「人は理屈だけでは動かない」。監督力はタレント力以上にクラブの命運を左右する【中村憲剛のMSN】

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(C)青山知雄
川崎フロンターレの中村憲剛が海外サッカーについて語る連載インタビュー「中村憲剛のMSN(マジで 好きなヤツ ノミネート)」。欧州サッカー第2弾は「監督」について掘り下げます。

みなさん、こんにちは。中村憲剛です。前回に引き続き、ヨーロッパのサッカーシーンから個人的に気になるテーマについて語ってみたいと思います。今回はズバリ、監督論です。ワールドカップの副作用に悩まされる難しい状況をどう乗り越えていくか。例年以上に卓越した手腕、マネジメント力が問われるシーズンでしょう。一夜の運や一時の勢いだけでは勝ち続けるのが難しい。そんなわけでタレント力以上に「監督力」がクラブの命運を大きく左右すると思います。

■マンC、チェルシー…選手たちが楽しそうに見える

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▲チェルシーのマウリツィオ・サッリ監督

たとえばプレミアリーグ(イングランド)も、そうした傾向が色濃く表れているような気がします。開幕前にも予想しましたが、やっぱり当代屈指の名将に率いられたマンチェスター・シティとリヴァプールは強い。強豪ぞろいのなかでも、頭ひとつ抜けている印象です。前者はペップ(グアルディオラ/スペイン)の、後者は(ユルゲン)クロップ(ドイツ)の指導力によるところが大きい。あらためて、そう思いますね。ブレず、揺るがず。もはや少々のことでは壊れない。

少し厳しいのはモウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド/ポルトガル)でしょうか。十八番でもあった「ゴール前にバスを置く」というやり方は、なかなか通用しない時代に入ってきていると思います。その打開策をペップたちが提示しはじめていますから。少し前まではモウリーニョの戦い方が対ポゼッションチームへの最善策、最先端だったはずなのに…やはり現代サッカーにおける戦術トレンドの移り変わりの猛烈なスピード感を感じざるを得ないです。

逆に面白いのはサッリ(チェルシー監督/イタリア)。コンテ(アントニオ)前監督(イタリア)のときから戦い方が様変わりした序盤は面白いように崩して点を取って勝つ試合が見られました。最近、手のうち(パスワークの仕組み)が分析され始めたことで苦しむケースも増えてきています。キーパーソンでもあるボランチのジョルジーニョをあからさまにつぶしにくるチームが増えましたから。まだジョルジーニョを消されたときの解を組み合わせも含め模索している段階なのかなと思います。

ただまだ就任1年目ですからね。保有選手の力量(長所や短所)や特徴などを精査している段階だと思います。なので、伸びシロはたっぷりある。ペップのマンC1年目と比べても、チームとして機能している印象です。

何よりチェルシーの選手たちがプレーしていて楽しそうに見えます。試合の内容が様変わりしたこともあると思いますが。出ている選手全員が前向きにプレーしているように見受けられます。だからこそ、うまくなるし、守備のハードワークも全力で取り組める。そういう雰囲気のなかでトレーニングができているんでしょうかね。あくまで選手目線による想像ですが。

マンCの選手たちもペップのあのサッカーを楽しんでいるような気がします。たとえペップの要求が細かく、多岐にわたっても、それを選手が楽しいと感じれば、ポジティブに受け止めるし、うまくなろうという欲や向上心も刺激される。実際、ペップのサッカーにあまり向いているようには見えなかったフェルナンジーニョやコンパニあたりも以前とくらべると明らかにうまくなっていますからね。そこがすごい。

■いかに選手たちをその気にさせるか

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▲セルヒオ・アグエロ(左)とジョゼップ・グアルディオラ監督

