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【徹底分析】クラシコはなぜ一方的な展開に? スペイン紙分析担当が「レアルの残酷な現実」指摘

バルセロナとレアル・マドリーによる今季初のクラシコは、5-1でバルセロナが完勝。カンプ・ノウでのライバル対決は、意外にも大差がつくこととなった。

30分足らずでホームチームが2点を先行すると、後半レアル・マドリーが1点差に詰め寄ったが、後半最後の15分間で3ゴールを追加。不振に苦しむ最大のライバルを5発で粉砕し、クレ(バルセロナサポーターの愛称)にとっては最高の夜となっただろう。

では28日のクラシコで、ピッチ上では何が起きていたのだろうか。バルセロナは何をねらい、どのように得点を重ねていったのだろうか。そして、なぜレアル・マドリーは大量失点してしまったのだろうか。

今回は、スペイン大手紙『as』で試合分析担当を務めるハビ・シジェスに、試合の分析を依頼。世界中が注目した一戦を紐解いてもらった。

分析・文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

※両チームのフォーメーションは以下の通り

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■レアル・マドリーにとって最悪のクラシコ

こうなるしかなかった。フットボールの論理がバルセロナの背中を押して、ロペテギに判決を下した。レアル・マドリーにとっては状況を一変させられるかもしれないクラシコだったが、結果は裏目に、いや、果たせるかな最悪のものとなった。

バルセロナの大量得点は、様々な観点から見つめれば、おそらく大袈裟なものと説明できる。しかしながら、それにも増してマドリーのパフォーマンスは曖昧だった。3カ月前、ロペテギが監督に就任した際に公言していたことは、ほとんどぼやけてしまった。高い位置からのプレッシングも、素早く確実なパス回しも、信頼の置ける守備も……。マドリーの選手個々人、そしてチームとしての悪い部分が、バルセロナの本拠地カンプ・ノウで膨れ上がった。バルセロナは彼らの欠陥を白日の下に晒すために、特別なことをする必要もなかったのだ。

スターティングメンバーが発表された時点から、両チームが求めるものは明らかだった。バルベルデは前試合のインテル戦で成功を収めた楽譜の再演奏、つまりは右ウイングをラフィーニャとしてボールと時間を支配することを目指し、対するロペテギも彼と同じ譜面を用意していた。結果として、奏功したのは片一方の監督のみである。

■カギを握った中央での争い。組織的なバルサ、ずさんなマドリー

RAKITIC BARCELONA SEVILLA LALIGAGETTY IMAGES

リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドなしのクラシコは、ペナルティーエリアよりもピッチ中央でのプレーが鍵を握ることになり、バルセロナが前半を自分たちの望むような展開としている。セルヒオ・ブスケッツ、イヴァン・ラキティッチ、アルトゥールは、まるで束縛されていないかのようなプレーを披露。余裕を持って前を向き、パスコースをいとも簡単に見つけた。前半の彼ら3人のパスミスはわずか5本のみで、チームのポゼッション率は61.4%を記録。ただ、それがマドリーにとって不都合なものになってはいけなかった。彼らはバルセロナの攻撃に適切な守備で応じなかったのである。

ラフィーニャ&フィリペ・コウチーニョの両ウイング、さらにラキティッチ&アルトゥールの両インサイドハーフは何度もトニ・クロース、ルカ・モドリッチ、カセミロの背後を取ったが、ロペテギはその状況を回避しようとすらしなかった。白いチームは完全に混乱しており、前線からプレッシングを仕掛けるどころかパスコースも塞がずにいたのだった。極め付けは、右サイドのごたごたである。

ロペテギは当初、ギャレス・ベイルにジョルディ・アルバを抑える役割を与えていたはずだが、このウェールズ代表MFはいつものように前線に残り続けて、バルセロナの左サイドバックを一切追おうとしなかった。そうなると右サイドバックのナチョが対応することになるが、こちらは本職がセンターバックのためか中央に寄り過ぎ、J・アルバのオーバーラップを完全にほったらかしにしていた。こうしてバルセロナはコウチーニョの先制点、ルイス・スアレスのPK奪取を含め、J・アルバを起点として5回も決定的な場面を迎えることに成功。マドリーが気にも留めなかった左サイドバックは、アルトゥールから14本、ブスケッツから9本、ラキティッチから7本ものパスを受けていた。

またバルセロナの守備は、マドリーのずさんなそれとはまったく異なっていた。彼らはこれまで見せてきたアグレッシブかつ連動性あるプレッシングをより丹念に実行し、マドリーを自陣に押し込めている。セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァランがビルドアップで繰り返しミスをするなど、マドリーの連係は鈍重そのものであり、万全な形で攻撃を仕掛けることはかなわなかった。

■メッシ不在を克服したバルサ。残酷な現実を突きつけられたマドリー

Lionel Messi Barcelona 2018-19

ロペテギはすべての面でバルセロナに劣っていた前半を受けて、後半に動きを見せた。カセミロをナチョ、S・ラモスの間に据えて3CBとし、精彩を欠き続けたヴァランとの交代で出場させたルーカス・バスケス、またマルセロを中盤に位置させて3−4−3にシステムを変更したのだった。これにより、バルセロナはJ・アルバが自由にオーバーラップできなくなり、またアルトゥール&ラキティッチはモドリッチ&クロースに抑えられた。

マドリーはポゼッション率を59%まで引き上げて、ティボー・クルトワよりもマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンのゴールに近づいている。その攻撃は4回の内3回がサイドで展開されたが、しかしやはり決定力が不足していた。マドリーは15本ものシュートを放ちながらも、その取れ高はわずか1得点のみ。それも3試合連続でマルセロのゴールに頼ったのだった。

マドリーは再び、C・ロナウドが空けた穴の大きさを実感することになった。そして、そのフットボール的な欠損の責任の所在は、ロペテギではなくクラブ会長のフロレンティーノ・ペレスにあるべきだ。

バルセロナは時間とともにマドリーの付け焼刃とも言える3−4−3のシステムに慣れて、安定を取り戻す。そして、ここ最近に決定力を取り戻したL・スアレスを主役としたカウンターでもって、大量得点を実現した。今季開幕当初こそもたついたカタルーニャのチームだが、バルベルデはチャビ・エルナンデスの後継ともされるアルトゥールをはめ込み、不均衡な部分を是正。指揮官はもう、メッシあり、メッシなしの両方でプレーする方法を理解している。

片やマドリーには、リーダーシップも、システムも、守備も、攻撃のアイデアも存在していない。クラシコで、メッシがいないバルセロナに圧倒されるなど、これ以上に残酷な現実は存在しない。ロペテギというプランは失敗に終わったのだ。

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