乾貴士が成し遂げた快挙とは?バルサ戦で衝撃ゴールも残った課題【海外日本人総括】

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(C)Getty Images
海外で戦うサムライたちは2016−17シーズンをどのように過ごしたのか? 歓喜の瞬間を迎えた者、充実の日々を送った者、葛藤してもがき苦しんだ者……。彼らが過ごした1年を、改めて振り返る。

今季の目標:移籍2年目のチームで確実に主力となる

結果:リーガ38試合中28試合出場3得点

採点:70点

文=森田泰史(スペイン在住ライター)

■移籍2年目は充実のシーズンに

乾貴士のスペイン移籍2年目は、充実のシーズンとなった。これまで日本人が誰も活躍できなかった国で彼は認められ、真の「フットボーラー」への歩みを進めている。

これまで、リーガ・エスパニョーラ1部の舞台で2シーズン続けて主力を張った日本人選手は誰もいなかった。城彰二(バジャドリー)、西澤明訓(エスパニョール)、大久保嘉人(マジョルカ)、中村俊輔(エスパニョール)、家長昭博(マジョルカ)、ハーフナー・マイク(コルドバ)と名だたる選手が参戦してきたにもかかわらず、である。今季は清武弘嗣(セビージャ)が挑戦したが、わずか半年でセレッソ大阪への復帰を決断するに至った。

2年前の夏にフランクフルトからエイバルに移籍した乾は、“鬼門”スペインで激しい競争に身を置くこととなった。昨季はMFケコ・ガイタン(現マラガ)、MFサウール・ベルホン(現オビエド)らと定位置を争い、今季はレアル・マドリーやマンチェスター・ユナイテッドに在籍経験のあるMFペドロ・レオン、MFベベが開幕前に加わった。

開幕節のデポルティボ戦(1-2)こそスタメンに名を連ねたが、序盤戦ではコンスタントに出場機会を得られなかった。以降、第5節マラガ戦(1-2)を除き、出番なし。メンディリバル監督は両サイドにペドロ・レオン、ベベを据える攻撃的な布陣を試し続けていたからだ。

■強豪との3試合が今季のポイントに

しかし、ホセ・ルイス・メンディリバル監督はシーズンが進むにつれて考えを改めていく。両サイドに強い個を持つ選手を置くことで、エイバルは守備時にバランスを欠き始めていた。そこで指揮官は攻守両面でアップダウンを厭わない乾を左に、正確無比なキックで得点に絡めるペドロ・レオンを右に据えて全体の整合性を見極めようとした。

乾が定位置をつかむきっかけとなったのは、第9節エスパニョール戦だ。敵地コルネジャ=エル・プラットで行われた一戦で先発した乾は、16分に左サイドからインスイングのクロスを入れ、相手DFディエゴ・レジェスのオウンゴールを誘発する。アウェーの試合を3-3で終え、指揮官に一定の手応えを感じさせた。

この試合以降、乾は12試合連続でスタメン起用されている。エイバル取材に訪れた際、関係者から聞いた話によれば、彼は試合に出られない時期も腐らずに練習を続けていた。その姿勢は、メンディリバル監督からも感謝されるほどのもの。彼の存在が、チーム全体の競争を引き締めていたという。

エスパニョール戦後、指揮官がローテーション採用と若手選手にチャンスを提供する場合を除き、乾はいつもピッチに立っていた。そんな中で迎えた4月、スペイン国王の来日に伴い、一時帰国することが決まる。一時帰国はクラブの意向だったが、メンディリバル監督は「代わりに出場する選手が良いプレーを見せれば、タカは苦しむことになるだろう。もう一度、このチームで居場所を確保する必要に迫られるからだ」と述べ、彼の離脱を快く思っていなかった。

しかし、乾は逆境にめげず、最高の結果を示す。一時帰国前のラストマッチ、第29節ビジャレアル戦で、今季初ゴールを叩き込んでみせたのである。エイバルは乾の決勝点により、当時ヨーロッパリーグ出場権を争っていたビジャレアルを3-2で下している。

そして最終節のバルセロナ戦。乾は今季の集大成として、敵地カンプ・ノウで2得点を叩き込んだ。エイバルは2-4で敗れたが、乾はバルセロナ相手に初めて得点を挙げた日本人となった。2005-06シーズンに大久保嘉人(現FC東京)がマジョルカで記録した39試合を上回り、乾はスペイン1部の日本人選手最多出場記録を50試合まで更新した。まさに歴史に名を刻んだのである。

■残された課題とは?

乾は一時帰国で2試合を欠場したものの、スペインに戻ると第32節ベティス戦(0-2)の後半から実戦に復帰し、それから7試合連続で出場を果たした。完全にメンディリバル監督の信頼を勝ち取った、そう言っていいだろう。

しかし、彼に課題がないわけではない。乾自身は今季の開幕前、「10ゴール」を目標に掲げていた。蓋を開けてみれば、彼の今季の得点数は「3」。最終戦の2得点で昨季の3ゴールに何とか並んだものの、スペインでプレーするサイドハーフとしてこの得点数は物足りない。

左サイドを激しく上下に走り回る。それはエイバルにおいて乾を乾たらしめているが、その反動でゴール前でパワーが残っていない。決定的な仕事はペドロ・レオン、アドリアン・ゴンサレス、キケ・ガルシア、セルジ・エンリクといった選手に任せてしまっているのが現状だ。メンディリバル監督が以前主張していたように、乾はもっとエゴイストになるべきだ。

指揮官の信頼を勝ち取り、プレータイムを確保した今、よりゴールに対して貪欲になり、新たな道を切り開いてもらいたい。そして、スペインでゴールを量産した暁には、長らく遠ざかっている日本代表への復帰も、見えてくるはずだ。

■移籍の可能性は?

10%

この夏に会長選を控えるエイバルだが、メンディリバル監督は今年4月に2018年夏までの契約延長に合意している。またフラン・ガラガルサSD(スポーツディレクター)の契約延長も目前だ。乾を評価するこの2人がクラブに留まることで、彼の移籍の可能性は非常に低いだろう。

文=森田泰史(スペイン在住ライター)

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