サッカーに限った話ではないですが、人って必ずしも理屈だけでは動きませんからね。楽しいと感じたり、意気に感じたり、感情が良い方向に揺さぶられると、少しくらい筋が通らなくても、体力的にきつくても、やれてしまう。いかに選手たちをその気(やる気)にさせるか。それは何も言葉だけとは限らない。トレーニング自体が面白い、ということもある。毎日の練習へ行くのが楽しい、わくわくする。それってすごく大事なことだと思うんです。そういう指導者に憧れます。

勝たせてくれる監督か、力を伸ばしてくれる監督か、力を伸ばしながら勝たせてくれる監督か。ペップは明らかに3番目のタイプ。ただの戦術家ではなく、個々の力(技術)も伸ばしていく。もっと、もっとうまくなるぞ――と。プロになってから、そういう指導者と出会えた選手は幸運でしょう。多くの監督は個人を脇に置いて組織(チーム戦術)の枠組みにはめ込んでいきますから。それも監督の仕事として大事なことです。ただ、それを超えていろんなところを伸ばせる監督がいるチームがやはりリーグでも上のほうにいる印象です。

止める、蹴る――という基本の「き」はプロになるまでに身につけるものでしょうが、いつ、どこで、どのようにボールを止める(蹴る)のか、という細部に踏み込めば、技術はもっと伸びる。個々の技術レベルが上がれば、できることが増えて、組織レベルも上がりますからね。そうした相乗効果によって、ぐんぐん強くなるのがペップのチーム。今シーズンは3年目ですから、徐々にだったものが加速度的に他のチームとの差が生まれ出している気がします。

■勝ち続けるマネジメントに合致したアッレグリ

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▲クリスティアーノ・ロナウド(左)とマッシミリアーノ・アッレグリ監督

もちろん、ペップとは違うタイプですが良い監督はいます。ナポリ(イタリア)のアンチェロッティ(イタリア)はその1人かなと。原則的に前任者のスタイルを踏襲しながら、少しずつ自分流にアレンジしていく。その微調整が抜群にうまい。頭ごなしに「オレ流」を押しつけられると、選手側は拒絶反応を起こしやすいですからね。選手側が前任者のサッカーに不満をもっていなかった場合は特に。だからコーチを後任に昇格させる監督人事は実は理にかなった部分もあると思うんです。

かつてバルサ(スペイン)がペップの後任にビラノバを据えたのも、前任者のスタイルを引き継げることで選手のストレスは少なくて済む、もちろんそこから新監督の色は出てくるのですが大きな方向転換にはならないので個人的には筋の通った人事だと思います。

ユベントス(イタリア)で指揮を執るアッレグリ(イタリア)も高く評価されていますね。彼ほど「監督」という言葉がぴったり当てはまる指導者はいないと個人的には思っています。毎年のように主力の顔ぶれが変わるなかで、毎年きっちりとチームを仕上げて国内リーグの優勝やCLでも上位に導きますから。新陳代謝や世代交代を怠ると、やがて冬の時代が来てしまう。フロントや強化部門はそうならないために常に手を打っている。勝ち続けるためのマネジメントに徹するあたりは、さすが名門だなと思いました。アッレグリもそうしたクラブの在り方にマッチした手腕を発揮している。今シーズンもC・ロナウドという大駒を上手に組み込みましたからね。

またC・ロナウドのほうも「俺に合わせろ」という上から目線ではなく、自らをチームにアジャストさせる姿勢で臨んでいるように見えました。その姿は良い意味で新鮮だったし、超一流とはこういうものかと感心させられました。フロントから名将、大駒、さらには戦い方に至るまで「変わること」を恐れない。その中心として辣腕をふるうアッレグリはもっと評価されてもいいんじゃないでしょうか。今シーズンこそ、チャンピオンズリーグ制覇へ導くことになるかもしれないですね。ペップのマンC、クロップのリバプールと並ぶ候補の一角でしょう。

強豪クラブともなれば、どこも相応のタレントがいます。そうなると、決め手はやっぱり監督でしょう。その手腕によってチームは強くも弱くもなる。最後に笑う指揮官は、いったい誰か。名将たちのつばぜりあいを堪能したいと思っています。

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