「しっかりここを乗り越えて最後に向かえる」
川崎フロンターレMF中村憲剛が、29日に行われた明治安田生命J1リーグ第33節の浦和レッズ戦後に、鬼門・埼スタ攻略に安堵の表情を浮かべた。
川崎Fにとって、埼玉スタジアム2002は今季2度苦杯を喫した地だ。AFCチャンピオンズリーグ準々決勝で浦和レッズに大逆転を許し、無念のベスト8敗退。そして、記憶に新しいJリーグYBCルヴァンカップ決勝でセレッソ大阪に0-2で敗れ、悲願の初タイトルを逃したのもこの埼スタだった。
「ここで2回苦汁をなめているんで、ここでまた逃す可能性もあったわけですから、プレッシャーが掛かるなかでちゃんと跳ね除けて先に進んだことは良かった」
14分に右サイドを突破した家長昭博のクロスを小林悠が押し込んで、川崎Fが先制に成功。しかし、その後は「相手の出方をもろに受けた」と中村が振り返るように、チームらしいアグレッシブで迫力のあるサッカーが展開できなかった。
それでも中村は「内容が良くても引き分け以下だったら、今日で終わってた。内容が良くて勝てればもちろん良いですけど、僕らはそんなことを言ってられない状況なんで」と、あくまでも「勝つことがすべて」であることを強調した。
そんな川崎Fは最終戦をホーム・等々力陸上競技場で戦う。この日もホーム・浦和サポーターの声援に負けじと、試合前から試合後まで川崎Fサポーターが大声援を送り続けた。埼スタでの二度の悔しい思いをサポーターとともに乗り越え、本拠地に帰還することができる。
「最後もみんなで気持ちを合わせてね。ホームなので、サポーターも後押ししてくれると思うので、みんなで頑張ります」
戦うのは決して選手だけではない。「みんなで」という中村の言葉には、川崎Fに関わる全ての人間が“同心協力”のもと、悲願の初タイトルを目指す意味が込められている。その中村の思いに応えるべく、サポーターも最後まで選手を鼓舞し続け、共闘する覚悟はできている。
首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差を「2」に縮め、逆転優勝へ望みをつないだ川崎F。さらに、最終節で鹿島が引き分け以下に終わり、川崎Fが勝利した場合は、得失点差で川崎Fが勝り、逆転で初タイトルを手にすることができる。いわば、鹿島も川崎Fも勝たなければいけないプレッシャーがあるということだ。
決勝点の小林も「とにかく自分たちが勝つこと」と語れば、阿部浩之も「ホームで最後にいい試合して、勝って締めくくるだけ」と、大宮戦ではとにかく勝利だけを渇望している。追う立場だからこそ、勝ってプレッシャーをかけられるアドバンテージもある。鬼門・埼スタの第一関門はクリアした。残るはあと1つ。「最後までやるだけ」と中村は飽くなき初タイトルへの挑戦を続ける意思を見せた。
人事を尽くして天命を待つ――。12月2日、“等々力劇場”ならぬ“等々力ミラクル”を起こす準備はできている。