わずか1年で驚異的な成長。アルフォンソ・デイヴィスが世界屈指の左サイドバックとなるまで

Alphonso Davies GFX
Getty/Goal
エキサイティングな10代のウィングとしてバイエルン・ミュンヘンと契約したアルフォンソ・デイヴィスは、12カ月で卓越したサイドバックに成長した。今年度の『Goal 50』でもノミネートされている。

まるで魔法のような華々しい成長だった。

昨シーズン、バイエルン・ミュンヘンは欧州の舞台で圧倒的な強さを誇示。チェルシー、バルセロナ、リヨン、パリ・サンジェルマンを倒して7年ぶりに頂点に立ったが、選手個々の躍進も注目を集めた。エースであるロベルト・レヴァンドフスキのゴールラッシュ、センターバックにコンバートされたダヴィド・アラバの覚醒などもトピックとなったが、20歳のライジングスター、アルフォンソ・デイヴィスを忘れてはならない。

デイヴィスには、足にボールがくっついているかのように見える華麗なドリブルや、ディフェンダーをあっという間に置き去りにするスピードがある。また、状況に適応し、チャンスを逃さないスーパーヒーローのような能力もある。相手がどんな選手、チームであっても怯む様子は見られない。

Goal 50

だからこそ、デイヴィスはセンセーションを巻き起こしたのである。

■順風満帆だった?

Alphonso Davies Bayern Munich 2019-20

デイヴィスは、10代のうちにMLS(メジャーリーグ・サッカー)とブンデスリーガで優勝を経験。さらには、チャンピオンズリーグも制覇し、すでにバイエルンに移籍してから7つのトロフィーを獲得している。

個人でもブンデスリーガの「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」やチャンピオンズリーグのベストイレブンに選ばれ、UEFAのベスト・ディフェンダーの候補となり、今年の『Goal 50』では20位にランクインされた。

こう聞くと、すべてが順風満帆で簡単に達成されたように見える。だが、カナダ出身であるデイヴィスはいつも自信満々というわけではなかったようだ。

「僕の夢はヨーロッパで立派な選手になることだった。でもヨーロッパでスターになった選手のほとんどはヨーロッパ出身か、ブラジルかアルゼンチン出身だ。カナダのエドモントン出身が何人いると思う? 答えはゼロだ。誰もいない。だから僕はすごく不安だった。なんて遠くへ来てしまったんだと思った」

それでも、自身のパフォーマンスによって取り巻く環境を変えてみせた。以前までは「僕が15歳のときには、『デイヴィスはMLSでプレーする選手のなかで2番目に若い』と書かれたり、17歳のときには『史上最年少でバイエルンに移籍した』とあったね」と振り返る。

「でも今は違う。少なくとも、こんな感じではない」

■MLSで旋風

2020-11-17-davies

デイヴィスのルーツの話はすでに広く知れ渡っている。

両親はリベリア出身で、家族でガーナに移住した後、最終的に、第二次リベリア内戦に追われ、カナダに渡った。45万人もの人々が移住を余儀なくされた戦争だった。

デイヴィスは最初、地味な少年だったが、14歳で才能を認められると、バンクーバー・ホワイトキャップスのアカデミーに在籍することに。そこからデイヴィス旋風が始まる。15歳になる頃にはMLSでプレーするようになり、フレディー・アドゥー以来に最年少記録を更新した。

アドゥーの選手人生は皆が期待したものにはならなかったが、デイヴィスは成長を続けた。

2017年までにレギュラーとなり、全公式戦33試合で3得点をマーク。2018年にはMLSのオールスターに出場し、若くしてリーグ最高の選手の一人となった。

ほどなくバイエルンからお呼びがかかる。チェルシー、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッドも興味を示し、特にユナイテッドは契約するチャンスが何度もありながら実現はしなかった。最終的に勝ったのはバイエルン。カナダの若きスターを獲得したバイエルンは幸運だったと言えるだろう。

