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FIFA ワールドカップアジア予選

不本意なドローの中での“収穫”となるか…遠藤航が1年ぶりの日本代表戦で見せた可能性とは?

11:50 JST 2017/06/14
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日本代表は2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選でイラク代表と対戦し、1-1で引き分けた。この試合で2015年11月以来となる先発出場を果たしたMF遠藤航(浦和レッズ)。前回同様に2ボランチの一角を務めたが、今回は攻守両面で成長の証を示した。

久々に踏んだ代表のピッチだった。遠藤航はダブルボランチの一角としてイラク戦の先発メンバーに名を連ね、昨年6月7日のボスニア・ヘルツェゴヴィナとの親善試合戦以来の出場に。先発に限れば、2015年11月17日に敵地で迎えたFIFAワールドカップ・アジア2次予選のカンボジア戦以来の出番となった。

ボランチはクラブではほとんど任されることのないポジションだったが、何の違和感もなく安定したプレーを披露してみせた。試合前日に「自分が代表に残っていく上では明日の試合はすごく大事だと思っているし、周りのことを考えすぎず、自分のよさを出すだけ」と意気込んでいた通り、自身の特徴を遺憾なく発揮した。

遠藤の言う「自分のよさ」とは何か。それは守備面で言えば、正確な状況判断とポジショニングに基づくリスクマネジメント能力の高さが一番に挙げられるが、イラク戦でもその長所が光った。とりわけ、暑さと疲労でチーム全体の運動量が落ちる後半に気の利いたカバーリングで真価を発揮した。

後半12分には的確な読みでゴール前の危険なパスコースを切り、後半19分に酒井宏樹が軽率な縦パスをカットされてカウンターを受けた場面では、素早い攻守の切り替えで穴を埋めた。後半25分にも懸命なカバーリングからゴール前でピンチの芽を摘み、終盤にカウンターを受けた局面でも相手のチャンスを潰してみせた。

遠藤が”そこにいた”ことで火傷せずにすんだ場面は一度や二度ではなかった。本人も火消し役として尽力できたことに胸を張る。

「相手の脅威になるところはカウンターだと思っていましたし、ボールを持って縦に入れたい時に、引っかかってカウンターは絶対にあると思っていたので、そこであまり自分も前がかりにならずに、後ろでどっしり構えるようなカバーリングができるポジショニングを取っていたので、それはできたと思います」

特にイラクは攻勢をかける際に両サイドハーフが中に絞ってプレーし、10番のFWアラー・アブドゥッザフラも前線から下がってボールに絡もうとしたため、日本の中盤は数的不利に陥ることも少なくなかったが、「ディフェンスライン、宏樹くんと声をかけあいながらやっていましたし、首をふりながら、比較的うまく人を見て、守備はできていたと思います」と的確なポジショニングで立ち回った。

遠藤の奮闘は守備だけにはとどまらない。攻撃でも「自分のよさ」と自信を持つ縦パスで存在感を示した。

遠藤には代表での苦い経験がある。それは前回の先発出場試合となったカンボジア戦でのパフォーマンスだ。その時もダブルボランチの一角を担った遠藤はゲームの組み立てで無難なプレーに終始。プレッシングをほとんど受けない状況でも攻撃を加速させるようなパスを出せずに前半だけで交代を告げられ、「ミスも多かったし、代えられても仕方ない」と肩を落としていた。

しかし、当時と今とでは積み上げてきたものが違う。所属クラブの浦和レッズでは3バックのリベロという守備の要を担いながら、リスクを負う攻撃的なサッカーを求めるミハイロ・ペトロヴィッチ監督の元で、日頃からプレッシャーを受けながらボールを前に運んだり、狭いパスコースでもズバッと楔のパスを打ち込んだりと難易度の高いプレーを続けてきた。

その日々の積み重ねが、カンボジアよりはるかにレベルの高いイラクを相手にした時にも生かされた。

「攻撃に関しては縦のパスの精度はずっと浦和でやってきて、自分の中でも厳しく求めてきた部分ではあったので、カンボジア戦よりは今日の方がおちついていたし、いいプレーは何回かあったと思います」

相手に体力的余裕のある立ち上がりでも積極的に縦パスを打ち込み、チャンスを生み出そうとした。前半8分には本田圭佑のCKから大迫勇也が先制点を決めたが、そのCKは遠藤がダイアゴナルパスを大迫に打ち込んだ流れから得たものだった。

遠藤はその後も隙あらばと縦パスを積極的に狙った。特に、イラクが攻め疲れした後半は中盤にスペースができやすくなったこともあり、前線に楔を打ち込む回数が増えた。本人は「後半は縦に入れられたので入れてしまったところがあったし、それが実際につながっていたからよかったんですけど、縦に入れるのと散らすのを一回ゆっくりしたい時間帯がある中で使い分けができるともっといい」とさらなる向上を誓ったが、攻撃面でも貢献できるところを示せた。

もっとも、代表の生存競争を勝ち抜いていくのは容易ではない。ただ、山口蛍はこのところアンカーを任されているとは言え、本来は球際の勝負やボール奪取で持ち味を発揮する選手であり、遠藤と同じくイラク戦でスタメン抜てきとなった井手口陽介も同タイプだ。今野泰幸も「どちらかというとボールを奪うタイプ」と遠藤が評するように、対人守備で強さを発揮する選手だ。

一方、遠藤は人にも強いが、視野の広さと冷静な判断でカバーリングに長けるという特徴で一線を画す。彼らよりは長谷部誠に近いタイプであり、現代表には少ないタイプだ。

イラク戦はチーム全体のパフォーマンスという観点で見れば、暑さや芝という外的要因があったにせよ出来は不本意なものとなり、1-1の引き分けで予選突破を争うライバルたちに大きな差をつけられなかった悔しさも残った。ただ、ボランチ・遠藤というオプションを再発見できたのは、本人にとってもチームにとっても収穫と言っていいだろう。

文=神谷正明

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