルやワンツーでボールを中盤へ運び、サイドチェンジや縦パスにつなげていく。そして39分、永田は自陣から鈴木とのワンツーでプレスをかわして前方へ進み、梅崎へパス。梅崎からパスを受けた左サイドの宇賀神は、裏のスペースへ走り込む原口に対してワンタッチでスルーパス。鋭い切り返しから原口が追加点を挙げた。宇賀神と原口のプレーも見事だったが、特にこの時間帯は永田のビルドアップへの貢献が光っていた。

もちろん、永田の攻撃的な判断は紙一重なところがある。中盤へ上がろうとするタイミングでミスを犯せば、あっという間にカウンターを食らうことになり、事実、前半のロスタイムには永田のミスからカウンターを食らいかけてファールで止め、イエローカードを受ける場面もあった。

そのようなリスクを承知しながら、いかに勇気を持って前に出ることが出来るか。永田というプレーヤーには少し独特な雰囲気がある。のれんに腕押しというか、飄々(ひょうひょう)としているというか、以前ペトロビッチ監督が「(永田は)落ち着き過ぎていて、見ているこちらがハラハラする」と冗談めかして語ったことがあるように、綱渡りのプレーを何もないかのように堂々と歩んでいくようなところがある。しかし、このような永田のボール運びのチャレンジが無ければ試合の流れはもっと早く鹿島に傾いていただろう。

浦和にとって前半の内容は素晴らしいものだった。試合中にこのような柔軟性を発揮できるようになっていることも、現在の浦和が高順位に付けている理由の一つだろう。浦和は一歩一歩チームを成熟させている。

もちろん2-0でリードしながら、後半は一方的に鹿島の攻撃を受け続け、あわや同点かという状況にまで迫られたゲーム運びには課題も多い。ペトロビッチ監督はその要因として、FC東京戦に続いて「後半に運動量が落ちる」ことを挙げ、夏の厳しい暑さと、スタメンをほぼ固定して戦っていることによる疲労が影響していると述べた。

だが、要因はそれだけではないだろう。明らかに後半の浦和は前線から最終ラインまでが間延びしており、それは運動量のみに起因するものではないはずだ。しかしペトロビッチ監督は次のように答えた。

「監督はすべてを正直に話してはいけない。要因を詳しく述べることは、もしかしたら何人かの選手を個人批判することになってしまう。それは正しいことではない。監督は時として政治家のように話さなければならないのだ」

■ 通訳・高井蘭童氏の叫び

最後に、ジョルジーニョ監督の記者会見での一幕をまとめておく。

「日本をこよなく愛する者として、ガッカリすることが増えている。誰に訴えればいいのか分からないが、早急にレフェリングを改善しなければならないと思う。震災もあってお客さんが減っている中で、試合の中身、ショーの質が問われている。しかし最近のJリーグは選手ではなく、レフェリーが主役になってしまう。(前節の磐田戦でロドリゴ・ソウトがGK曽ヶ端に対するファールを取られて磐田のゴールが取り消された場面で)ロドリゴ・ソウトは曽ヶ端には全然触っていない。私は2点目を奪われてどうしようかと、頭を抱えた矢先のことだった。私はこのようなことを誰に訴えればいいのか。メディアは暗黙の了解で書かないのか、この問題を書くと今後記事を書くのが難しくなるのか。歴代の監督が訴えているのに改善されないのは、なんでなんだよ」

通訳・高井蘭童氏は涙ながらに訴えかけた。

「これは通訳の言葉として、処罰されてもいい、裁かれてもいい。Jリーグを助けてください。我々もレッズも、ものすごく一生懸命にやっているのに、なんでなんだよ」

さらにジョルジーニョ監督は言う。

「試合の1時間前にはコーディネーションミーティングがあり、マッチコミッショナーやクラブの代表、レフェリー、監督が集まってフェアプレー、アクチュアルプレイングタイム、レフェリーへのリスペクトを言われる。ただ、こっちばかりがいろいろ要求されて、あっちからは何もない。僕らもサポーターも同じ気持ちではないかと思う。この問題に目をつぶりながら行くのであれば、(Jリーグの)客離れは進んで行くと思う。僕が現役の頃のレフェリングよりもひどくなっている。ひどすぎる。監督同士で話をすると、レフェリングがひどいという話ばかり。世界一になったルイス・フェリペ・スコラーリも、レフェリングのひどさに耐えられずに日本を去った」

Jリーグはこのような状況に対し、何らかの明確な改善策を打ち出すべきだろう。臭い物に蓋をするのはもう限界だ。


文/清水英斗(Hideto Shimizu)
Goal.com Japanの編集長を務める。サッカーライター&編集者。
著書は「サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点~」
「DF&GK練習メニュー100」「セットプレー戦術120」など多数。
ツイッターアカウントは @kaizokuhide

関連