2017-07-02-cerezo-kenyu sugimoto(C)Getty Images for DAZN

好調セレッソ大阪、スペインの強豪セビージャ戦へ高まる期待…注目点は?

尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督率いる新生・セレッソ大阪の快進撃が止まらない。7月2日のJ1第17節・FC東京戦も前半にカウンターから1点を失ったものの、後半に入って凄まじい巻き返しを見せ、杉本健勇、松田陸、ソウザの3発で見事に逆転に成功。本拠地・キンチョウスタジアムで生観戦した香川真司(ドルトムント)、乾貴士(エイバル)の両OBも古巣の圧勝に大きな拍手を送っていた。

これでリーグ戦7戦無敗。勝ち点を35まで伸ばし、12年ぶりの暫定首位に立った。その後、5日に鹿島アントラーズが勝ち点を積み重ねたことでその座を明け渡したが、前半戦を上位で折り返すのは間違いない。山口蛍は開幕前から「早くJ1残留ラインの勝ち点40を確保したい」と現実的目標をたびたび口にしていたが、そのノルマは今月中にもクリアしてしまいそうな勢いだ。Jリーグルヴァンカップを含めても公式戦10戦負けなしということで、今のセレッソの強さは本物だと言っていい。

そんな状況だけに、17日に迫った「StubHub ワールドマッチ2017」・セビージャ戦がより一層、楽しみになってきた。今年1月まで在籍した古巣対決を心待ちにしていた清武弘嗣が6月25日のJ1第16節・ベガルタ仙台戦で左ハムストリング筋を損傷。全治8週間と診断されたことで、同ゲームへの出場が叶わなくなったのは残念ではあるが、今のセレッソなら清武抜きでも十分、セビージャと興味深い試合ができるはず。「Jリーグのチームが世界トップクラスの相手と対戦できるチャンスはそうそうない」と清武も再三、語っていた通り、今の右肩上がりに成長している現在のチーム力を試す絶好の機会なのは間違いない。尹晶煥監督がどのような陣容を送り出すか分からないが、まずは現状のベストメンバーでガチンコ勝負に打って出てほしい。

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注目点はいくつかあるが、GKキム・ジンヒョン、DF山下達也、マテイ・ヨニッチらJ1屈指の守備陣がどこまで世界トップの攻撃陣を封じられるかがまずはポイントになる。エドゥワルド・ベリッソ新監督率いる新シーズンのセビージャはサミル・ナスリやマティアス・クラネビッテル、ルシアーノ・ビエットといった昨季の主力がチームを去ったが、昨季11ゴールのウィサム・ベン・イェデル、8ゴールのパブロ・サラビア、7ゴールのフランコ・バスケスは今のところ残留している。清武の親友であるスティーブン・エンゾンジもユベントス移籍話が浮上しているものの、最終決定しておらず、今回の日本遠征に参戦する可能性が高い。彼らが織り成すハイレベルの攻めをキッチリと止められれば、後半戦に向けて大きな弾みがつく。山口、ソウザの両ボランチ、前線のアタッカー陣含めて連動した守りを見せたいところだ。

そのうえで、相手から得点を奪えれば理想的。今のセレッソならそれだけの迫力を十分出せるに違いない。FC東京戦で1カ月ぶりのゴールを叩き出した杉本、彼とともに前線でターゲットになっている山村和也、最近は左サイドから鋭い飛び出しを繰り返し見せるようになった柿谷曜一朗らはいずれも高度な決定力を備えている。

特にここへきて調子が一気に上がっている柿谷はブレイクの予感を漂わせている。2015年12月までスイスの名門・バーゼルに在籍した天才アタッカーにとって、今回のセビージャ戦は1年半ぶりのインターナショナルの舞台。日本代表やスイスで蓄積してきた豊富な国際感覚を遺憾なく発揮すべき時である。この試合で自信をつけ、J1後半戦でゴールを重ねていけば、日本代表復帰も現実味を帯びてくる。2014年ブラジルワールドカップも大会1年前の大ブレイクで日の丸の座を勝ち取った彼だから、ロシアに向けての1年間でスパートをかける術を熟知しているはず。マリアーノ・フェレイラ、ニコラス・パレハ、ガブリエル・メルカドらワールドクラスのそうそうたる守備陣を攻略し、再ブレイクにつなげてほしい。

「若い選手たちにとっていい経験になる」と清武が話していた通り、セレッソの若手にとってもセビージャ戦は大きな意味を持つ。今季何度かチャンスを与えられている木本恭生、負傷の癒えた秋山大地、澤上竜二らにとってはUEFAチャンピオンズリーグのレベルを体感する本当にいい機会だ。それを生かさなければもったいたい。

尹晶煥監督のことだから、U−23で活動している高校生の瀬古歩夢、喜田陽といった10代選手にチャンスを与える可能性もゼロではない。そうなれば非常に面白い。丸岡満がボルシア・ドルトムントU−23に在籍していた2年前に来日し、川崎フロンターレ戦で見る者を驚かせたことがあったが、若い選手というのは大舞台で驚くべき仕事をすることがある。丸岡を含め、ここまで結果を残せていない20歳前後の面々が浮上のきっかけをつかんだら最高だ。

見どころ満載のセビージャ戦まで2週間。セレッソは7月8日に柏レイソルとの上位対決を迎える。中断前ラストとなるこの一戦で勝つか負けるかは今後に大きな影響をもたらす。柏も2日の鹿島戦を2−3で落としているだけに、次戦は気合を入れてのぞんでくるに違いない。その相手を撃破し、5月6日のアウェー戦黒星のリベンジを果たせれば、セビージャ戦もさらに盛り上がる。選手たちには今の勢いをできるだけ長く持続してほしいものである。

文=元川悦子

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