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相手の急所を突くナナメのホットライン。浦和の狙いがピタリとハマった理由

■練習から徹底していたある「狙い」

浦和レッズは16日の明治安田生命J1リーグ第26節で横浜F・マリノスに2-1で勝利。リーグ戦4試合ぶりの白星をつかんだ。横浜FMにボールを支配される劣勢のなかで、決勝点につながったのは、練習から徹底していたある「狙い」だった。

浦和の狙いはスタートから明らかだった。序盤から徹底してサイドチェンジと裏を突くロングボールを展開。後半に決まった武藤雄樹の決勝ゴールは、まさにその形から生まれている。

サイドのウイングバックが高い位置を取り、後方からピッチを広く使ったサイドチェンジ、受けたウイングバックやシャドーが中に切り込む形はレッズの強みでもある。しかし、連敗していた直近2試合では、そこが上手くハマらず攻撃は停滞していた。

この決勝ゴールのシーンは、横浜FM戦を前にしたトレーニングで徹底していた形だった。ダブルボランチ、または3バックからウィングバックに対角線のサイドチェンジを供給する。加えて、裏へ抜け出した2シャドーにロングボールを入れる。紅白戦でオズワルド・オリヴェイラ監督は、何度もプレーを止めて選手たちに指示。前掛かりになりがちな横浜FMに対して、しつこく裏を突くことがチームとして徹底されていた。

■形にならなかった前半

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この試みは、試合序盤から何度も見ることができた。

最終ライン中央に入ったマウリシオが何度も対角線のロングボールで、サイド目一杯に張る左の宇賀神、あるいは右の橋岡に展開。また、相手のセットプレーの際は、スピードのあるマルティノスを最前線に残して、高速カウンターをうかがい続けた。

全員の意思統一は明らかだったが、前半はマルティノスになかなか収まらず、横浜FMのビルドアップに手こずる場面が増え、マルティノスはなかなか前を向けない。狙いの形をチャンスにつなげることはできなかったが、前半終了間際にセットプレーのこぼれ球から宇賀神が決めてリードを奪った。

ハーフタイム、大槻毅ヘッドコーチが動く。マルティノスを下げて、18歳の荻原拓也を投入。スピードのあるルーキーにその役割を託した。

「マルちゃんは守備で前からアプローチをかけていたが、積極性の裏返し」(大槻HC)のようになり、本来のボールを収める役割、裏を取る動きを遂行できなかった。

■耐え抜いた後半。試合を決めた1本のパス

しかし、後半はより前傾姿勢を強める横浜FMに前半にも増して守勢に回る展開となる。圧倒的にボールを保持され、セカンドボールも中々奪えない。ついには横浜FMの圧力に耐えきれず、69分、途中出場のウーゴ・ヴィエイラに決められ追いつかれた。

73分、岩波のインターセプトから青木。受けた青木は裏へ抜け出す興梠へロングボールを送る。これは飛び出していたGK飯倉大樹がクリア。すると、6分後に「狙い」がついに奏功する。再び青木がボールを受けると、今度抜け出していたのは武藤。ロングボールを胸トラップで収めると飯倉との1対1を制し、冷静にゴールへ流し込んだ。

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耐えに耐え抜き、ワンチャンスで奪った決勝点だった。「マリノスはラインが高いので、裏を狙おうと話していた。どこかで一発狙ってくれとずっと言っていたので、青木が一番ベストなタイミングでボールを届けてくれた」と武藤は振り返る。そして、「練習から攻め方、形は作れていました。ニア奥からのスルーパスはトライしていましたし、そういうイメージはチーム全体で持っていました」と続けた。

振り返れば、紅白戦でのゴールも青木と武藤のホットラインからだった。「練習中からずっと言っていたので、その通りになりました。(パスを)出して良かったと思います」と、出し手の青木も結果に安堵の表情を浮かべた。

「厳しいゲームで後半押し込まれたが、得点自体は2点とも想定内、というかトレーニングで準備した形だった。オズワルドがトレーニングでやっていた形がそのまま出たし、それはスタッフも含めて、監督を中心に選手とともに作り上げたものだと思います。一つのプレーに対して、みんなで準備していたということ」。代行監督を務めた大槻ヘッドコーチもそう言って練習から一貫した「狙い」で奪ったゴールを評価した。

上位へ再浮上するのか、残留争いに巻き込まれるのか。指揮官不在で臨んだ正念場の一番で、トレーニングから継続してきたことをしっかりと結果につないだ浦和。試合当日の16日に29歳の誕生日を迎えた青木は、終始リラックスした表情も最後にこう言って締めた。

「また良い練習をして、次の試合に臨めればと思います」

日々の積み重ねなくして、勝利はない――。

リーグ戦残りは8試合でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場圏となる3位まで7ポイント。まだ諦める時期ではない。ゴールを量産していたファブリシオの長期離脱など、ケガ人続出で選手事情は苦しいが、次節にはオリヴェイラ監督が帰ってくる。

ホーム・埼スタに戻って対峙するのは、電撃監督交代を発表したばかりのヴィッセル神戸。その差は1ポイントと、まだまだ気が抜けない戦いが続く。チームとしての狙いを定めて、突き進んでいけばおのずと上位の背中は見えてくる。

取材・文=大西勇輝(Goal編集部)

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