■バルセロナ戦でさらに飛躍

Messi Davies Bayern Barcelona 2020

ドイツへと到着したデイヴィスはそれまでと全く違う選手となり、いまやバイエルンの現在と未来を担う重要な選手となった。以前のデイヴィスは才能あふれる若きウィンガーであり、攻撃の最終局面で仕事をしていた。だが、“バイエルンでのデイヴィス”のイメージは守備の最後の砦だ。ドイツではサイドバックとしてのいろはを一から学び、最終ラインのレギュラーに定着した。

バイエルンは選手をコンバートして新たな役割を任せるという点で、おそらく世界一のチームであろう。フィリップ・ラームはサイドバックから中盤にコンバートされ、キーマンになった。また、ラームの後継者であるヨシュア・キミッヒも同じだ。アラバは世界最高のサイドバックから世界最高のセンターバックとして脚光を浴びている。

そしてデイヴィスは、ワールドクラスの左サイドバックとして階段を上り続けている。そして、一躍彼を有名にしたのがあのバルセロナ戦だ。

8-2と衝撃的なスコアに終わった昨シーズンのチャンピオンズリーグ準々決勝。試合前までは、デイヴィスは単なる「超足の速い小僧」という認識に過ぎなかった。だが、後半に入った63分、デイヴィスがリオネル・メッシ、アルトゥーロ・ビダル、ネルソン・セメドを次々とかわし、キミッヒに当てるだけでゴールへとつながる、ラストパスを送る。その瞬間からデイヴィスはスターへとなっていった。

「セメドを一瞬で置き去りにしたのを見たとき、若かりし頃のライアン・ギグスを思い出した。3、4メートルがとてつもなく速い。あわてて自分でシュートしなかったところは、さすがバイエルンのようなビッグクラブにいるだけはあると思ったね。光るプレーだった」

ホワイトキャップスの元監督であるカール・ロビンソンは言う。さらに、そうそうたる名前を出しつつ、今後の成長を期待する。

「ポジショニングやフットワークは経験を積めば改善されるだろう。アシュリー・コールもあの歳のころは完璧なディフェンダーではなかったし、ガレス・ベイルも21歳のときウィングにコンバートされ、成長していった」

「アルフォンソも彼らのような滑り出しを切った。彼らより1、2歳下なのにあんなにハイレベルなプレーをするなんてね」

■世界トップクラスの選手も認める才能

Alphonso Davies Goal 50 GFX

リヴァプールのアンドリュー・ロバートソンは、現時点で世界最高の左サイドバックと広く認識されているが、自分ではデイヴィスと同じことはできないと認めている。また、世界を代表する左サイドバックであるマルセロも、「デイヴィスのプレーは感動ものだね。涙が出るほどさ」と話す。

デイヴィスに対する最大の褒め言葉はかつてのチームメイトや監督、解説者からに限らない。現在の同僚やライバルたちが、実際のプレーを見て素晴らしいと認めているのだ。

だが、彼の物語はまだまだこれから。彼自身は20歳になったばかりで、今シーズンは好不調の波が大きく、ケガを負うまではハンジ・フリック監督からパフォーマンスの改善を求められていた。

だが、才能はある。性格も明るくオープンで、向上心も十分だ。それはデイヴィスの言葉からもよくわかる。

「初めてドイツに来たとき、学ぶべきことがたくさんあった。このチームの素晴らしい選手たちと知りあえたからね」

バイエルンで成長し、レギュラーとして昨季は大きな成功を勝ち取ったデイヴィスは「リーグ戦とポカールで優勝し、チャンピオンズリーグを制覇した。こんなに若くて、キャリアのこんな早いうちに達成できるなんて、夢みたいな気分だ」と喜びを語った。

さらに、「これ全部が本当のことだって信じられない」とも続けた。だが、それは確かに信じていい現実だ。デイヴィスの凄まじい成長速度に、世界中のサッカーファンが虜となっている。

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