2017-09-21-hara

【原博実の超現場日記/第8回】ポポヴィッチさんと町田へ…雨中で試合観戦のサポーターに感謝

明治安田生命J2リーグ第33節
FC町田ゼルビア 0-0 モンテディオ山形

先日、ランコ・ポポヴィッチさんがJリーグを訪ねてきてくれた。現在はフリーの身。直近はタイ・プレミアリーグのブリーラム・ユナイテッド、その前はスペインのレアル・サラゴサで指揮を執った。日本でも大分トリニータ、FC町田ゼルビア、FC東京、セレッソ大阪などJリーグの監督経験は長い。

まずタイの選手の印象を聞いてみると、「ずいぶんうまくなっている」と評価。ただし、その一方で「リズムが悪くなると規律を守らなくなり、個人プレーに走ってしまう」と苦言を呈していた。総じて言えるのは、タイ経済は発展しており、リーグのレベル、練習環境は日進月歩で良くなっていて未来は明るいとのこと。

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ポポヴィッチさんは現在、家族とサラゴサに住んでいるそう。「スペインに来ることがあったらサラゴサにも来てほしい。いろいろなクラブに知り合いがいるから、いつでも連絡して」とおっしゃってくれた。ピッチ上では常にファイティングスピリッツを前面に出している印象だが、普段はすごく紳士な方だ。

ポポヴィッチさんは旧ユーゴスラヴィアのコソボ出身。旧ユーゴスラビア系の指導者は世界中にいるが、その中でも一番有名だと思われるのが、ボラ・ミルチノヴィッチさんだ。メキシコ、コスタリカ、アメリカ、ナイジェリア、中国と5つもの国の代表を率いてFIFAワールドカップに出場した実績を持つ。海外で代表チームが不振になると、新しい監督候補として必ず名前が挙がるので、日本でもご存じの方は少なくないだろう。彼自身、「いつでも監督を引き受けるよ」という顔をしている。旧ユーゴスラヴィア系の人は総じて言語習得能力が高いと思う。何よりたくましいし、交友関係が広い。

実は以前、電話番号を教えたわけでもないのに、ミルチノヴィッチさんからショートメールで売り込みが来たことがある。彼の情報収集能力はどうなっているのだろう。これには本当に驚いた。世界で勝負していくには、そのくらいでなければ。言語も大事だけれど、むしろ積極性、バイタリティがより重要になるのかもしれない。

さて、9月16日はポポヴィッチさんと一緒に町田へ足を運び、モンテディオ山形との明治安田生命J2リーグ第33節を視察。ポポヴィッチさんは試合後、雨の中にもかかわらず町田サポーターから声を掛けられていた。彼もまたJクラブで指揮を執ることがあるのではないかと思った。

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さて、この日は台風18号の影響で町田市立陸上競技場は雨模様。涼しいし、ボールもよく動く。何より悪天候にもかかわらず、山形からも多くのサポーターがスタジアムに集まる。びしょ濡れになりながら、大きな声でモンテディオを応援する姿に感激。本当にありがとう。もちろん、ホームの町田サポーターにも感謝。

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試合については、まずはハイライトから見ていただきたい。長いハイライトだけど、雨の中で戦う両チームの熱気がひしひしと伝わってくる。

この試合では何より両チームのベテランの躍動感が目立った。町田の谷澤達也、中島裕希、髙原寿康。山形の本田拓也、加賀健一。みんながよく動いて、先頭に立って戦っている。スタンドにいても、その熱い気持ちが強く感じられた。町田はここまで14位、山形は12位だが、上位陣と力の差はあまりない。あるとすれば決定力の差か。この日も得点こそ入らなかったが、両チームとも最後まで戦っていた。町田・相馬直樹監督、水戸・木山隆之監督の真面目さがよく出ている試合だったが、もう少しプラスアルファが欲しい。

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例えば町田のセンターバック、増田繁人。190センチの長身を武器に、アルビレックス新潟でレギュラー獲得まであと一歩とのところだった。その高さをさらに自分の武器として磨きを掛けてほしい。もっとヘディングは強くなれるはず。現状では田中マルクス闘莉王(京都サンガF.C.)のほうが数段強い。守備面でももっと良いポジショニングが取れれば、自分の身体の強さをより生かせるはず。

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さらに言えば、吉田眞紀人。スケールの大きなプレーを時折見せているものの、まだ潜在能力を生かしきれていない。すべてはゴールから逆算して、このエリアでは何をするべきなのか、どうやったらペナルティーエリアの中でもっと仕事ができるのか。そのために自分が最もやるべき仕事、武器は何なのか考えてほしい。まずは自分の頭の中をどう整理して、練習するのか。まだまだ伸びしろはある。この二人が伸びれば、町田も上位に上がれるはず。頑張れ、増田、吉田、そしてFC町田ゼルビア!

そしてモンテディオ山形。鈴木雄斗、佐藤優平、瀬沼優司、阪野豊史も同じようにもっと得点を取れるはずだし、成長できると期待している。

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何よりも今日はこれだけ激しい雨の中で観戦に来てくれたサポーターに感謝したい。監督をしていた時、雨に降られてびしょ濡れでの観戦を本当に申し訳ないと思っていた気持ちを思い出した。だから今日は監督目線のレポートでした。

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9月中旬、チームも選手も監督も、一試合一試合大切なゲームが続く。

文=原 博実

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