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世界王者ドイツ、威光の翳り…総崩れで屈辱のグループリーグ敗退【W杯特別コラム】

19:31 JST 2018/06/29
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韓国戦で敗北を喫したドイツはグループ最下位となり、ロシア・ワールドカップ敗退が決まった。グループリーグ敗退はドイツ史上で初だ。ドイツの持ち味である結束の固さがW杯のピッチで少しも見られなかったことが、その理由の一端。『Goal』では特別コラム第11弾として、“マンシャフト”の敗退に焦点を当てる。

主審のマーク・ガイガーがドイツ対韓国の終了を告げてほどなく、カザンアリーナに集まった観客たちは現実とは思えないような、ほとんど奇怪な光景を目にすることになった。それは、落胆に沈むトニ・クロースがひとりピッチを横切って歩み去る姿だった。その少し前、敗北を悲しみつつ元気なくドイツ国旗をはためかせるサポーターたちへの後悔の念にさいなまれつつ、形ばかりの拍手で応えたチームメイトたちは、すでにロッカールームへと姿を消していた。彼らは、4日前のスウェーデン戦で鮮やかなフリーキックによって全ドイツのサッカーファンを喜びに沸かせたチームのゲームメーカーをひとり置き去りにしたのだ。

呆然自失したクロースのかたわらでは、赤いユニフォームに身を包み歓呼の叫びをあげる集団が、互いに溶け合うかのようにひとかたまりになっていた。前回王者のドイツを2-0で下した歴史的勝利を祝う韓国選手団だった。試合前、記者会見に臨んだ韓国のシン・テヨン監督と彼の腹心のFWソン・フンミンは、謙虚にも“1%のチャンス”について、つまり勝利はほぼ不可能事だと語っていたのだが。

これは象徴的な光景であり、ドイツ側から見て韓国戦をこれ以上適切に物語る状景はありえなかったろう。一方に個人主義者の集まり、それに対するにひとつにまとまったチーム。4年前のブラジル大会でドイツ代表をあんなにも強いチームにして最終的にタイトルをもたらすことになったのは、ひとつの構築物として機能する素晴らしいクオリティだったのだが、今はそれがどこにも見当たらない。ブラジル大会当時には、ポルトガルにはクリスティアーノ・ロナウド、アルゼンチンにはリオネル・メッシがいるが、ドイツにはチームがある、と言われていたのだが…。

■マーケティング用の売り物と化した“チーム”

ヨアヒム・レーブの率いる部隊に世界的な名声をもたらしたのは “一体化したチーム”という記号だったが、その結果この記号はマーケティングに乱用されることにもなった。代表チームのモットー “zusammen”(力を合わせて)から母音を除いて作られた時代の先端を行くハッシュタグ “ZSMMN” のもと、2014年の栄光をつなぎとめることが求められていたにもかかわらず、その代わりに手に入ったのは“Zusammenbruch”(総崩れ)、ドイツフットボール史上最大の屈辱であり、スウェーデン、メキシコ、韓国という顔ぶれのグループで最下位に甘んじることになったのだった。

「3試合のうち、ドイツ代表らしい戦いを見せられた試合はひとつもなかった」と、ミックスゾーンで多くの記者に囲まれて最初にインタビューを受けたマヌエル・ノイアーは、見るからに疲れ切った様子で語った。そして、「僕たちは確かにピッチに立ってはいた。だが、W杯という舞台で戦っているんだという意識、リスペクトを受けるチームを背負って戦っているんだという意識に欠けていた。たとえ勝ち進んだとしても、相手を喜ばせることしかできなかっただろう」と付け加えた。

この屈辱的な試合について、クロースもまた次のように明言している。

「生気のない戦いぶりだった。今日が最後のチャンスだという覚悟を持てていなかった」

この「生気がない」という言葉こそ、ドイツ代表が90分間に渡ってピッチの上で繰り広げたプレー全体を表現するのに相応しい表現だ。優れたタレントに恵まれているはずのチームが、ピッチの上で起こっていることをまったく理解していないかのようだった。

「いずれにせよ、きっとまた何とかうまくいくだろう。何といってもドイツ代表なんだ。ドイツ代表がグループリーグで敗退するはずがない」という思いこみにもかかわらず、ドイツチームのボール捌きにはいつもの精彩がなく、韓国の守備陣を難しい局面に立たせることができなかった。

「これまで僕たちのプレーを際立ったものにしていたスピードや敏捷性が、今回は少しも発揮できなかった。あまりにも活気がなくてのろのろしていた。だから、まったく敵を脅かすことができなかった」とノイアーは締めくくり、次のように付け加えた。

「こんなプレーをして予選で敗退するなんて思ってもみなかった」

■マッツ・フンメルスの奮闘も甲斐なく

終了直前、正確なタイミングでメスト・エジルから送られてきたセンタリングが肩に当たってリードの機会を逃したマッツ・フンメルスは、「ただ、いろんなことがうまく噛み合わなかったんだ。何が噛み合わなかったのかちゃんと言うことはできないけれど」と語った。少なくともフンメルスは再三にわたってチームメイトを奮い立たせようと試み、同時にしっかりと守備に立ちながら、前に出て韓国ゴールにとって最大の危機を生み出した。敵を最も脅かすフィニッシュを放ったのがディフェンダーだったという事実がすべてを語っている。今回の敗北を自身の ”フットボール人生最大の幻滅” だと嘆くフンメルスだが、彼はまたぼんやり構えたチームメイトたちを大声で何度も叱り飛ばしもした。だが、フンメルスの叱咤激励の声はカザンの熱気の中で燃え尽きて、誰にも受けとめられることはなかった。

3試合すべてにおいて、ピッチ上でのコミュニケーションが機能していなかったようだ。ドイツ代表チームが、あるいはこのチームの個々のメンバーがこれまで一緒にやってきた時間の長さを思えば、これは奇異の感を免れない。もちろん結局のところ、”2018年W杯のドイツ” という名の悲劇の立役者たちはその点において皆同罪だった。敗退は当然の結果だったのだ。

■ヨアヒム・レーブの今後は?

当然のことながら、まもなく世界王者の座から降りるドイツの今後には関心が寄せられる。ほんの数週間前に代表監督の契約が2022年まで延長されたばかりのレーブは記者会見の場で続投はないものと考えていることを明らかにした。また、代表チームへの今後の参加に関して質問を受けた数人の選手は、試合終了30分後の時点ではもっともなこととはいえ、明言を避けた。

世界王者の威光の翳りは今後ますます波紋を広げていくことだろう。ひとりぼっちでピッチを歩み去る虚ろな眼差しのトニ・クロース、甲斐のない激励を飛ばすマッツ・フンメルス、途方に暮れた様子の代表監督。その誰もが孤独を抱え、仲間を失っている。こんな結果になったからにはドイツフットボール連盟の宣伝部はすべての報道を遡り、ドイツ代表のW杯用ハッシュタグを“ZSMMN”(一致団結) から “ZSMMNBRCH”(総崩れ) に変更することを考える必要に迫られているかもしれない。

文=デニス・メルツァー/Dennis Melzer

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