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明治安田生命J2リーグ

【原博実の超現場日記/第3回】君は前田大然、ガブリエル・シャビエルを見たことがあるか

16:00 JST 2017/09/07
2017-08-30-hiromihara
Jリーグ副理事長の原博実氏がスタジアムや視察先で見たもの、感じたことを率直に語る『超現場日記』。第3回は9月2日に行われた明治安田生命J2リーグ第31節の水戸ホーリーホックvs名古屋グランパスを視察した。

9月2日、明治安田生命J2リーグ第31節 水戸1-1名古屋(ケーズデンキスタジアム水戸)

水戸駅に到着すると、東京よりもかなり涼しい。スタジアムへの道中、日本三大名苑の一つである偕楽園を通る。大きな池もあった。県庁所在地でメイン駅からこんな近くに広い公園があるのは珍しいのではないか。散歩をしたり、ランニングをしたり、サイクリングをしたり、市民がそれぞれに楽しんでいる。次回来る時は、このあたりを散歩かランニングでもしたいものだ。市民マラソンブームのご多分に漏れず、昨年からこちらでも水戸マラソンがスタートした。今年も10月に2回目の大会があるという。

そうこうするうちに、スタジアムに到着。スタジアム周りのイベントも活況のようだ。J1優勝経験もある名古屋グランパスとの一戦ということで、スタジアムには9240人ものファン・サポーターが集まった。

ちなみにこの日は「イソザキ自動車サンクスマッチ」ということで、地元の自動車販売店から軽自動車が提供されて、その車体にファン・サポーターが選手たちへのメッセージを書き込むという「らくがきカー」という、あまり見たことがないイベントが行われていた。

「水戸に100年先まで誇れるサッカー専用スタジアムを造ろうぜ!市長」

「市長!我々はJ1に行きたいです!」

試合開始直前に行われた水戸市の高橋靖市長があいさつする間、水戸サポーターがこんな横断幕が掲げていた。

実はこのスタジアムはクラブライセンス制度でJ1基準を満たしておらず、このままでは2位以内入っても昇格できず、J1昇格プレーオフにも参加できない。ウォーミングアップ時に会った“ミスター・ホーリーホック”のGK本間幸司からも「クラブライセンスの件、何とかお願いします」と言われていた。水戸は確実に入場者数を伸ばしているクラブ。この日のスタジアムの雰囲気には、すごく一体感があった。まだまだ伸びしろがあるクラブだからこそ、もっと大きなスタジアムが必要なのではないかと感じた。

ところで皆さん、前田大然という選手を見たことがありますか。松本山雅FCから期限付き移籍で加入している選手なのだが、この日のゴールで10得点目。特徴は半端じゃないスピードと“いがぐり頭”。その前田と斎藤恵太のスピードある2トップが名古屋の最終ラインに激しくプレスをかけ、そこからボールを奪って数多くのチャンスを生み出していく。しかしながら名古屋も元日本代表GK楢﨑正剛を中心に何とか防ぐ。

そんな均衡が破れたのは34分、注目していた前田のゴール。激しい守備からの速攻、水戸にとっては狙いどおりの形だった。

この日は風が強く、寒くてとても半袖では見ていられない。服装のジャッジを誤ってしまった。あまりにも寒いので、ハーフタイム中にスタジアム外のグルメ広場へ赴き、かぼちゃベーコンシチューをゲット。体が芯から温まる。かぼちゃが甘くて美味しいところにベーコンが絶妙。まるでこの日は寒くなるのを予測していたメニュー。ハンバーガーと合わせて食し、後半に備えることにした。

後半から名古屋も売り出し中のガブリエル・シャビエルにボールが集まりだす。この夏、ブラジルの名門クラブ・クルゼイロから加入した小柄で左利きの選手。小回りが利き、リズムを変えられるテクニシャン。ヒールパスや浮き球パスが得意で、トラップがピタッと決まる。そして何よりキックが正確だ。この選手にボールが渡ると名古屋はチャンスとなる。

シャビエル加入後から名古屋は7試合で22点取っているが、そのうち20点近くにシャビエルが絡んでいる。田口泰士とのコンビが良くなっていたが、この水戸戦ではその田口が出場停止。名古屋関係者も「田口の不在が痛い」と言っていた。

後半が進み、名古屋がさらに攻勢をかける。そしてシャビエルのCKから得点が生まれる。彼はCKからのアシストが多い。

水戸もカウンターから前田を中心にチャンスを作るが、どうしても最後のクロス、シュートの精度に欠けるため、得点には至らない。

ただ、前田大然のプレーは本当に面白い。間違いなく「タグ・ホイヤー ヤングガン アワード」の対象になる選手だ。もしシャビエルが、水戸にいたらどんなパスを前田に通すのか……。そんなこと考えるだけでも楽しくなってくる。

試合は1-1の引き分け。おそらく前田大然を見ようと近いうちにまた水戸を訪れることになるだろう。そしてシャビエルも然り。あのトラップや浮き球の柔らかいパス、緩急のつけ方は見る者を魅了する。名古屋で売り出し中の青木亮太も浮き球のボールをうまく使う場面があったが、きっとシャビエルのパスから知らず知らずのうちに学んでいるのだろう。

前田大然にしても、シャビエルにしても、この活躍ぶりからすると、ここからさらにマークがきつくなってくるだろう。それでも前田大然には、こじんまりまとまらずにスクスクとスケールの大きなプレーヤーに育ってほしいと心から願っている。本当に楽しみな選手だ。

そして、かぼちゃベーコンシチューも本当においしかった。大満足の水戸視察だった。栃木出身の私にとっては、乗車したタクシー運転手のなまりも、どこか懐かしさを感じた。

文=原 博実