スペインプロリーグ機構ラ・リーガとスペインフットボール連盟(RFEF)は4日、バルセロナがMFダニ・オルモ、FWパウ・ビクトルを選手登録できる可能性を否定した。
バルセロナは12月31日までにサラリーキャップ超過の問題を解決しなければ、ダニ・オルモとFWパウ・ビクトルの選手登録を維持できない状況だったが、間に合わず。カンプ・ノウのVIPゾーン運営権を、カタールの投資ファンドに売却することで合意していた同クラブだが、ラ・リーガはその支払い証明が欠けていたことを理由として選手登録を認めず、実際に選手ライセンスを発行するRFEFもラ・リーガの意向に沿っている。
バルセロナはその後、クリスマス時期に金融市場が正常に機能していなかったために支払い証明が遅れたとして、登録を認めるようラ・リーガとRFEFに求めたものの、その可能性も途絶えることになった。
ラ・リーガとRFRFは4日に連名で声明を発表し、「ダニ・オルモとパウ・ビクトルのライセンスを発行しない」ことで合意した旨を伝えた。その理由は「選手ライセンスが失効となった場合、同一シーズンに同じクラブの選手としてライセンスを取得することができない」という条項がRFEFに存在しているためで、期限切れによって一度ライセンスを失効したダニ・オルモとパウ・ビクトルを、再びバルセロナの選手として登録することは不可能であると判断している。
これによってダニ・オルモとパウ・ビクトルは現状では、バルセロナにいる限り全公式戦とスペイン代表の試合に出場できないことになった。
ラ・リーガとRFEFに許可を得る道を断たれたバルセロナは、スペイン国内におけるスポーツ仲裁手続きの最高機関であるスポーツ裁定審議会(TAD)、その次に通常裁判に訴えを起こすことで暫定措置的に両選手の登録を実現する方針とみられる。その訴えは、クリスマス時期の期限設定はクラブにとって不利であり、冬の移籍市場閉鎖に期限を合わせるべきという主張を根拠としているようだ。
ラ・リーガとRFEFはその一方で、バルセロナのVIPゾーン運営権の売却による収入を確認したことで、同クラブのサラリーキャップの上限が増えたことも報告している。これによりバルセロナは「人件費の5%以上を占める選手を売却した場合、その選手のために支払っていた年俸の60%分しか使用することができない(占める割合が5%未満の選手の場合は50%のみ)」「選手売却の移籍金として得た収入から使い回すことができるのは35%のみ」というサラリーキャップ超過のペナルティーが解消されることになった。……ダニ・オルモとパウ・ビクトルを登録するためのVIPゾーン運営権の売却だったはずだが、そこに何も影響がないのは結果的に大きな皮肉となってしまった。
なおラ・リーガのサラリーキャップは、過去に半数近くのクラブが債務を支払えず倒産法(日本で言えば会社更生法に近い)を適用したことを重く見て、健全経営を促すために設けられた制度。各クラブはトップチームの人件費を予算全体の約70%に制限しなければならない。バルセロナは昨夏、サラリーキャップ超過のためにRBライプツィヒに移籍金4800万ユーロを支払い獲得したダニ・オルモ、またパウ・ビクトルを選手登録できない状況に陥っていたが、長期離脱となったDFアンドレアス・クリステンセンの給与80%分を他選手の人件費に回すことが認められたために、両選手をシーズン前半戦まで登録することができた。
ちなみに、ジェニファー・エルモーソへのキス事件でルイス・ルビアレス会長が解任されたRFEFは、先にラファエル・ロウサン新会長による新政権が発足。副会長にはラ・リーガのハビエル・テバス会長が選ばれている。ラ・リーガはRFEFから国内プロリーグの運営を委託されている存在だが、テバス会長がルビアレス前会長およにRFEFと犬猿の仲であったことはつとに有名で、今回の副会長就任は歴史的な和解ともされている。
バルセロナは今回、ラ・リーガだけでなくRFEFに対して直接選手ライセンスの発行を求めたが、もしRFEFとラ・リーガの関係に亀裂が入ったままであれば、もっと言えばRFEFがこれまでのように杜撰な運営をしていれば、ライセンスが発行される可能性もあったかもしれない。しかしながら生まれ変わったRFEFは「せっかくラ・リーガと手を取り合えたのに、こういった出来事でふいにすることはできない」と、今回はバルセロナの要望に一切応じる気がなかった。ジョアン・ラポルタ会長率いるカタルーニャのクラブは、そういった点では時宜を逸したと言えるかもしれない。
文=江間慎一郎