Zidane Real Madrid La Liga 22042017Getty Images

レアル・マドリーに流れる勝者のDNA…今こそ、クラシコで“伝統”を示すとき

勝者のDNAを持つチーム――。

今シーズンのレアル・マドリーをけん引してきたものがあるとすれば、それはクラブが作り上げてきた伝統に他ならない。

ジネディーヌ・ジダン監督にとって、今シーズンは1年を通してチームを指揮する初めての年となっている。選手たちに独自のスタイルを100%浸透させるまで、マドリーは“伝統芸”によって白星を積み上げてきた。

後半アディショナルタイムに決勝点を決める勝負強さ、圧倒的な攻撃力、時にはチャンピオンズリーグ準々決勝のバイエルン・ミュンヘン戦のように、90分以上の時間をかけて勝利をつかむこともある。この結果、彼らは数々の記録(公式戦無敗記録の更新、55試合連続得点、チャンピオンズリーグ準決勝に大会史上初の7年連続出場)を樹立した。そして残りの1カ月半、いまだにリーガとチャンピオンズリーグで優勝する可能性を残している。

■示してきた勝負強さという伝統

ジダン率いるマドリーとはどんなチームなのか? 色々な見方ができるだろうが、一つ確かなことは「簡単に倒れることは決してない」ということだ。文字にすると当たり前のことのように見えるかもしれないが、それでもこの点を強調したのは、それが彼らの歴史的な背景と結びついているからだ。

マドリーは敗北を極端に嫌う。もはやこの性格を矯正することは不可能だ、なぜなら、彼らのDNAに刻まれているのは「勝利」だけだからである。だからこそ、期待外れのプレーに終止した試合ですら、救いとなる結果を呼び込むことができるのだ。

今シーズンもその気質、敗北への抵抗感はライバル相手に劣勢に追い込まれた試合で何度も発揮されてきた。良い例となるのはバイエルン戦だが、その予兆はすでにシーズン最初の公式戦から見られていた。

2016年8月9日、トロントハイムのレルケンダム・スタディオンで行われたUEFAスーパーカップを思い出してみよう。マドリーはクラブ史にまた新たにページを追加した。ヨーロッパにおける土壇場での逆転劇、という章に。

試合終了間際、今まで何度もチームを救ってきたセルヒオ・ラモスが再びヒーローとなり、ホルヘ・サンパオリ率いるセビージャに追いつくと、延長戦ではダニ・カルバハルが決勝点を挙げた。マドリーは最初の公式戦でトロフィーを掲げ、2016-17シーズンをスタートさせたのだった。

そして火曜日のバイエルン戦である。前監督だったカルロ・アンチェロッティによって、見事なまでに薫陶されたドイツの強豪はサンティアゴ・ベルナベウで準決勝行きの切符を奪い取る寸前まで行った。マドリーにはバイエルン、ドルトムント、ユヴェントスなどにチャンピオンズリーグで苦杯を飲まされた経験がある。そして大抵の場合、シーズン残りの間、その負の結果に支配されてしまった。まさに、悪しき前例だ。

だからこそ、ジダンにとって準々決勝を突破することは非常に重要だった。とりわけ今回は、ドゥオデシマ(12回目のチャンピオンズリーグ優勝)が懸かっていただけでなく、次に控えたクラシコに士気高く挑むためにも勝利が必要だった。何故なら、ルイス・エンリケ監督率いるチームを下すことは、リーガ優勝を確実にするのとほぼ同義なのだから。

そして、彼らは見事にミッションを遂行した。延長戦の末、カーディフへ続く道を切り開き、ベスト4へ駒を進めたのである。

■そして、クラシコへ

マドリーの選手たちは現在、曖昧なところがまったくないクラブの要求に応え続けている。

全ては白か黒だ。すなわち、栄光か失敗か。

今シーズンは多くの試合でいいプレーを披露できなかったかもしれないが、ピッチであらん限りの激しさを披露しているのは確かだ。常に最大の努力をする。ジダンは選手たちにすべての対戦相手にクオリティを示すことを求めてきた。そして、選手たちは指揮官の要求に応えてきた。マドリーの歴史に従い、誰もが全力をプレーに傾ける。先発でピッチに立つ者、途中から戦場に入る者、一人残らずだ。

チームの質が高いことは、所属している選手の名前を見るだけで分かる。しかし、ときに才能だけでは十分でない場面に出くわす。そういったとき、選手に力をもたらすのはクラブの文化や伝統だ。すなわち「自分は勝利のアイデンティティを持ったクラブの一員」という空気が、選手が秘めたプラスアルファの能力やメンタリティ、そして「あと一歩の頑張り」を解き放つのである。

ラモス、マルセロ、ペペ、クリスティアーノ・ロナウドといったキャプテンたち、カルバハル、ルーカス・バスケス、アロバロ・モラタらカンテラーノたちが情熱をぶつけてプレーするという模範を示せば、他の選手たちも追随する。だからこそ、例外なく、全員がピッチで最後の汗の一滴まで流し、精力困憊して試合を終えるチームができているのだ。

そして、いよいよクラシコがやってくる。

リーガの覇権争いの行方を決める、決定的な瞬間が訪れるのだ。今はもう、シーズンの最高の結末を夢見る時期だ。マドリーはおそらく、どこより美しいプレーをしてきた訳ではないだろう。だが、最も信頼できるサッカーを見せてきた。ロナウド、ラモス、カリム・ベンゼマら、チームのキープレーヤーが勝利の、優勝のための決定的な役割を果たすのは今だ。

繰り返しになるが、ジダンの下でマドリーは努力を惜しまないという考えを示し続けてきた。そして、この長所こそ、レアル・マドリーと他のクラブとの間に、決定的な違いを作ってきた。

舞台はエル・クラシコ、対峙するのはバルセロナ。相手にとって、不足はない。今こそ、マドリーが持つ歴史を、文化を、伝統を、クラシコの舞台で示すときなのである。

文=フアン・ イグナシオ・ガルシア=オチョア(マルカ紙レアル・マドリー番記者)
翻訳=原ゆみこ
協力:江間慎一郎

■放送日程

レアル・マドリー対バルセロナ
4月23日 深夜3時30分~(WOWOW)

■エル・クラシコ特集 現地記者特別コラム

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