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リセットボタンを押したバイエルン…未来へ向かって歩むペップ・シティとは対照的に

19:41 JST 2017/10/18
Jupp Heynckes Pep Guardiola Split
ドイツの最多優勝記録を誇るバイエルンが、積み上げてきたものを完全に崩した。一方で、別れを告げたペップはシティで躍進を続けている。その対照的な道筋とは?

マンチェスター・シティのケヴィン・デ・ブライネは、2015年夏にバイエルン・ミュンヘンが提示された条件を呑みさえしていれば、フライブルクを5-0と粉砕したチームでブレーしていたかもしれなかった。

代理人であるパトリック・デ・コスタが昨年『SportFootMagazine』に語ったところによると、デ・ブライネは移籍に胸を高鳴らせていたが、バイエルンが5000万ユーロを超える金額に同意しなかったのだという。そうした経緯でデ・ブライネはシティへ加入した。

先週末、マンCはストーク・シティを7-2というとてつもないワンサイドゲームで粉砕したが、この試合でデ・ブライネがどれほどチームに貢献したか、列挙していってはどれだけ時間があっても足りないほどだ。

試合のコメンタリーを見ながら振り返れば、特に3つのスルーパスが素晴らしかったことがわかる。

その1はレロイ・サネへのリターン・パス。マンCの2点目へとつながったものだ。ラヒーム・スターリングのゴールを決定づけたのは彼のパスに他ならない。

ピッチにいたストークの選手たちはみな、シュートを予測した。そのとき、アンクルブレーカーのパスを出したのだ。観戦していた我々は、パスが出て初めて「そう来たか!」と気がつく。まさにそういった類のパスだった。

その2。ガブリエル・ジェズスの2点目のアシストだ。まずは得点したジェズスの動きを称賛するべきだが、デ・ブライネのクロスのタイミングと精度がパーフェクトだった。デ・ブライネはアーリークロスに関して天賦の才がある。パスを受ける相手に絶大な時間的猶予を与えてくれるのだ。

その3。その2から7分後、選手交代でピッチを去る直前に出した、サネのゴールへのパス。もっと前までボールを運ぶこともできただろうが、おそらくは疲労のためにパスを出したのだろう。

それにも関わらず、インサイドキックで送られたパスの軌道は、ミリメートルまで測ったかのように正確だった。芝生の上をなめるように進んだボールは、中盤でのポゼッションを瞬時にゴールへと変えた。

ジョゼップ・グアルディオラ監督は、一人の選手を取り立てて褒めるようなことはしない。少なくとも記者会見などで試合の分析をする時は。だが試合後、このパスについて語る時には、顔に笑みを浮かべていた。喜びを隠しきれなかったのだ。

ペップはミュンヘンのアリアンツ・アレーナで、監督としてデ・ブライネを指導する可能性もあった。しかし、そうなっていれば、シティでデ・ブライネがこれほどまでに輝く日も訪れなかったのである。

マンチェスター・Cと、結果的にはペップにとってラッキーだったことに、バイエルン・ミュンヘンの代表取締役のカール=ハインツ・ルンメニゲと、現在再任されたウリ・ヘーネス会長は、自分たちのやり方に固執した。

バイエルンは仲間を大切にするスーパーなクラブではあるが、経費削減にはうるさい。そして、デ・ブライネ獲得に失敗した。その1年前には、トニ・クロースの契約条件の調整に失敗している。

チームのスター選手で、屋台骨でもあるロベルト・レヴァンドフスキの目から見ても、バイエルンの失敗は明らかだった。レヴァンドフスキはシーズン当初、パリ・サンジェルマンやプレミアリーグのビッグクラブと同じように、もっと大きな補強をするべきだと嘆願していた。デ・ブライネのような選手と契約しろと言っていたのだ。

レヴァンドフスキは、バイエルンに良い選手が足りていないことをわかっていた。ただでさえ、ペップがエティハド・スタジアムで態勢を整え、世界中に食指を伸ばすPSGが、前線にスターを揃えさせているというのに。

PSGにいたっては、バイエルンを4-0で粉砕し、バイエルンがどれほどひどい道を辿ろうとしているのかを白日の下に晒した。

カルロ・アンチェロッティ前監督の采配に問題があったのは事実かもしれないが、ここ最近の全体的な怠慢の責任を、たった一人に押しつけるべきではない。そして、首脳陣が招聘したのは、またしても、ユップ・ハインケスであった。

72歳のユップは、ブンデスリーガのクラブを率いた歴代の監督の中で、3番目に高齢である。ユップ率いるバイエルンは、フライブルク(ホームでは15戦連続勝利中の相手)に大勝したが、高齢監督の4度目の就任は、クラブが「後ろ向きの姿勢であることの表れ」という評判を逃れることは難しい。マンチェスター・ユナイテッドが、サー・アレックス・ファーガソンを再任させ続けたときの経緯と同じだ。

バイエルンはペップが去ったときにリセットボタンを押す選択をした。アンチェロッティ前監督に代わったことで、陰だったペップから陽に変わったのだが、今また、スタート時点に舞い戻ってしまった。

ハインケス監督は華々しい復活を掲げ、努力はしたのだろうが、前回監督を終えた2013年のときのチーム以上の収穫を得ることはできなかった。スターティングメンバーには、2013年から在籍しているジェローム・ボアテング、ダビド・アラバ、ハビ・マルティネス、アリエン・ロッベン、トーマス・ミュラーといった名前が並んだ。

マヌエル・ノイアーとフランク・リベリは負傷中でメンバー外となったが、そうでなければ先発に名を連ねていたに違いない。他の選手たちはチームを去ったか、フィリップ・ラームのように引退している。つまり真新しいことは何もなかった。

今となれば、2013年はバイエルンにとって戻りたい年だろう。だが、トレブル(三冠)を達成したのは、サッカーでいうところの半生前のことであり、チャンピオンズリーグでは、今シーズンのレアル・マドリーやバルセロナ、PSGのようなビッグクラブのみならず、他ならぬマンCに対しても勝てる希望が持てないでいる。

そもそも9月に監督を交代したことで、バイエルン・ミュンヘンが今シーズンを棒に振ったことは明らかだ。ルンメニゲとヘーネスはまたしても、これまでの平凡な意思決定から彼らを救い出してきた、OBのネットワークを頼りにしている。

ハインケスは過去の人間だ。グアルディオラという才能ある後継者――あの巨人に肩を並べるべき後継者――や、デ・ブライネのような選手を確保する代わりに、バイエルンは2013年に燃え尽きた輝きを再燃させようという、絶望的な挑戦をしている。

ペップがしていることと比べれば、バイエルン・ミュンヘンは、木の棒をこすりあわせて火を起こそうとしているようなものだ。それほどまでに遅れた道を再び歩もうとしている。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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