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疑いを払拭したC・ロナウド、チームを超越した圧倒的得点力でマドリーを成功へ…

強烈なハットトリックを完成させたあと、彼は微笑み、口に両手の人差し指を口にあてて振る仕草で、忍耐を忘れがちなサンティアゴ・ベルナベウの観客にメッセージを送った。ファンたちは二度と彼を疑ってはいけない。

ここ数週間で、彼にとっては“平均”ともいえるシーズン35ゴール目に一気に到達した。これで、レアル・マドリーでは42度目のハットトリック、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントで50ゴール、そしてこの大会の準決勝で決めた13個目のゴールとなった。

疑うことなきMOM級の活躍で、クリスティアーノ・ロナウドは再びマドリーをCL優勝へ導こうとしている。

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ロナウドがこの試合で最初の得点を決めた時点で、記録には偉大な数字が打ち立てられていた。そのゴールはロナウドがCLで決めた101ゴール目だったのである。ネットを揺らした相手であり、同都市のライバルでもあるアトレティコ・マドリーがCLで記録しているのがクラブ全体で通算100ゴールにとどまるのだから、その数字の偉大さが際立つ。この夜、アトレティコの通算記録は100のまま変化がなかった一方、彼はさらに102個目、103個目のゴールを決めてみせた。

アトレティコは、同都市のライバルと欧州の大会で対戦する際、何か強力な呪いにでもかかっているかのような状態が続いている。4年連続で、彼らの欧州大陸での戴冠という野望はマドリーによって阻まれようとしている。

彼らはマドリーを前にすると神経質になってしまうのだろうか、ロナウドという記録を打ち立て続けるストライカーに対してある種の恐怖心さえ募らせているかもしれない。

彼はCLで6か月もの間ゴールなしという干ばつ状態が続いていたが、バイエルン・ミュンヘンとの準々決勝で2試合合計5ゴールと、突如として火を噴いた。まさに今ピークを迎えているのかと言うほど、ペナルティーボックス内での動きの良さは敏捷性に溢れ、過去最高とも呼べる。

確かに年を重ね、運動量が減ったことは否めない。事実として、現在マドリーでロナウドよりボールタッチ数が少ないのはGKケイラー・ナバス、控えのDFナチョとMFマルコス・アセンシオだけだ。しかし彼のプレーは、どれだけボールに触ったかではなく、どのようにボールに絡んだかで評価されるものになってきている。

アトレティコはCLでの野望に向けて、得意の強固な守備で壁を築こうとした。だが火曜日に彼らが作り上げたのは、ドナルド・トランプ大統領がアメリカ合衆国とメキシコを分断するべく計画しているみじめな壁のようだった。ロナウドは最初のゴールでその壁を飛び越え、2ゴール目ですり抜け、そして3ゴール目で回り込んでみせた。確かにすべてのゴールは彼にボールを供給したパサーがいてこそ実現できたものだが、すべてのシーンで彼にボールが渡ってしまえば、ただでは済まないことを証明している。

この試合では、もう一人の背番号7が世界最高とされるその評判に応えようとしていた。だがFWアントワーヌ・グリエズマンは、特に効果的な貢献ができないまま、ビッグゲームを決定づける相手エースのプレーをただ眺めることしかできなかった。大きなパフォーマンスの差は、両者の間にどうしようもないクオリティーの差異があることを強調した。チームの機能不全を、7番を背負うフランス人ストライカーの責任にするのは少々不公平とも言えるかもしれない。

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ジネディーヌ・ジダン監督のマドリーの攻略法は明らかになったと、多くの人が考えていた。マドリーは今シーズン勝利を続けて好調を維持してはいたが、そのほとんどを印象的なチームプレーではなく個人のアイデア任せにしてきたからだ。

対するアトレティコは、良く組織され、無慈悲で、そしてこの難しい心理的なハードルを越えようと熱望していた。ロナウドを抑えることさえできれば、彼らにもチャンスはあっただろう。

しかし、結局のところロナウドはチームや、そして個人のアイディアさえ超越し、絶対的な存在となっているのだ。マドリーのMFトニ・クロースは『BTスポーツ』に次のように語った。

「ロナウドのような選手がチームにいるというのは僕らにとって素晴らしいことだよ。いかに良い守備ができて、中盤を支配できたとしても、結局試合では得点を決める選手が必要だからね。彼はそれをやってくれるんだ。準々決勝で5点も決めて、そして今日はハットトリックだ。まったく信じられないことだし、僕たちチームにとって本当に重要な選手だよ」

どうやら、ロナウドとジダンはロジックを無視するやり方を築き上げつつある。CLで立て続けにハットトリックを決めてしまう、それも相手はマルメやレギア・ワルシャワ、シャフタール・ドネツクではなく、バイエルンやアトレティコといった欧州トップクラブを相手に、である。しかもロナウドがディエゴ・シメオネのチームからハットトリックを奪ったのは今シーズン2回目である。

彼を疑ってはいけない。二度とロナウドの実力を疑ってはいけないのだ。ロナウドさえいれば、CL史上初の連覇も可能か、そう思わせるほどの絶対的な存在感をチーム内で発揮している。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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