『監督力』はやはり大きい。憲剛が振り返るロシアW杯、優勝国フランス【中村憲剛のMSN】

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(C)Getty Images
川崎フロンターレの中村憲剛が海外サッカーについて語る連載インタビュー「中村憲剛のMSN(マジで 好きなヤツ ノミネート)」。今回から3回連続でロシア・ワールドカップを振り返っていただきます。第1回は優勝国フランスについて。

皆さん、こんにちは。中村憲剛です。

先日、ロシア・ワールドカップがフィナーレを迎えました。そこで今回から3つのテーマに分けて、僕なりにロシア大会を総括してみたいと思います。1回目はまず、優勝国のフランスです。ホスト国を務めた1998年大会以来、通算2度目の栄冠を手にしました。いったい、勝因は何だったのでしょうか。ここであらためて考察していきましょう。

■選手たちの足し算や掛け算、その和を最大値へ

今回のフランスは、あらかじめ「こういうスタイルで戦おう」と決めていたような印象がありませんでした。手元にいる選手たちの足し算や掛け算、その和をいかに最大値へ引き上げるか――そこをディディエ・デシャン監督が腐心して作り上げたチームだったのかなと。

ただうまい選手を並べたわけでもないし、若い選手だらけというわけでもない。各々の特長を引き出し合う補完性に優れたチームでした。実際、攻守のバランスは非常に高かったと思います。

正直、オーストラリアとの初戦(2○1)を観たときには「大丈夫かな?」と思いました。ウイングにウスマン・デンベレ(バルセロナ)、インサイドMFにコランタン・トリッソ(バイエルン・ミュンヘン)という若い二人のタレントを抜てきしましたが、思うようにいかず、デシャンはすぐに立て直しを図りました。

ペルーとの第2戦(1○0)でデンベレとトリッソをサブに回し、1トップにオリヴィエ・ジルー(チェルシー)、左サイドMFにブレーズ・マテュイディ(ユベントス)という実績ある選手を先発で起用してします。これでチームはかなり落ち着きました。一つのターニングポイントだったと思います。

そこからの戦いぶりは盤石というよりも、相手の出方を見つつ、自分たちの武器をしっかり使う。その武器が何かと言えば、もちろんキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)です。

特に決勝トーナメントに入ってから猛威を振るいましたね。右のアウトサイドに張って、相手の左サイドバックを牽制しつつ、機に乗じて鋭いカウンターアタックを仕掛けていく。あれがあると、チーム全体がディフェンスに軸足を置くことができるんですよね。反撃へ転じる際に、そこまで人数や手数をかけずに済むから、チームに余裕が生まれる。

実際、守りに入ったときの強さは頭抜けていました。いかにもデシャンのチームという感じです。デシャンがキャプテンだった1998年大会も鉄壁のディフェンスに強みがありました。ジネディーヌ・ジダンという偉才を軸にしながらも、全員がハードワークするチームでしたから。

華麗にパスをつなぐ“シャンパン・フットボール”ではテクニシャンの存在が光りましたが、当時のチームはフィジカルと運動能力に優れたハードワーカーの集まりでした。言わば“脱シャンパン”で初のワールドカップ制覇を果たしたわけです。

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■“勝つ術”を知る指揮官とセンターラインの強さ

デシャンには、その成功体験がある。これすれば勝てる――というモノが。その経験に裏付けられた自信が大きいと思います。

特に決勝トーナメントに入ってからのデシャンの采配に、それが感じられました。難しい相手が続きましたからね。1回戦(4○3)のアルゼンチンと準々決勝(2○0)のウルグアイは南米の強豪で、どちらも歴代優勝国でした。さらに準決勝(1○0)は本命ブラジルを破って勝ち上がってきた優勝候補のベルギーとの対戦でしたから、楽な相手は一つもなかったと思います。

チーム構成で言えば、センターラインがしっかりしていた印象が強いですね。トップ下がアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリ―)、ダブルボランチがポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)とヌゴロ・カンテ(チェルシー)、センターバックがラファエル・ヴァラン(レアル・マドリ―)とサムエル・ウムティティ(バルセロナ)、そしてGKがキャプテンのウーゴ・ロリス(トッテナム)。

個人的にフランスのMVPはグリーズマンだと思っていますが、鉄壁のディフェンスを支えたという意味でボランチのカンテと2センターバックの働きは大きかったなと。特にヴァランはレアル・マドリーで、ウムティティはバルセロナで守備の中心を担っている。両選手ともまだ若いですが(ヴァランは25歳、ウムティティは24歳)、すでに世界最高峰のクラブで実力を認められているわけです。しかも、守りだけではなく、ヴァランはウルグアイ戦で貴重な先制点を、ウムティティはベルギー戦で値千金の決勝点を、それぞれヘディングで決めていますから、申し分のない働きでしょう。

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もう一つ触れておきたいのがデシャンの潔さです。ピッチ上で嫌な雰囲気を感じたら、いつまでも執着せず、スパっと変える。先ほどの選手起用もそう。あとはボールを握る力があっても、相手の特長や試合展開、点差、時間帯といった状況に応じて、がっちり守りを固めつつカウンターアタックを狙っていく。

前線にムバッペがいてこそ可能になる側面もありますが、人や形にこだわらず、最善の手が打てる。選手時代の輝かしいキャリアに加えて、マルチェロ・リッピ(イタリア)といった名将たちに仕える中で“勝つ術”を学んできた証でしょうね。

もはや、ひたすら守りを固めてカウンターを狙うだけでも、ボールを握って攻め続けるだけでも勝つのは難しい。それらを、いかに状況に応じて使い分けるか。臨機応変に戦うことで勝つ確率を高めたフランスは、その象徴だったように思います。

その意味でも、デシャンの“勝たせる手腕”――この連載でも何度か指摘している『監督力』は、やはり大きいなと。それが他の強豪国とのわずかな差や違いを生み出して、フランスを世界一に導いたような気がします。

構成=北條 聡

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