荷物を背負った感覚と、主将としての誇り。長谷部誠。すべてを「やり切った」次に

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(C)Getty Images
日本代表史上最高とも言えるキャプテンが、ロシア・ワールドカップを最後に代表引退を表明した。

■5人の指揮官、8年間のキャプテンマーク

「大会前には決めていました。覚悟を持って決断したことなので、今は本当にやり切ったという感覚があります」

原口元気と乾貴士のゴールで2点をリードしながら、3点をひっくり返され、悲願のワールドカップベスト8を逃したベルギー戦から一夜明けた3 日。日本代表主将・長谷部誠が代表引退を正式に表明した。

2010年南アフリカ大会から8年間、キャプテンマークを巻いてきた。

「年々、苦しい時間は増してきたと思います。最初の頃は右も左も分からず、ただガムシャラにやっていただけなので。それが時が経つに連れて、勝手にですけど、荷物を背負っていった感覚はありますね。大変なことも間違いなく多かったと思うんでけど、それ以上に誇り、そちらのほうが大きかった」

岡田武史監督(現FC今治代表)、アルベルト・ザッケローニ監督(現UAE代表監督)、ハビエル・アギーレ監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督、そして西野朗監督と5人の指揮官の下で奔走してきた。

「キャプテンとして、監督交代になった責任が自分はかなり大きいと思っていた」

中でも、2カ月前の指揮官交代という前代未聞の事態となった今回のロシア・ワールドカップ。ハリルホジッチ体制で結果が出なかった責任を長谷部は重く受け止めた。

「若い選手、ほかの選手にキャプテンを任せるのであれば、僕は全面的にサポートします」と、真っ先に西野監督に申し出たという。一方で「責任を取る=辞めるという考え方をする人もいるけど、僕はこういう状況でも自分がしっかりやらないといけないと思っている」とも伝え、最終的に指揮官がキャプテン継続を決断するに至った。

3大会連続でリーダーとしてチームをけん引する以上、後悔だけはしたくない――。

しかし、5月30日、西野ジャパンの初陣となるガーナ戦、6月8日のスイス戦で連敗。チームの方向性が見えず、「このままでは3連敗もあり得る」と長友佑都が危機感を募らせるほどの苦境に瀕していた。

選手や監督・コーチらとより積極的にコミュニケーションを取るように努めた。この頃から選手ミーティングが活発化。彼らの意見を聞いた西野監督が攻守両面での約束事を決めるようになった。長谷部自身、「モヤモヤが晴れて行った」と打ち明ける。

こうした結束の成果が6月19日のグループリーグ第1戦・コロンビア戦の勝利だった。

続く24日のセネガル戦は2-2と引き分け。そして、28日の第3戦・ポーランド戦。この日、先発を回避していた長谷部は82分「0-1の状況下で逃げ切るための交代カード」として送り出された。「時間稼ぎ」とされる中で大ブーイングを浴びながらも役割を遂行。日本のグループ2位通過という最低限の結果をもぎ取る原動力となった。

決勝トーナメント1回戦のベルギーとの死闘では、マルアン・フェライニ(マンチェスター・ユナイテッド)との競り合いに勝てず、ヘッドで同点ゴールを許してしまう。結果としてベスト8という日本の新たな歴史を刻む夢は叶わなかった。

「手ごたえよりも個人的にはやはり失望というか悔しさが上回っている」。試合直後、そう振り返っている。

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■一歩一歩進んでいるという感覚があった

突如としてキャプテンマークを託され、自陣に引いて手堅く守るスタイルをひたすらやり切った2010年南アフリカ大会。

絶対的なキャプテンとして、自分たちのスタイルを追い求めながら惨敗した2014年ブラジル大会。

そして、2018年、ロシア。

今回の日本代表は、スピーディーなパス回しと、ハリルホジッチ前監督が追求していた縦への速さがうまく融合した魅力あるサッカーができていた。

「勇気持って自分たちがチャレンジして、次につながる戦いができたと思う。10年、14年、18年。さまざまな戦い方をしてきたけれど、一歩一歩進んでいるなっていう感覚がある」。少しずつ前に進み、すべてを出し切ってきた。

「3回のワールドカップのうち、今回が一番いい状態で臨めた」というコンディション面の優位性も大きかった。

直前合宿で猛烈な走り込みをしたザックジャパン、毎年5~6月に海外組だけを集めて負荷の高いトレーニングを行ったハリルジャパンに比べると、今回の西野ジャパンは明らかにスロー調整で、大会を通して選手たちが走り抜けるのかという不安も拭えなかった。しかし、結果的にはコンディション面の目立った問題は起きず、長谷部自身も10㎞半ばの走行距離を毎試合記録した。早川直樹コンディショニングコーチのデータ計測を基にした負荷の調整が奏功したのも、34歳のベテランボランチにとっては追い風になった。

こうしたさまざまな要素が前向きに絡み合い、長谷部は8強の壁こそ破れなかったものの、一定の達成感とともに、国際Aマッチ114試合という歴代5位の数字を残してきた愛すべき代表から退くことになった。

日本代表史上最高のキャプテンが紡いできた思いを、未来を担う若い世代はしっかりと引き継ぎ、さらなる高みを目指さなければならない。そのためにもロシアで直面した課題を一つひとつ克服していくことが求められる。

■結果を出してきた世代が去った後に

例えばベルギー戦で日本は2点をリードした後、本気の相手を目の当たりにしてミスが増え、精神的脆さを露呈した。そういった細かい部分を改善していくしか、先に進む術はない。それは長谷部自身も実感している。

「1失点目のちょっと前のプレーで、自分たちがボールキープしていて、自分からサイドにパスを出そうとした時に(香川)真司に当たってしまった。そこからミスが続いて失点になった。そういうことがこの大舞台では大きく流れを変える、それを自分自身もあらためて痛感した」

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目まぐるしく状況が変化しても、つねに平常心でミスなく戦う。それが、次のステージに進むためのカギなのは確かだ。

サッカースタイルやトレンドは急速に変化している。そこに適応し、実践できる臨機応変さや対応力も磨いていかなければならない。

「サッカーは生き物。どんどん対応していかなければいけない」と長谷部も強調していたが、そういう選手が数多く出てきてこそ、日本は新たな領域に足を踏み入れることができるのだ。

こ8年間は長谷部、本田を筆頭に、欧州で実績を積み上げ、結果を出してきた選手が軸を担ってきた。彼らが去るこの先は、違った人間たちがそうならなければいけない。

新時代の担い手たちも苦悩する場面は数多く出てくるだろう。その時こそ、「長谷部誠」という希代のリーダーがやっていた行動やプレーを思い出すべきだ。

日本代表の模範的存在として8年間トップに君臨した名選手の一挙手一投足を今一度、脳裏に焼き付け、今後の糧にしていくこと。それを先々の選手たちには強く求めたい。

文=元川悦子

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