・現時点での立ち位置
右サイドバックの主力(3バックや左サイドバックにも対応)
・個人ノルマ(期待)
ゴールに直結する動きの向上とアシスト数アップ
・ポジション争いのライバル
ブナ・サール
■ロシアで堂々戦い抜きフランスへ
Getty Imagesロシア・ワールドカップ後の短い休暇を終えた酒井宏樹がオリンピック・マルセイユのトレーニング場に“出社”した初日、クラブの公式ツイッターは、『俺たちの戦士が帰ってきた!』と喜びを伝えた。酒井がフィットネスルームに顔を出すと、仲間たちからは「お!W杯ベストプレーヤーのご帰還だぞ!」と歓迎の声が上がる。
「自分の居場所に戻ってきた」
仲間とじゃれあう酒井の笑顔には、そんな気持ちが表れているようだった。
彼らが言った「W杯ベストプレーヤー」という称賛はあながち間違っていない。フロリアン・トーバン、アディル・ラミ、GKスティーブ・マンダンダの3人はフランス代表メンバーとして優勝メダルを持ち帰ったが、控え組だった彼らとは対照的に、酒井は日本代表が戦った全4試合で先発フル出場と、主力としてロシア大会を戦い抜いた。
その彼の活躍ぶりを、仲間たちも頼もしい思いでフォローしていたことだろうが、彼が善戦したことは彼らにとっては驚きではなかったはずだ。酒井はマルセイユで昨シーズンも十二分にチームの柱として奮闘していたのだから。
昨シーズンは、ヨーロッパリーグ準々決勝のライプツィヒ戦で待望のマルセイユ初ゴールもマークした。
本拠地ヴェロドロームで5-2と大勝、クラブ史に残るエキサイティングな試合となったこの一戦で酒井が勝利を確定する5点目を挙げた時の、ルディ・ガルシア監督やチームメイト、ファンたちの喜びようはすさまじかった。
そんな彼が、第34節のリール戦で膝を負傷したときには、リーグ・アン3位の座と、ヨーロッパリーグ優勝を目指していた大事な時期だっただけに、ガルシア監督が「サカイはうちのディフェンダー陣の中で最も守備が強い。彼の離脱は非常に痛い」と悲痛な面持ちで語ったほど。
驚異的な回復力で第37節には戦列に復帰したが、コンディションが整わずにヨーロッパリーグ決勝戦出場はかなわなかった。しかし新シーズンも、酒井は右サイドバックの主力としてしっかりとガルシア監督の構想に組み込まれている。
■酒井ーサールの鉄板ユニット

昨季はディフェンス陣に長期負傷者が重なり、酒井が左サイドバックをフォローしたり、守備的MFのルイス・グスタヴォが埋める状態だった。この夏のメルカートでトラブゾンスポルへレンタル移籍していたスロバキア代表のトマシュ・フボチャンが戻り、新たにクロアチア代表のCBドゥエ・チャレタ・ツァールも獲得、アキレス腱の負傷で昨シーズンはほぼ丸々棒に振ったCBグレゴリー・セルティックも復活し、DF陣はやや補強されたが、右サイドは昨年同様、酒井とサールの2人体制となりそうだ。
昨季も2人の使い分けはうまく行っていた。先手必勝で得点が欲しい試合や、終盤でどうしても得点が必要な時には元々ウィンガーで攻撃力の高いサールを使い、しっかり守りたい試合では酒井を起用する。サールをサイドハーフに据えて2人を共存させる試合もある。
サールは攻撃手としてマルセイユに入団したものの、ポジション争いが厳しく、放出の話も浮上していたところでサイドバックとして試され、本人もやりがいを見出し、ガルシア監督を満足させている。持ち味の異なる酒井とサールは『ライバル関係』というよりは、違った強みをチームにもたらすことができるユニットという感じで本人たちもお互いを深く理解し合っている。
棲みわけがはっきりしているから、どちらかが先発してもう一方がベンチに座ることになっても「なぜ俺が?」ということにはならないし、酒井は「サールは攻撃的なプレーで自分にないものを持っているから勉強になる」と語り、守備面の向上を目標に掲げているサールは酒井からディフェンスを学ぶという理想的な関係にある。
酒井は、右サイドでコンビを組むことが多いトーバンや、センターバックのラミ、ローランドらチームメイトたちから「一緒にプレーしやすい」という評価を受けているが、それは彼が「状況をよく見て、周りの選手たちの強みを生かせる動きをする」ことを常に意識しているからでもある。右ウィングのトーバンに関しては、彼の走り出しのリズムやボールを欲しがるタイミングを完璧に把握している。
アシスト数は、入団初年度の一昨シーズンが「3」、昨シーズンが「4」。ストライカーの決定力いかんではゴールになっていた好クロスも多々あったが、「結果がすべてですから」と目に見える数字という形で証明したいと酒井は語る。今シーズンは昨年以上のアシスト数、そしてサールが時折見せるような、思い切った攻め上がりでゴールチャンスに絡む働きをすることが目標だ。
■スタートダッシュを決められるか

酒井は、合流4日後にはさっそくリスボンで行われたスポルティングとのプレシーズンマッチに右サイドバックで先発出場してハーフタイムまでプレー、開幕前の最終戦、4日のボーンマス戦にも先発出場した。
正メンバーが揃わない中、ガルシア監督はメンバーを入れ替えつつ4バックや3バックなど異なるシステムを試したが、ボーンマス戦では5失点を喫し、「ディフェンスが機能していなかった」と表情も険しかった。
新戦力のツァールは開幕戦の4日前に合流したばかりで、酒井のように十分なプレシーズントレーニングをこなせなかった選手など、選手たちのコンディション具合が揃っていないことも要因に挙げつつ、ガルシア監督は早急に守備面を機能させることを当面の課題としている。
一方、この夏のメルカートで補強が必須とされていたストライカーのポジションには、ニース所属のイタリア代表マリオ・バロテッリやフランス代表の9番、オリヴィエ・ジルー獲得の噂が上ったものの、ジルーは消滅、バロテッリに関しても進展していない。
昨シーズン加入したヴァレリー・ジェルマンとコンスタンティノス・ミトログルの順応度は徐々に上がってきているが、昨季果たせなかったリーグトップ3入りの目標を達成するにはストライカーの補強は絶対に必要だ。
ただ、今のマルセイユのチームには、ここ数年にはなかった抜群に良いスピリッツがある。チーム全員仲が良く、昨シーズン終盤の、見ている方が辛くなるような過密スケジュールによる疲労困憊の時期も、お互いに励ましあいながら気合で乗り切る精神的な強さがあった。
主力が揃って残った今季も、そのスピリッツは引き継がれる。そしてそれは酒井が愛してやまないチーム。「このチームのために少しでも自分ができることを」と全身全霊を傾けることができるチームだ。
マルセイユで研鑽したことがW杯で大いに活かされ、W杯で自分の仕事をまっとうできたことで得た大きな経験と自信を、酒井はふたたび、マルセイユに注入する。
彼のキャリアで最大のトーナメントを体験して一回り成長した酒井は、今シーズンもマルセイユ戦士として奮闘することだろう。
取材・文=小川由紀子(ライター)
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